烏野のペナルティ中、ドリンクなどを潔子さんとやっちゃんに任せ、自分はコート内の片づけとタオルなどの整理整頓をしに残って作業をしていた。そんな中、研磨くんに先ほどの京治くんの嫌がらせともいえることを話そうと音駒のところへと訪れた。音駒は丁度、試合に勝って休憩中らしい。


「研磨くん…」
「!……な、なに」
「警戒しないで。とりあえず隣で話を聞いてくれればいいから」
「ああ…赤葦?」


人見知りらしい研磨くんの警戒を強めないよう、面と向かって話す気は更々なかった。話しかけられて警戒態勢を取り始めた研磨くんに、最初に逃げ道を作っておく。
特に話を聞いてほしい、と言っただけで内容が京治くんのものだと分かってしまうとは…。もう少し自分の態度が表に現れないようにしないとなあ、なんて思いながら研磨くんと会話を続ける。

「さっき絡まれてたね」
「から…うん、絡まれてたかも」
「また何したの」
「私なにもしてないけどね?京治くんが何かしてくるんだけどね?」


先程の"ついてる、ついてない騒動"(と勝手に命名した)を研磨くんに話すと、特に興味がないのかもともとそうなのか、研磨くんはだるそうな態度であった。けれど聞いていないわけではなく耳はちゃんと傾けてくれているらしい。
話し終えれば「しょうもない」と一刀両断されて地味に落ち込む。だって怖かったんだもん。京治くんの辛みがなかったらこんな怖くなることもなかったのに、どうしてこうも穏便にいけないのかなあ!


「もうさあ、どうして京治くんは絡んでくるんだと思う?」
「さあ」

研磨くんはさらっと答える。関心が薄いのは分かるけど、こう、嘘でも少し考えるそぶりがあれば私が嬉しい…!研磨くんの声色が「何で俺に聞くの」といったものだったのは置いておく。
と言うか本人に聞けたなら研磨くんに相談しないよ。本人に聞けるならいの一番に聞いてるよ。聞けないからこそ、こうして助けを求めているんだよ、研磨くん。


「…今まで、こういったことってあった?」
「? どういったこと?」
「こう、他校のマネージャーとこう、こう…なんて言うか!」
「仲良くなったり?」
「そう!そう!仲良くなったりとか!」
「俺もすごい関わってる訳じゃないし、…まだ二年だし、よくは知らないけど。なかったんじゃない」

例にあったら参考にさせてもらおうと思ったけど、ないのか。本当、どうして私なんかに声をかけるんだか、わからない。
ただ東北から来て、物珍しくて、たぶん反応が京治くんの何処かのツボに入ったのだろう。そうだ、そう思えば納得できなくもない。少々無理矢理な気はするが、何か理由をつければ自分のなかにもストンと落ちていく。

「風見さんと話してる赤葦は、楽しそうだよ」
「…そう思う?」
「……うん」
「からかって反応を楽しんでるだけだよー」


京治くんのなかで私がどこかツボになるようなことをした。そう思うようにしよう。でないと京治くんを変な人認定してしまいそうだ。いや、十分変な人と認識はしているんだけども。

一通り自分の気持ちを整理して、研磨くんにも結果を軽く伝えて、ありがとうと感謝を述べてその場をあとにした。
帰り際、研磨くんをちらりとみれば、目線を反らしながらだけど小さく手を振ってくれていた。



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16.05.20.
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