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真夜中、なかなか寝付けずにいたため夜風に当たろうと部屋を出た。
昼寝などしていない。逆にイラついていたキッドを扱っていたため疲れているはずなのだが。


(…たまにあるがな)


夜風にあたれば少しは気分が変わるだろうと甲板へと歩く。
するとキッチンから明かりが微かに漏れている。


(コック?仕込みか…?)


こんな真夜中まで仕込みとは、知らなかった。いや、しかしあのコックたちはこんな夜中まで起きて仕込みをする奴らではない。
ならばつまみ食いをしにきた奴らしかいない。大事な食料だ、なくなっては困る。
…叱らなければ。

そう思い静かにキッチンのドアをあける。
すると中には…


「…なにをしている」
「あ、キラー」


紅一点である彼女が、エプロンをしてボールをかき混ぜている。


「ごめん、うるさかった?」
「いや、平気だ。なにをしている?」
「あー…えっと…」

材料を見ればチョコレートやバター、それに近くには生クリーム。

「ケーキ、作ってて」
「…何?」
「もうすぐクリスマスでしょう?ケーキくらい私が作りたいなぁ、と」
「お前、」


懸命につくっている姿だけをみれば可愛らしい、いかにも女子らしい行動だと思う。
しかし…


「お前、料理が苦手じゃなかったのか?」
「(ビクッ)…それ、誰から」
「キッドからきいた。ひどいらしいな、…見た目が」
「うああんっ 言うなぁ」


クルーにいろいろ言われるために夜中ひとりで作っていたらしい。
幸い、キッチンとクルーの部屋は近いとはいえない距離なので、料理を作るくらいの音なら聞こえはしない。


「練習していたのか」
「そうだって、さっきから」
「そう言えば焦げ臭くないか」
「え゙!」


コンロをみれば小さな鍋から煙がでている。焦げ臭いにおいはここかららしい。


「あああっ イチゴがっ」


煮詰めていたらしく、俺と喋っていて目を離してしまったようだ。
…いや、俺は何も悪くないぞ、目を離さなければよかったんだ。会話なんぞ作りながらでも出来る。


「うう…」


そう言って鍋のイチゴをみる彼女。
二つのことを同時にしよう、という考えが思いつかないのだろうか。
きっとそれが出来ないから料理が出来ないのだと思う。それができれば普通のものくらいは出来ると思うのだが。


「…まあ、頑張れ」
「うう… 頑張る」



仕方ない。少しここでみていてやるか、と彼女の邪魔にならないところに寄りかかった。


彼女と同じ時間を過ごしていたいのと、彼女の作ったものを最初にみたいという、密かな恋心に従ってみようか。




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別にクリスマスじゃなくても(ry
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