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Bon jour!





コンコン、と扉をたたく。しかし、中から返事はなかった。
中には絶対にいるはずなのに。
そっと扉をあけて中を覗くと、ソファには青みがかった銀色の髪の持ち主が座っていた。

中に入り、パタリと扉を閉める。しかしソファに座る彼、イヴェールは気づかない。
何事かと思い、彼のそばに近寄ると規則正しい呼吸が。


「ああ…寝ちゃってる」

赤子のように無防備で、安心しきった寝顔。太陽と月の刺青の入った頬は、白く、柔らかい。
ふに、と起こさないように頬をつつく。一度触ったらやめられない感触に浸り、何度も目の前の頬をつつく。


「…ん、ぅ」

調子に乗って頬を軽く引っ張った刹那、イヴェールの口からこもった声が聞こえた。
やがてしょぼしょぼと目を開き、起きるイヴェール。


「起こしちゃったね、ごめん」
「いや…いいよ。おはよう、ティリア」
「おはよう、イヴェール」


もう夕刻だけどね、と付け足すと二人で笑う。

イヴェールが両腕を広げて私を招く。隣に座って、身体は彼に預ける。と、おはようのキスをねだってきた。…もう夕刻だと言ったばかりなのに、おはようのキスではないだろう。
しかし彼に言われるとそのまま行動してしまう。口を向けてくる彼に、自分の口を近づけた。

「ん、」
「ん…はい、おはよ、」
「もっと」
「だーめ」

彼の押しつけるだけのキスは、幾度も繰り返される。しかしそれはいつも朝だからだ。
しぶしぶとだが、イヴェールはあきらめた様子。


「寝ちゃったんだね、僕は」
「気持ちよさそうに寝てたわよ」
「あぁ、でも良い夢を見たんだ。…何かは忘れちゃったけど」



何かは忘れたけど、彼の顔を見る限り、とても良い夢だったのだろう。

とても、とても彼の笑顔が輝いて見えた。




Bon jour,Hiver!



「オルタンスとヴィオレット…あ、ティリアもちゃんといたよ!」
「そう?ありがとう」




―――――
お昼寝してるイヴェールはかわいいだろうな、と。

書き終わり 2009.06.19.
加筆修正 2011.09.10.
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