第四次試験




三次もあと少しでタイムアップ。一時間を切ったけれどヒソカは私を離してくれそうにない。
それよりもヒソカの隣にいる、すんごい…その、すごい人が気になるんですよ。ずっとこっち見てるしね、ヒソカは気付いているんだけど何も対処してくれないしね。そんなに熱い視線向けられると、こ、こまるなー!

時間が迫っているので離してくれないかと交渉したところ、案外さっくりと離してくれた。何事もなく(…いや、身体中触られてたけど)、ヒソカの隣のすんごい人の視線とヒソカの腕から無事脱出した私。同じ体勢でいる時間が多かったので、手始めにストレッチをした。
時間ギリギリになって五人が脱出できた模様。その中には子どももいる。このタワーをクリアできたのか、すごいなあ。そんな悠長なことを思っていると、その中の銀髪の子が私を見て「あっ!」と叫んだ。


「おねーさん!」

おねーさん…私を見ていっているので、私の事だろう。この銀髪少年と何処かであったかな。
会場到着から今までをよくよく思い出してみる。…あ、思い出した。たしか一次の後半の方で一緒に走ってた記憶がある。

「へー。おねーさん突破するとは思わなかった」
「きみもね」

少年は随分と汚れていたけど、よくよく見れば同時に来た子たちも頬や服に汚れが目立っていた。

「キルア、この人は?」
「ああ、一次の時に最後の方一緒に走ってたおねーさん。名前は…えっと」
「名乗ってなかったね。メイといいます、よろしく」
「メイさんだね。俺はゴン!」
「ふーん。俺はキルア。ね、おねーさん呼びのままでいい?」
「ゴンくんにキルアくんね。呼び方はなんでもどうぞ」


少年がこの試験に受かるような気はしないけど、ここまで来たのなら体力もあるし勇気も自信も、戦闘力もそこそこはあるのだと思う。子どもだからっていうわけじゃないけどこの環境で一気に成長する可能性はある。甘く見過ぎず、気にかけていた方がいいかもしれない。
ゴンくん、キルアくんと話していれば、連れらしい男の人と、金髪の………美人がこちらを向いている。


「そちらは?」
「あ、私はクラピカ。こっちは…」
「レオリオと申します。あなたは?」
「メイといいます。よろしく」

金髪美人は二コリと笑った。しかしなんて美人。年下だろうに、こんな可愛い子がいるのだろうか。というか性別はどちらでしょうか。

「…失礼だけど、性別はどちらで?」
「…………男です」
「…ありがとう」

聞く方も失礼だが、呼んで間違えるよりいいだろう。いや、呼んで間違えてネタにした方が面白かったかもしれない。
顔立ちが綺麗なのでよく女に間違えられるらしく、本人もため息をつきながら返事をしてくれた。よかった、クラピカちゃん、なんて言って間違えたら怒られたかもしれない。


「あ、メイさんあっちみたい」
「本当だ、いこーぜ」

タワーから出られるらしく、受験生は順に姿を消していた。ここですぐ離れるのも何かおかしいので、四人と一緒に外に出ることにする。
ゴンくんキルアくんの二人は当然私も一緒に出るつもりだったらしいが、心配になったのであとの二人…クラピカくんとレオリオさんも了承を得て共に指示された方へと向かった。

久々の陽の光、久々の新鮮な空気。さすがに三日もこの中にいちゃやってられない。髪は砂でごわごわになるし、服は汚れるし、ヒソカにひっつかれたし、タワーの中は散々だった。
外の空気は開放感がある。暗い中、しかも受験生のライバルたちと同じ、緊張が途切れない空間。私の場合ヒソカにぶち壊されたようなものだけれど、警戒はしていたから同じようなもの。
外へ出れば試験官が待ち構えており、四次試験へ突入するようだ。






受験生たちは脱出順に箱から何かを引いていた。私も引いたけれど、これは何?
試験官のいうところでは、“狩るものと狩られるもの”。四次試験は無人島でのプレートをかけたサバイバル。それぞれ受験生がひいたものはターゲットとなる番号。先ほど引いた時点で誰がどの番号を引いたかはチェック済みらしく、番号の交換は許されないという。

相手のプレートを奪い合うこの試験。自分のプレートは3点、ターゲットのプレートは3点、その他のプレートは1点扱い。集め方はなんでもいい、とにかく合計点数6点集めた者が最終試験に残れるらしい。
そこで私は一つの疑問を抱いた。


「…自分の番号引いたらどうすんのさ」

小さくつぶやいたのだが、隣の人には聞こえたらしい。反応を返されてしまった。

「たしかに、自分の番号を引く可能性もあるな」

返してくれたのはあのハンカチを貸してくれようと声をかけてくれたハゲの人。応えてくれたことにびっくりして、思わずじっと見てしまっていた。

「質問なんだが」
「どうぞ」
「もし自分の番号を引いていたらどうなるんだ?可能性はあるだろ」
「その場合、一つのプレートに自分のプレート3点、ターゲットのプレート3点の計6点の価値が与えられたと考えればいい。期限が終わるまで自身のプレートを阻止しておけばいい、という事だ」
「そうか、ありがとう」


