冬に抱かれて
廻る季節は、止められない。
「イヴェール」
「なんだい」
「イヴェール…」
「なに?」
「イヴェールっ」
「えっ ど、どうしたの、ティリア?」
ソファに座っているイヴェールにすがりつくように抱きつく。
そんな私をイヴェールは優しく包んでくれる。背中に暖かい手がおかれ、ぽんぽん、と何度か叩く。
「どうしたの?何かあったの?」
「ううん、違うの」
違うの、違うの。
なにもないの。
だけどなぜか、何故かイヴェールが遠くにいってしまうような気がして。目の前で消えてしまうような気がして。
「イヴェールの体温が恋しくなったの」
「なっ…熱でもある?」
「失礼ね…」
「だっていつも、そんなこといわないだろう?」
「言いたくなったの。くっつきたくなったの」
「うん」
「イヴェール…」
イヴェールの袖をぎゅっと握ると、イヴェールは背中に置いていた手を頭に置いた。
私の髪をなでるように、上下に動かした。
「大丈夫」
「うん」
「僕はここにいるよ」
「うん」
「なんだかティリアに甘えられるのって、変な感じ」
「…ばかじゃないの」
「でも嬉しいよ」
「……うん」
今はあなたに甘えたい。
いずれどこかにいってしまうなら…
今だけは、今だけは私のものでいて。
冬に抱かれて(嗚呼、冬の終わりは近づいているのだろうか)(できれば永遠を、望むのに)(廻る季節は止められない)
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甘いのかシリアスなのか。
書き終わり 2009.05.17.
加筆修正 2011.09.08.