庭球 | ナノ



※企画提出物。
社会人設定、ヒロイン年上。




雨の多い季節。今年も例外なく雨の降る日が続いていた。
6月の半ば、久々に雨が上がり太陽が顔を出すとお天気お姉さんが言っていたので、張り切って洗濯機を回した。


「んーっ いい天気っすね!」

天気はお姉さんの言うとおりに晴れ。雨の多いこの季節は部屋干しになるため、外で洗濯物を干すのはとても気持ちがいい。
恋人の赤也が窓を開けてベランダへと一足先に出る。それに続く私は洗濯物のたくさん入った籠を抱えてベランダへ到着した。

「もう、洗濯物重いんだから持っていってよ。赤也のが力持ちなんだから」
「あ、すんません」

よっこいしょ、と言いながら洗濯籠をベランダ内へ持ち上げようとすれば、赤也がにょきっと腕を伸ばして軽々とそれを持ち上げる。手軽になった私はそのまま赤也のいるベランダへと出る。久々に見る太陽が私を照らした。


「きっもちー!」


伸びをして全身で太陽を味わう。
梅雨の季節じゃ難しいかもしれないけど、太陽に当たらないとスッキリしない。恋しかった太陽。やっと洗濯物が外で干せる!

「葵サーン、干しましょうよー」
「あ、ごめんごめん。あまりに太陽が恋しくて」
「…俺、部屋入りますよ」
「嘘うそ。ほら、洗濯物干しちゃおう」


太陽に嫉妬したらしい赤也をなだめるのに洗濯物を突き出す。渋々受け取るけど、赤也は共同作業が好きだ。2人で料理したり、買い物行ったり、部屋の掃除だって。
これは一緒に住み始めて学んだこと。


パサリと風に靡くシャツにタオル、シーツ。ベランダいっぱいに干された洗濯物たちに何だか感心する。


「すっげー!空が真っ青」
「雨上がりだから余計に綺麗だね」
「雨は嫌いッスけど、こういう晴れた日は格別ッスね!」
「調子いいんだから」
「へへっ」

作業が終わり、ベランダにもたれ掛かりながら2人で空を眺める。晴れだからか、私と同様、赤也はそれに比例するように元気だ。青空に溶ける赤也の笑顔は格別キラキラしていて、眩しいなあ、なんて思った。

「あ、そうだ先輩」
「んー?」

ちょっと湿った風が私たちを包む。赤也のくるくるした髪が揺れて、私の髪も釣られて、ふわり。


「来年の今日みたいに晴れた梅雨の日に、結婚式、挙げません?」


…えっ。
な、にを、言い出すかと、思えば。
赤也の口にした言葉がうまく飲み込めない。だって今、なんて言った?

「え、なに、どうしたの赤也?」
「…どうしたのって酷くないッスか」
「だ、だって!」

け、結婚式…とか、いきなり赤也からそんな言葉が出てくるだなんて思わないでしょう?
お互いもう成人で仕事にも馴染んでいるし、色々考えなくちゃいけない時期。私は意識していたし焦りもあった。だけど赤也がそこまで考えてくれてたなんて。

「結婚しましょう。いや、してください!」

先ほどとは打って変わって、真剣な顔つきをされる。…卑怯だ、こんな男らしくするなんて!

「赤也は私でいい、の」
「な、なに言ってんスか」

ビシッと人差し指で指されながら、


「俺、葵さんのこと誰よりも好きッスからね!」




晴れときどき、キュン


(いつまでもその笑顔をわたしに向けててね)





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「ジューンブライド」さまに提出。
赤也×年上彼女でした。
ありがとうございました!

2011.
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