だとよ、と私の代わりに質問をしてくれたハゲの人にありがとう、といった。まさか自分の疑問を代弁していってくれるなんて思わなかった。
ハゲの人…いい人だ。このサバイバルでお互いターゲットじゃなかったら何か協力してあげよう。

試験官の指示により、自分の引いた番号を確認し始める受験生。
私も同じくして番号を確認した。が、自分の目を疑う。一回目を離し、疲れているのか目頭をぐりぐりと押してから再び番号を確認する。…間違いじゃない。むしろ見間違いであってほしかった。


「(224番…)」


其れは間違いなく、自分の番号。まさか自分で思った疑問が、自分に降りかかるとは思わない。でもターゲットで狙われる可能性が低くなったのはそうなのだが、手当たり次第というやつもいるだろう。
自分のプレートがターゲットじゃないのは其れが面倒な所だ。ひとつのプレートがなくなっただけで0点になってしまう。その分、ターゲットがある人はターゲットのプレートを奪えば3点は手に入る。この一週間、プレート一枚を守り抜かねばならない。

その後は船に乗って島へ移動。その間、皆自分のプレートは懐へとしまっていた。ゴンくんキルアくんなど隠していない受験生もいたが、私は隠しておいた。隠さないと自信過剰に見えるし、後は周りと同じ行動をした方がいいかな、と思ったため。狙われやすくなるといえばそうだが、受験生のプレート番号を覚えている人が大半だろうし、隠しても支障がない…ようになるように願う。


「おねーさん」
「キルアくん」
「ターゲット、何番?」
「言うと思う?」
「へへっ 言わないよなあ」
「大丈夫、キルアくんじゃないよ」
「…ゴン、とか?」
「それもない。クラピカくんにレオリオさんでもない」
「そっか。あー よかった!」
「キルアくんは?」
「俺も違うよ。知らない奴」


キルアくんは私の心配をしてくれていたらしい。次の試験ではプレートを奪えればなんでもあり、つまり人を殺めてもなんでもいいということ。もし私のターゲットがキルアくんで戦いを仕掛ければ、キルアくんは迷いなく私を迎え撃つ気だ、と言われた。
私はキルアくん相手でも殺しはしない。致命傷は分からないが、追ってこられないようにはする。しかしそれは自分の場合。きっと他の受験者たちの大半はターゲットを追ってこられぬように止めをさすだろう。


「でもこれで安心した。期間中におねーさんに会いに行っても平気な訳だね」
「会いに来てくれるの?」
「退屈だったら行く」
「そう。じゃあ待ってるね。私も忙しくなかったら、だけど」
「何かあったら手伝ってやるよ」
「生意気!」
「ははっ」

少年に助けられるのは納得いかないが、キルアくんはたぶんそれなりの実力を持っている。もし本当に助けてくれるなら助けてもらっても平気かな。ここは頼ってしまおう。
そう言っているうちに船はどんどんと島へ近付いていく。キルアを誘って、そろそろ受験生が集まっている場所へ向かった。



船を降りるのはタワー攻略順。
最初にヒソカ、そしてすんごい人もハゲの人も降り、いよいよ自分の下船の番。


「では13番の方、どうぞ!」
「はーい」

ナビゲーターのお姉さんの声に返事をすると、私の声に声が被った。

「えっ おねーさん13番だったの!?」
「メイさんすごい!」
「あはは、ありがとう。じゃ、先に行くね」


ゴンくんキルアくん、そしてクラピカくんにレオリオさんに向かって笑顔で手を振り、下船をした。

私は13番目、この島にはすでに12人先客がいる。私がターゲットの人はいないはずだが、手当たりしだいプレートを狙う人からは下船してすぐにでも私を狙う可能性は高い。周りに警戒しながら森を進む。
さっきハゲの人に一緒に行動しないか聞くんだった。あの人も実力を持っていると見えるし、何よりそういう人についていると私が安全だ。失敗したな。というか次あったら名前聞こう。よくしてもらったのにいつまでもハゲの人呼ばわりだとなんだか申し訳ない。
後から悔やんでも仕方ないので、プレートと周りの殺気、気配に注意しながら森の深くへ入っていった。





しばらく行ったところで大きな木のそばに水辺を見つけた。近くを見れば花が咲いているし、そこには小さな実も付いている。ここなら木の上で寝られるし、身体も簡単に洗えるかな。
下船した場所からは結構離れたし、潮風が当たるところから海辺に近いと推測する。

まず最初の生活場所にできるように、もっと詳しく周りを探索しようと草むらに足を踏み入れた。



――――――――
メイちゃんは大体の人の強さを判別できます。が、それはしばらく観察していたり近くにいて相手の変動を感じたりしてわかっていくことなので、最初の方ではキルアの実力はわかっていません。
なので途中からキルアは実力はありそうだ、という感じに思っています。
2012.02.20.

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