ヒソカの言い分



目の前の青い果実は、やっぱり見込んだ通りだった。
ボクの予想通り…☆

きっとおいしく、成長してくれるに違いない◆



四次試験、合格ラインのプレートを手に入れてからメイをさがした。
出来れば最初から一緒にいたかったけれど、こんなサバイバルだから僕が抑えられるかわからなかったし、後からでもいいかと思っていた。案の定、途中で興奮しちゃったからメイがいなくて正解だと思う。
森を探してもなかなかいないし、というか森に居る気がしない。と、ふと森の外れに行こうと思った。というかそこにメイがいる気がした。

歩いていけば案の定、そこにメイがいた。
ボクがきて驚いたようだけど、結局引きとめてボクはメイと一緒に時間を過ごした。

三次試験、タワー下で待機していたボクはメイが降りてくる直前、微かなオーラを感じ取った。それは一緒にいたギタラクルも同じようで、開いた扉を二人して見ていた気がする。そうして降りてきたのがメイ。
凝をしてみていたが、メイは普通にオーラを垂れ流しているようだった。しかし降りてくる直前の方が今よりも大きなオーラ。もしかしたら念使いかもしれない、と質問をしてみたが、念は知らないようだ。
しかし、念の四大行である纏と絶は身につけているらしい。それを念とは知らされていないらしく、本人はよくわからずに使っていたらしいけれど。

一応どんな感じなのか、それが本当に念なのか確認するために“絶”をやってみてもらった。
…うん、完璧だね☆
完全に気配を絶ってる。森の中、この状態でいきなり攻撃されたらきっと100%は避けられない。これを念だと悟られずに修行をつけたとは、メイを鍛えた人物は相当な実力者かもしれない。いや、メイが信頼を置いている人物なら疑いもなく言葉のまま習得するか。
それにしても綺麗な耳だよね…噛み付きたくなるなぁ。
……じゃなかった。とりあえず絶はおしまいにしてもらって、メイのことを知っていこうかな。


「もういいよ◆」


ボクがそう言うとぱっと目を開く。ああ、いいね。やっぱり生かしておいて正解。きっとこれからボクを楽しませてくれる子の一人。そう思うと自然とメイを抱く腕の力が強くなる。ああ、いいよ…!

其の後、ボクが“強くなれる”と言うと、メイは目の色を変えてボクを見てきた。おやおや、そんなに強くなりたいのかい?
確かに強くなれる子だ。だが、纏と絶が出来るにもかかわらず、念の存在を教えられていないという事は、纏と絶を教えた人物は今メイの近くに居ないと予測する。メイほどの器なら、とっくに練も発も、その先だって指導していてもおかしくないのに。むしろ勿体ないね。
ボクがここから指導してあげるのが一番楽しいかな。ボクの知らないところで成長しているともっと楽しいけれど、この子は大きな力を得る器が目に見えている。ボクが教え込んでボク色に染めて、ある程度の力までつけさせたら離してやればいい。
そうやって今度はメイの好きなように成長して、それからボクが狩りに行く…いいね、最高だ。
ああ、メイを指導出来たらどんなに楽しいだろうね。想像するだけでゾクゾクするよ。笑も込み上げてしまう!


「どうすれば強くなれますか」
「其れを聞いてどうする?」
「実行して、強くなります」
「ククッ 一人では危険だよ☆」
「誰かに頼みます」
「ボクがみてあげようか?」
「……は」

ボクに強くなる方法を聞く、という事は指導していた人物がいない可能性はもっと高くなった。メイがいつ、どこで教わったのかは知らないけれど、何らかの事情だろう。その人物だってこんな人材を簡単に手放すはずがない。
だからその隙を狙って、ボクはボクを売り込む。一人の修行は危険だ。何も分かっていないのにどう強くなるという?聞いただけじゃなかなかできないものだよ。
ククッ頑張ってるメイを見るのも悪くないけれど、それは時間の無駄というもの。誰かに頼む、という宛てもあまりないだろう?そんな教えられる人がごろごろいる環境だったなら、今まで教えなかったのが不思議だ。つまり、近くに可能性のある人物はいない。
それに#メイの成長を見てみたいんだ、本当に。珍しいよ?ボクがこんなことを思うなんて。


