いつの間にか合流したクロに絡まれていた烏野の…風見さんは、俺のジャージをひっぱって後ろをついてきていた。たぶん赤葦がわざと握らせてクロの入らせる隙間を作らないようにしたんだろうけど。
そうしてうまいこと赤葦が風見さんを逃がした後、ようやく俺も逃げられると思っていたのに。結局クロに引っ張られて梟谷の主将と赤葦と同席で食事をしなくちゃならなくなった。

赤葦が質問攻めにあっているのを横目で見つつ、俺に被害は来ないなと安心して朝食を口にする。朝は眠い。翔陽は元気だ。ちょっと離れた席でも分かるくらいの声でしゃべっている。
と、赤葦への話がひと段落すると空気が一瞬、静かになった。…のを見逃さないクロは、目の前の俺を見つめながらニヤニヤしている。


「…なに、クロ。気持ち悪い」
「気持ちわりーはねえだろ!…で、お前はどうなわけ」
「は?」
「烏野のマネちゃんだよ!お前も一緒にいたんだから、なにかあるんだろ」
「別にないけど」

本当、俺は特に何もない。
あの日話しかけられたのは俺だけれど、そのあと俺は別に関わりたくて関わっているわけではない。俺からは別に何もしていないわけだし、思うところも特にない。


「のわりに、話してただろ?」
「…そういう状況だったんだから仕方ないでしょ」
「へえー」

クロは絶対信じていない。というより、人見知りの俺が誰かと直ぐに喋っていることが珍しいから何かあると思っているのだろう。

「本当、何もないから」
「でも孤爪、普通に喋れてるよね」
「あーほら!喋れてんじゃん。研磨にしてはスゲーな。…いや、マネちゃんがすごいのか」
「…赤葦」
「事実だろ」


爆弾とまではいかないけれど、クロにとっては美味しい情報を提供してしまった隣の赤葦は、特に悪気もない顔で食事をとっている。
俺もさっき赤葦が質問攻めの時に助け舟なんかを出さなかったからだろうか。同じく質問攻めをくらえということだろうか。こうなるとクロ、面倒くさいんだけど。


「やー どんな展開になるのか楽しみだなー」
「三角関係?なあ、三角関係か!?」
「はあ…」
「…はあ…」

目の前で勝手に盛り上がるのはやめてほしい。そう思っているのか、隣の赤葦もため息をついて目の前の二人を見ていた。
先程赤葦がいったような、「話しやすい」とは思っていない。けれど何故か、話しかけられたら話せているのは不思議だった。彼女と赤葦が喋っている会話を傍観している立場だと少し楽しいかもしれない、と思うだけで。

クロの望むような展開にはならないだろうなって思う。核心はないけど、たぶん、そんな関係、俺は望まない。


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16.03.07.
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