拍手Log | ナノ







ざあざあざあ。
音を立てて降る雨を教室の窓から見ていた。お昼後の授業なんて頭に入らない。聞いていてもだるいし、でも寝ていれば当てられるから起きていた。

梅雨明け宣言されたにも関わらず、昨日の晩から降る雨は登校時、私たちを激しく追い詰めた。ソックスはもちろん、制服までが雨の犠牲で濡れてしまった。
湿ったままが嫌な生徒が多く、数人はジャージに着替えている。教師に注意はされるが雨の時期は毎回こうなるとわかっているので教師たちも諦めたらしい。私立だけども意外と適当なんだな、と最近思う。そんな私は濡れた制服のまま一日授業を受けて、午後の今に至る。


「なあ」


ぼーっと降り注ぐ雨を見ていると隣から話しかけられる。隣を見れば校内で目立つ存在の仁王がこちらをじっと見つめていた。

「…なに?」
「雨、みてて楽しいかの」
「別に」

テニス部という美形集団といわれている団体様の詐欺師さんが私に何の用か。ちなみに私は美形集団などとは思っていない。…いや、幸村くんとか顔立ちは美しいけど。よくわかんない人のかたまりだと思う。

「楽しくないんか?じゃあなんて見てるん?」
「授業がつまらないから」
「別に雨なんぞ見なくてもいいんじゃないんかの」
「今日は雨がみたい気分なの」


ふーん、と言った仁王は、再び窓の外の雨に視線を戻した私と同じ方向へ目線を向ける。本当、何がしたいんだろ。

「じゃあ俺も雨を見るかの」
「は?」
「お前さんが見てるなら俺も、」
「授業きいたら?」
「だって授業つまらん」

ぷくっと頬を膨らませる姿が目に入る。きっとファンなら黄色い声で叫んだり、この授業中なら倒れるかもしれない。それでも私は表情を変えようとも思わなかった。

「不真面目だね」
「お前さんもじゃ」
「一緒にしないでくださいませんか」
「つめたいのう」

先生がちらっとこちらをみる。…気付かれた。そもそも隣と会話をする予定なんかなかったから仕方がない。そろそろノートでもとるかとシャーペンを持って板書を写し始める。ジリジリと隣からの視線が気になるけど。

「なあ」
「…………」
「無視は寂しか」
「……なに?」

仕方なく、ちらりと隣を見る。ぶすっとしている顔は今まで想像していた仁王のイメージからはかけ離れていた。
こんなにも、子供っぽい拗ね方するなんて。ぶすっと、唇をとがらせて机にだらんとしている。
それが何だか不思議と目が離せなくて。


「俺のこと、お前さんにもっと知ってほしいんじゃけど」



ちょっと知ってみてもいいかな、なんて思ってみた。




- ナノ -