「榛名」
暖かい風が吹き希望の光、と称したくなる季節、春。
「榛名」
ただ俺は、あの先輩を思い出す。
「もと、き」
俺よりも随分小さくて、高校生か?って疑うくらい。そんな小さな身体して俺につきまとってた面倒見たがりの先輩。
思い出す先輩は、悲しく涙を流す姿。
「先輩、」
大好きだった、俺が惚れた女。思い出に残る笑顔もたくさんあるけれど、必ず思い出すあの泣き顔。俺はあの顔に絶対逆らえない。
「もとき、だいすき」
すきという甘い言葉を紡ぐ声も
「頑張れ」
俺を応援する明るい笑顔も
「ありがと」
俺を見ている先輩の存在が、俺の頭から焼き付いて離れない。
「元希」
「………せん…ぱい」
「元希、」
「先輩…」
「元希」
遠かった声がすぐ近くまできている。
俺のそばから消えてしまった先輩がまだ近くにあるような錯覚。
…どんだけ先輩のこと好きなんだよ。幻聴でも聞こえちまったなんて、…笑えねぇし。
「元希!」
そうやって首を横に振れば、体にドンッという大きな衝撃が走る。後ろから、突撃されたみたいな。
「もとき」
「せんっ?!」
「ただいま!」
振り返ればそれは、大好きな大好きな小さい先輩の姿で、
「おせーよ、先輩!」
なんて、照れ隠しに抱きしめた。
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悲しいお話はなしかな、と思って急遽変更。深くは考えないで下さい^^