「ボクが見てあげる。ボクがメイを強くしてあげよう◆」
「…ヒソカさんへのメリットは」
「キミの成長を近くで見れる☆」

きっとメイはこの楽しさを理解していないだろうね。でもいいんだ、逆にわかっていてもちょっと困るかな。
純粋なままの青い果実でいてくれよ、今はま・だ。

「ボクはね、成長する見込みのある奴は殺さない◆そして成長してから狩るんだ。強くなってボクと戦って、そしてその強さがボクを高ぶらせて…それで一気に狩る◆ああ、なんて楽しいんだ…!」
「あ、頭大丈夫ですか」
「大丈夫だよ◆将来に見込みのある奴を生かして、その成長を楽しむのが僕の趣味。だからキミも殺さない☆」
「つまりヒソカさんは根っからの変人で変態で殺しが好きってことですね」
「…言うね、メイ◆」


そう、“今”は殺さない。まだまだ青い果実だから。ボクの楽しみ、ボクの生き甲斐、ボクを楽しませてくれる可愛い子だ…。
いつかメイの器にちょうどの力をつけてから、それからボクをもっともーっと楽しませてほしい。
僕らの利害は一致している。
メイは強くなりたいらしい。ボクはメイを強くする術を知っているし、指導もある程度できる。

メイが強くなることはボクの楽しみでもあるし、ボクの楽しみをさらに楽しくするにはメイが強くなることが必須。
ああ、メイは迷っているようだけれど…さて、どうするかな。
きっとメイはボクが強いことは悟っているだろうけど…一次試験中にやっちゃったしね。危険人物とか言われているらしいからそれなりの警戒はしているだろう。結構スキンシップしても拒否されているのが証拠かな。


「どうする?」
「……私が強くなれば、すぐに私を殺しますか?」
「◆」
「肯定ととりますよ」
「すぐには殺さないよ◆修行しても、強くなるにはさらに時間が必要となるしね◆」
「それは、修行が終わってもまだ強くはならない、と」
「多少は強くなる◆けどそれで終わりじゃない…っと、言えるのはここまでかな☆」

もしメイがボクの指導を受けるって言うなら教えてあげてもいいんだけどね。そう簡単にはいかないんだよ。ボクもそこは、しっかりしてるからね。
そこまで頭が悪くないだろうからしっかり考えているだろう。黙ったまま眉間にしわを寄せている姿から想像するに、二人の利害の一致をまとめてる。それからボクからの被害が出ないかとか、これからの危険性も計算してる、かな?
まったくいい子だね。そういう子は好きだ。


「よろしくお願いします」


そういうからには、しっかり指導しなくちゃね。
このハンター試験が終わってから開始だ、と約束づけて、この件は終わりにする。ちなみに場所の提供はボクがする。知らない場所でやっても駄目だしね、ちゃんと生活できるところでやらないと。体調管理は大事だ。
さて、試験後の楽しみがひとつ、増えたよ。






それから日も沈み、そろそろメイを離してあげようと思う。メイから言わなかったら僕は離さないけどね。
っと、思っている間にもメイは離してほしいと言ってきた。仕方ないな、名残惜しいけど僕の腕から解放してあげよう☆
ボクも寝る場所は今から探せないし…まあ寝なくてもいいけれど。でもせっかくなんだからメイのそばで寝たいな。メイが寝たらそっとそばに寄って隣で寝ちゃえばいいか。うん、いい考え。
下心丸見えなことを考えていると、メイはボクの傷の心配をしてきた。うーん、やっぱりいい子。でも処置してくれる様子がないから、まあとりあえずの心配なんだろうね。

それより、メイの様子が何かおかしい。
オーラの量が増えているし、暗くなってきた辺りに反してメイの瞳は少し光っている。綺麗な紫色の瞳が、暗闇でもわかるくらいに、明るく。
メイの域も荒くなってきたし、何か持病か、発作か。それでもボクに気付かれないように口元に手を当てて堪えているメイは、本当に気付かれたくないようだ。
さて、平然を装ってメイに探りを入れてみる。


「どうしたんだい?寝ないの?」
「ヒソ、カ」
「うん?」

若干、メイの声がかすれていた。
情事のような、ボクを誘っているような、そんな声。さっきまでの声とは違う、何かに耐えているような。
様子がおかしいな。オーラが先ほどよりも大きすぎる。これじゃ殺意丸出しで町中を歩くようなものだ。ここには僕しかいないからいいけれど。しかし念を知らないメイが意識してこの状況を作っているとは思えない。きっと無意識。

「メイ?」
「…い、そ」
「え…◆」
「おいし、そ」


メイの口から出た言葉に、正直驚いた。
「おいしそう」…?
そのままボクに抱きつき、肩の傷口に顔を寄せていくメイの様子を見て、嗚呼、“血がおいしそう”ということかな。もしかしてメイは吸血鬼の血族か何かだろうか。それにしても様子が違いすぎる。試験中の戦いもあまり自分から攻めない様子だったのに、血にこんなにも反応するなんて。

傷口に近付けた顔からは、微かに僕の血の香りを嗅いでいるような気配。このままだとボクに危害が及ぶかもしれない、と冷たく「メイ」と名前を呼べば、メイははっとして自我を取り戻したようだ。…少し殺気を交えてしまったのは秘密。
そのまま自身のしたことにおびえる様子のメイをぐっと引きよせ、再び腕の中へ閉じ込めた。こんなに震える子犬のようなメイを見て、手を出さないわけはないだろう?
ぽんぽんと頭をなでながら、メイをなだめる。
さて、どう聞きだそうか。メイは自身の口から多くを語りたくないらしい。先ほどから見ていてそんな様子だ。今回もしかり、言うのを躊躇っている。「大丈夫だよ、」と諭せばボクの腕の中でゆっくり、言葉を紡ぎだした。

メイが言うには、実力のある強い人の血が時折飲みたくなるらしい。これは自身では制御できなくて、それが怖いのだと。
男女関係なく、欲する。ハンター試験が始まってから時間が結構経っているから、警戒していたらしいけど。それでもこれは制御できない、とか。

確かにボクは殺人を好む。しかし、血を飲むことは好まないかな。そんな自分が怖くなるのは分かる。戦えば血は多少でも出るだろうし、その相手が強い人物ならば先ほどの状態になって血を飲んでしまう。だからなるべく戦いは避けているのはメイらしい。
しかし制御できないと言っていて先ほど元の状態に戻ったのは、きっと一時的に過ぎない。これからすぐにまた血がほしくなるだろう。
ならばここでボクの血を飲ませるしかない、かな。その状態も見てみたいし、何より気になる。一度見てみたいかな。そう思ってトランプをだし、ボクは自分の腕を傷つけて血を流した。
誘えばメイは恐る恐るボクの血をなめる。そうして、思考を手放して赤を流す僕の腕をメイが啜る。…ああ、いいね、その表情。舌使いも器用だ。この角度からのメイ、最高だ。とても官能的で、興奮してきちゃうよ…!

そんなボクの葛藤も知ってか知らずか、メイは血がでなくなると大人しく僕の腕を離す。官能的な時間はあっという間に終わった。
メイはボクに謝罪してきたけど、これは結果的にはボクが勝手にやったこと。謝る必要はない。
怖がっているのか、すまないと思っているのか、うつむくメイにもう寝ようと言葉をかける。今日のところは隣で寝るのは勘弁してあげようかな。少し離れたところで寝てあげよう。今のメイには誰かがいることが大切だけれど、くっつきすぎるのも問題になる。
気になっていた敬語の修正をさせ、それから大人しく寝る体勢に入った。


これでメイに接触する理由が出来た。
試験後も約束を取り付け、メイの成長の手助けができる。

ああ、これからもっとボクを楽しませてくれよ…
かわいいかわいい、ボクの――――――




――――――――
ヒソカがだらだら語っているだけでした。
ちなみに最初に円を使って位置把握をしなかったのは、ヒソカが自力で捜し当てたかったからです(笑)
2012.02.25.

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