最終試験




最終試験会場に着くまでにネテロ会長と面談をした。
ヒソカやイルミも呼ばれ、しばらくした後に放送で呼ばれる。中へと入れば、何か草のような変なにおいがした。でも心地いい、落ち着く部屋だ。


「ほっほっほ。まあ座りなされ」
「あ、はい。失礼します」

会長が座布団の上に座っているので、習って私も座布団へ会長と向かい合わせになるように座る。


「ここまでの試験、どうだったかな?」
「大変でしたけどなんとかここまで来ることができました」

トリックタワーでいっぱい怪我したし、まさかのサバイバルでは自分のプレート死守で神経減らすし、この休息時間も変な2人に台無しにされそうである。ヘタをしたら死んでいた場合もあるが、何とかここまでこれたのは事実だ。

「最終試験までには女性はお主一人だが…はて、そこまでしてハンター試験に受かりたい理由でもあるのかのう」
「理由が必要ならば強くなりたいから、でしょうか」
「その理由は聞いていいものか?」
「えっと、強くなって認めてもらいたい人がいるんです。…もう、生きてはいないんですけど」
「ん、言いづらかったか。すまんの」
「いいえ、大丈夫です」


思い出すのは、母の顔。
もっと私の成長を見てほしかった。そうして成長した私を見て笑ってほしかった。
強かった母に、少しでも近付きたかった。


「では質問を続けよう。この中で一番注目しているのは?」


ぱっと会長が出してきたのは受験生全員の写真。中には私も入っており、変なところを見ている写真だ。出来ればこの写真は撤回してほしい、もしくは別のものに変えられなかったんですか。
とも言えず、注目している点で考えればこの二人しかいなかった。

「んー…ゴンくん、キルアくんかな。小さいながら凄いと思う。ハンゾーさんは実力もあるけど、そんなこと言ったらヒソカもだし」
「うむ、では最後の質問じゃ。この中で一番戦いたくないのは?」
「出来れば戦いたくない。戦わなければならないのなら戦うけれど…殺生は嫌いだし、負ける自信がある。何より怪我をしたくない」
「ほっほっほっほ。うむ、では下がってよいぞ」
「はい。それでは失礼します」

席を立ち会長に向かって頭を下げる。
そのまま振りかえることなく、部屋を出ようとしたその時、


「……ロイは元気かの」
「!…はい、生きてはますよ」
「そうか」


パタリ、と扉を閉じて部屋を後にする。
足早に自室へ向かえば、ヒソカとイルミが自室でトランプ遊びをしていることに気がついた。…このままだと、普通に接することができない気がする。

先ほど会長から出されたロイという名は、父の名だ。
ハンターである父のことを当然ながら会長は知っていた。そのことからすると母のことも知っているのだろう。隠していたが、バレバレだったらしい。
それならば何も隠す必要はない。普通に、堂々としていればいいだけのことだ。
そう心の中で思い、よし!と意気込んでから自室へ足を踏み入れた。









3日間の休息が終わる。
最終試験会場へと到着した一行は、ぞくぞくと指定された会場へと足を踏み入れていた。
朝一番にクラピカに出会ったメイはそれからというもの、クラピカの後をついて回って一緒に居た。それは勿論、あの2人と一緒にいたくないからだ。


「おねーさん、あれからずっとあの2人といたの?」
「いたんじゃなくて、正確には捕まってたんだよ…クラピカくんに助けを求めたら快く引き受けてくれたの」
「仕方ないだろう、泣き付かれては断れない」
「だからさっきからクラピカと一緒なのか、アンタ」
「アハハ、そうです」

イル…ギタラクルさんも私がキルアくんのそばに居れば寄ってこないと思ったし(後から何か言われたりするかもしれないが)、ヒソカも何だかんだクラピカくんのそばに来てからは話しかけてこなかった。
私と一緒に居ることに飽きたのかもしれないと一瞬思ったが、ヒソカの姿を見つけるとすかさず私に微笑みかけてきたので、それはないことは分かった。仕舞いにゃ手を振ってきたのでシカトを実行。

そんなこんなで会場に試験官の方々が集まってくる。全員集まると、ネテロ会長が咳払いをする。会長の隣には布で隠された…ボード?らしきものが。


「集まったかな。では…最終試験は、一対一のトーナメント方式で行う!組み合わせを発表するぞ」

布の下から現れたのはボード。そこにはトーナメント形式の組み合わせが書かれていた。
すぐさま自分の番号を探し、誰と当たるか確認すれば相手はボドロという男。隣にはクラピカVSヒソカで、負ければどちらかと戦う事になる。しかも後をたどればレオリオさんもいるし、負けられない。
が、このトーナメントは見るからに戦う回数に差がありすぎる。レオリオさんなんか2回ですけど!

「これじゃ合格者一人じゃねえか」
「いや、逆じゃ。たった一勝で合格である」
「たった一勝?」
「勝った者が抜けていき、負けた者が上へと昇っていくシステムじゃ」

すると、キルアくんがトーナメントの組み合わせに異論を立てた。明らかな回数の差に、何を基準に決めたのか会長に問う。会長も核心的なことは言えないが、基準となったものは教えてくれた。

身体能力値、精神能力値、印象値。この三つを基準としている。
最終試験まで残ったので身体能力、精神能力値は言わずもがな。決定的なものとなるのは印象値。面談での生の声にプラスし、ハンターの素質で最終的に決まったと言っていい。それが高いものに戦うチャンスを多く取っている、らしい。

会長の説明にキルアくんは納得のいっていない様子だが、私はこの試験内で判断するなら十分なことであろうと思う。


「武器の使用は可能じゃ。ちなみに相手に“参った”と言わせれば勝ち。しかし相手を死に至らしめてしまった場合、その者は失格。その時点で最終試験終了、ほかの受験者は自動的に合格となる。いいかのう?」


いいかのう、と聞かれても既にネテロ会長が決定した試合内容なのだし誰も文句は言えないだろう。

こうして始まった最終試験。
あんなことになるなんて、誰も思いはしなかった。





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ちょっと短め。
コミック持っていないので細かい描写は出来ないんですけど…すみません。

2012.04.15.

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