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桜が舞うこの道。

貴方がつくった私の世界。そこではいつでも隣にあなたがいて、あなたの隣にはいつでも私がいた。
思い出に残るこの道を、いつも、いつでもあなたと歩いた。


でもそれは所詮、思い出。
今この道を歩く私の隣には誰もいない。

ただあなたといられれば、私は何でもよかった。どこへ行ってもよかった。
あの美しい世界が今ではこんなにちっぽけに見えてしまう。


「精市…」


私にどれだけの優しさをくれただろうか。どれほど優しく、大切にしてくれただろうか。受けた自分でさえわからないほど、精市は私に優しさを向けてくれた。
私が返しても返しきれないほど、たくさんの優しさを、くれた。

――――ねぇ、私はやっぱり精市がいないとダメみたい。隣にいてくれないとどうにかなっちゃいそう。

す、と頬を流れる温かい涙。風が散る桜の花びらを私へと運ぶ。
乱れる髪と花びらに下を向けば、後ろから腕が伸びてきてふわりと抱きしめられる。



「    」



包まれるこの匂い。
これは紛れもない、精市の匂い。
私の名を呼ぶこの声も、間違うはずはない。


「精市、」
「勝手にいなくなっちゃダメじゃないか」
「……私ね、」
「俺はお前のもので、お前は俺のものだ。いつでも、いつまでも」

ぎゅっと密着する体。服越しに感じる体温がくすぐったい。
それでも私は、彼を、この手を、

「離さないで」

小さく私の耳元で囁かれる言葉。

「俺を離さないで」



その言葉が合図のように、私は振り向き正面から彼に抱きついた。

…私、この人からは逃げられない。





――――――――
意味不明だけど寂しがりな幸村が書きたかった…と言い訳してみる。

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