6 耐性感度




トウリの涙が落ち着いた頃、食事が次々と運ばれてきた。
焼きたてと思われるパン達にベーコンエッグ、コンソメスープにサラダ、ジャーマンポテト。それと各自に飲み物が配られ、トウリはココアであった。

いただきます、と手を合わせて食事に手をつける。昨晩も食事を頂き、とてもおいしかった。ただ自分の家と同じく毒を仕込んであったのは、やはり暗殺一家というべきか。


「どうだ?」
「おいしいです!」

毒を仕込んであることは言われていないが、なんとなくで分かる。自分の家で食べていたような毒もあるから味が似ているのだ。

「毒はどのくらい大丈夫なのかのう」
「まだためしていないのは、たくさんあります」
「大体の毒には耐性がついている、とシャルドから聞いている」
「まあ、どうりで食事をしてもケロッとしているわけね!じゃあまだ試していないものも慣れていかなきゃいけないわ…ホホホ、楽しみね」


キキョウの嬉しそうな声を聞き、イルミもほっと息を吐く。
この子は僕と同じ、暗殺一家として訓練された子。毒の耐性もあるし、体術だってそれなりだ。
少し心配をしていたイルミだが、料理や会話もそこそこに行われていたのでほっとする。


「もう少し歳を重ねたら、媚薬にも手を出さなくてはだめね」
「び、やく?」
「イルミにも、試していかないといけないわねえ」
「ぼくにも?」
「キキョウ。…まあ2人はその時までにほぼ完璧に毒の耐性をつけていなさい」
「「はい」」


キキョウのいう“びやく”に興味を持つものの、シルバがそれを阻止したために聞けず終いになった。
もう数年したら教えられるのだろう、とそのときは気にしなかった2人だが、後々これがちょっとした事件になるとは2人は微塵も思いはしない。





「今日もうまかったぞ、キキョウさん。ごちそうさま」
「あらお義父さん、もうお仕事ですか?」
「ちょっとばかし連絡しなくてはならんのでな。トウリ、まだゆっくり食べるといい」
「は、はい」

しばらくしてゼノが食事の席を立つ。同時にマハもゼノの仕事上の関係で席を立った。部屋を出る際にトウリの頭をぽんぽんと叩き、笑顔で去る。多分、ゼノと同じようなことを伝えたのだと思う。

「ごちそうさまでした」

隣でパチンと手を合わせる音が聞こえ、見ればイルミは朝食を食べ終わっていた。急いで食べなければとトウリも少し急いで口へ運ぶ。

「急がなくてもいいよ」
「、でも」
「僕はまだここにいるから」
「…少し、まっていて」
「うん」

残りのポテトにココアを胃へと入れ、ふう、と息を吐く。手を合わせて「ごちそうさまでした」と口にすれば「お粗末さま」と返ってきた。


「美味しそうに食べてくれて嬉しいわ、トウリさん」
「本当においしかったです」
「お昼も楽しみにしていてね」
「はい」


キキョウとの話を終え、イルミと共に空になった自身の食器を流し台へと持っていく。
するとイルミがじっとトウリを見つめていた。


「…母さんの“楽しみに”っていう意味、わかってる?」
「? 何をつくるかではないの」
「“何の毒を入れるか”だよ」
「っえ!」


そんな会話をしているとはつゆ知らず、キキョウは昼食に何を入れようかルンルンで考えていたらしい。




2012.02.29.
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トウリちゃんも暗殺一家出身なので、毒耐性は一応あります。


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