「空が綺麗だね、人は悲しいね」










うたうように紡いだ後、臨也は瞼を持ち上げて俺がいる方向を見た。いつもと一切変わらない飄々とした態度に苛立ちを覚え殺意を込めて睨む。そんな視線を受け流すように、臨也は眼下の光景を見下ろす。その態度にさらに腹が立った。今はきっと、何をされても苛立つだろうけどさ。
それでも。幸せだった頃の記憶を思い出し、胸が潰されるように感じた。自身でも女々しいだなんてわかってるけどよ、こんな俺を造ってくれたのは、救ってくれたのは、臨也、お前だったんだ。俺の好きなお前、そのお前が好きな俺、そんな俺達だからこそ俺は自身をほんの少し大切に思えるようになれた。嫌いだから破壊してきた俺の身体を、俺を壊すように使ってきた力を、使わないように守ってきた、のに。掌は握りこぶしを形成しつつある。心底殴りたいと思った。




「情報屋という職業柄、俺がどんな手を使ってでも情報を手に入れようとすることを君は知らなかったの?例え身体を汚しても、使えるものは使う。……ああ、君は綺麗だね」




わかっていた。お前が俺に「そんなの、俺の全てを君にあげるよ」と珍しく屈託なく笑って返事したあの時でも、お前と身体を重ねあっていた時でも。ああ、こいつは他の男にもこんなことをするんだろう、と。
案の定、さっきだってそうだった。もう逃げていった男の顔を再度思い出し舌打ちをする。それについて臨也に責めても「客のニーズに応えたまでさ」といつも通りに吐いた。思い出したらまたむかついてきた。ああもう限界だ、殴らせてもらおう。
サングラスを外しポケットにしまった。これが俺達の戦闘の合図。だというのに、臨也の視線は未だ風景を見つめていた。どうして臨也はこっちを見ないんだろうか。



「お前は、」




今もまだ約束を覚えているか?そう聞こうにもどうしてか言葉が出てくれない。こわいからに決まってんだろうが。忘れてたらどうしよう、破ろうとしてたらどうしよう、そんな不安だらけ。約束は守られるべきもんだろう?こんなことごねても困るだけなのに。
臨也は俺を見た。随分久しぶりに目が合った気がするなあと思った。だけど俺の視界の悪さが邪魔をして臨也の顔が見えない。なんだこれ。








「今までありがとう、そしてごめん。で、さよなら」








早口で唱えられた言葉は、俺達の終わりを意味していた。頭の中は真っ白でなにかを言おうにも言葉が出ない。多分死ぬ前は走馬灯とか思い出が駆け抜けるわけじゃなく、ただ頭の中は真っ白になるんじゃねーのか、とぼんやりとどうでもいいことを考えた。



その言葉を最後に臨也は背を向けて歩き出していった。もう二度と、会えない気がしてその背中を追いかけて抱きしめる。咄嗟に動いてくれた足に感謝した。
臨也は俺の腕を振り払わず抵抗せず、静かに立っていた。どんな表情なのか全く想像つかねえけど、別にいいさ。冷えた身体同士が触れ合ってじわりと温かさを生み出した、のに。心までは温めてくれないのが残念だ。















終わりの回避は無理だとわかって、何故か先程真っ白だった脳内が思い出で埋めつくされていく。幸せだった俺達。毎日結婚しようって聞いた気がする。俺をほんの少し大切に思えたきっかけを造り上げてきたそれと、お前に、心を込めて呟いた。































me me she

(この恋に俺が名前つけるならそれは「     」)









-------------------
別ばーじょんのme me sheも書いてみましたーですが携帯変えたせいで文章が打ちづらくて困ってます…ぬぐぐ
シズちゃんには幸せになってほしいものです←
2011*4/3
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -