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「マネージャー、やってくれないかな?」


このような状況になった訳をご説明いたしましょう。

私は至って普通な立海大附属高校の生徒です。市立の中学から高校受験でこの立海大附属高校に入学した、持ち上がり組からみたら所謂外部入学生です。
同じ外部入学生とも持ち上がり組とも仲良くなり、部活には入っていないけれど高校生活を満喫し始めた、夏休みが終わった2学期始め。強豪と呼ばれる男子テニス部の同い年のアイドル――幸村精市に密かに呼び出された。
テニス部に興味を持たなかった私が、テニスの人に何の接点も持っていない私が、何故幸村くんに呼び出されたのかわからないけれど。とりあえず放課後に残っていてほしいと言われたので残っていたら幸村くん直々のお迎えがきた。言われるがまま幸村くんに付いてきたわけだけれど、うん、呼び出された意味が分からない。

で、よくわからぬまま人気のない四階の踊り場へとつけば、冒頭の台詞が私に降りかかった訳である。
全く、世の中よくわからないことだらけだ。


「あの、人違いじゃ?」
「藍沢葵さんだよね?」
「は、はい」
「じゃあ間違いはないけど」

そう言うからには間違いなく私に向けたお話なのだろう。だけど何故私?なんか恨まれてる?外部入学生だから中学からの暗黙のルールがあったなら私が知らない間に破ってる可能性はあるけれど。

「言っておくけど暗黙のルールも藍沢さんに恨みがあるわけでもないよ」
「えっ!」

なんで言ってないのにわかるんだろう!なんか怖い。どうしようさわやかに笑ってるのに怖いんだけど!って、こんなこと思ってたらまた悟られちゃうかもしれない。よし、平常心平常心…平常心をたもて私。

「で、どうかな?」
「いや、マネージャー、と、言われましても…。私を誘う真意が読めないのですが」
「真意とかないとだめかな」
「いやその…一応あるならば聞きたいのですが」
「強いて言うならマネージャーが欲しいから」

フフフ、と不適に笑う幸村くん。顔に似合わず結構な圧力をかけてくる幸村くんなんだけれど、私はそう言われて「じゃあやります」という人間ではない。初めて喋る人だし、本来人見知りの激しい私は易々と同意は出来なかった。

「あ、もしかしてファンの反響が怖いとか?」
「え、まあ確かに怖いですけど」
「大丈夫だよ、それの対処には尽くすから」
「でも私を誘った理由が…。私テニス部の方とは接してませんし、ファンでもありませんし、普通の女子ですし」
「たまたま目にとまったから」
「…はい?」
「たまたま目にとまって、マネージャーの仕事をしっかりやってくれそうだと思ったから。真面目そうだしね」
「はあ」

そういう幸村くんは、なんだか格好いい。というか学校中の人気者の目に留まるようなことはしない(むしろ目に留まりたくないから地味に生きる)から、目に留まったことは嬉しいわけだが、目立ちたくないからなんだか複雑。


「で、どう?マネージャー」
「いや、私部活…」
「入ってないよね?」
「………ハイ」
「じゃあ選択制ね」

選択制?なんだそれ。
疑問に思えば、幸村くんは両手の人差し指だけたてて、変わらず私に笑顔を向けていた。


「マネージャーをやるか」
「?」
「YESorはい」
「え、」


幸村くん、そりゃないよ。





―――――――
幸村は公式で最強だか(ry

書き終わり:11.02.18.

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