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季節はもう冬。朝早く家を出、夜遅くに帰る俺たちは大抵行き帰りは日中より寒さが増し、白い息を吐き出しながら歩く。

「…さむ」
「ブンちゃんは寒くないでしょ。皮下脂肪があるんだから」
「はああ!?」
「な、なんでもなーい」

コイツ…彼女だけど時々気に障ることをいうんだよな。誰かブタだよ、俺はブン太だっつーの!

「ったくよー」
「ごめんごめん」

ラケットバッグを背負い、隣にはマフラーぐるぐる巻きの一応可愛い彼女がいる。空に雲はなく星が瞬く、冬の夜。ハードな部活の帰りだが疲れが吹っ飛ぶような感覚。
あー 幸せだなって、感じる。

「肉まん食いてえ」
「太るよ」
「お前に言われたくねーし」
「ブンちゃんに言われても」
「…かっわいくねーの」

なんて、寒さで鼻を赤くしてるのは可愛いけど。でもいってやんねーし!

「でも本当、寒くなったねえ」
「ああ」
「よく外で部活なんか出来るなあ」
「そうやって鍛えられてるからな」

真田いるし、サボるなんてできねーし。俺たち王者立海だぜ?なめんなよ。

「ブンちゃんって可愛いよね」

女子にはよく可愛いとか言われるが、彼女に可愛いとか言われるとちょっと傷つく。俺だって男だし、格好いいとか実際いわれたことないから心配になる。

「でも、テニスしてると男の子だなって本当感じるよ」
「はっ…?」
「ん…格好いいなあって」

露出した赤い鼻に加え、耳までもを赤くした彼女。照れくさそうに笑いながら言うから、なんかこっちまで恥ずかしい。…クソッ なんだよこの羞恥プレイ。

「…ばーか」
「…馬鹿って何さ」
「俺は元々、天才的に格好いいっての!」

こっちまで照させやがって。
でもそれを察してほしくない、バレてほしくない一心で俺は冷たく外気にさらされた彼女の手をバッとつかんだ。

「ぶ、んちゃん…」
「…寒ィから」


ぜってーこの気持ちは隠してやる。
だ、誰が可愛いなんて言うかよ!



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