甘い罠
※瀬見英太が相手ですが付き合ってない、純愛ではないので注意。
何でも平気な方向け。
「あ、うっ…そこ、もっと…!」
可愛い顔して誘ってきたかと思えば、もうそこはどろどろに絡みついて俺を離さない。とんだ女に捕まったな、と思った。
別に付き合ってる訳じゃない。そもそも友人という訳でもない。好みの顔してるなってなんとなく見ていたら、あっちから近づいてきただけ。結果は人違いだったわけだけどそれを利用してみた流れの末が今だ。
「んっ、ん、ぅ、ゆっくり、だね」
「早漏だったのか?」
「違う!ペースっていうか…その、…っ動き、が」
なんでも別れた彼氏に俺がよく似ているらしい。別れた理由とかは知らねえけど、その元彼を忘れられなくてって時に俺が現れて思わず声を掛けてしまった、というところが出会いだ。
なんとなく俺も好みだったからそのまま流れてセックスをしている。どんな流れでここまで来たかとか、正直よく覚えていない。とりあえず好みの顔の女子とセックスして気持ちよくなってる事実がここにあるだけで今はどうでもよかった。
「激しい方がいいか?」
「わか、ん…ない…、でもいつもより…はあっ、もどかしいの」
バックで俺に尻をつき出すような恰好をしている彼女は、俺を咥え込んだまま腰を揺らす。元彼としていた時は容赦なく突かれていたのだろう。付き合っているわけでもない女子のイイトコなんて知らねえし、俺の動きだとまだ満足できていないだろうことは簡単に予想ができた。
そりゃ俺だってAVみたいな激しいセックスしてみたい欲はある。けどそれにハマって抜け出せなくなったら嫌だから、あえて激しいセックスなんてする気はなかった。けれど相手がその気なら…
「誘いに乗らないほど、馬鹿じゃない」
彼女の腰をがっちりと掴み、自分の腰を思い切り打ちつける。突然のことに驚いた彼女は声を上げることも忘れ、奥へと突かれた快感で中を締めつけた。きゅう、としたそれに俺自身も声を上げずに快感を覚えた。しかしここで出しては恰好がつかないため、必死に射精しそうな自身を押さえつける。
はあ、と漸く息を吐いた彼女は力なくベッドへと倒れ込む。射精感を抑えた俺もふっと息を吐いた。そのまま力ない彼女の腰を掴んだまま、先ほどとは違って強めに腰を打ち付けていく。最初まではいかないものの、打ち付ける度に小さく喘ぎ声を洩らし始めた彼女に自分の口角が上がるのが分かった。
「栞ちゃん、こんな感じでどう?」
「はう、う、ぁ…ッん、ん」
「気持ちいい?」
「うっ…うん、気持ち、きもちいい…!」
シーツを必死に握る姿を見下ろしながら、腰を打ち付けるのはやめてやらない。うねうね動く中も必死に俺の精を搾り取ろうとしているのか、段々と限界を覚えてくる。やばいかもしれない、これ、ハマりそうかも。
ちゅ、ちゅ、と背中にキスをしていって、太もももたっぷり触って。流石にキスマークはしなくても背中にキスぐらいならセーフだろ?そうやって挿入しながら他のところも弄っていると彼女がおぼろげに呟いた。
「ああっ けいじ…!」
元彼の名前だと、すぐに分かった。一瞬戸惑った俺は腰の動きを止めた。けど自然と萎えることはなかった。逆に自分の中で何かが吹っ切れたように身体が熱くなっていくのが分かった。
再び腰を打ち付け、彼女がヨくなるように、激しいセックスにハマっていくのを承知で続けていった。奥へ奥へ、もっと奥へ、彼女の子宮まで目指して深く挿入をしていく。
「あっ、けいじ、んんっ!」
「俺の名前、ケイジじゃねーんだけど」
「奥だめ、きもち、っから、へんになっちゃうぅ」
「奥すきか?ふーん」
中の締め付けが次第に強くなっていく。彼女の欲するケイジくんではないけれど、彼女の膣が今欲しているのは俺自身だ。俺がちゃんと気持ちよくしてやるから、ほら、ケイジくんじゃなくて、俺が、な。
「や、だめだってばあ、けいじ、」
「……俺の名前呼んでみ。ほら、英太だよ、え、い、た」
動きを止め、後ろから抱きしめる形で彼女に体重をかける。ゆっくりと腕を回し、抱きしめた後、そっと彼女の唇に沿うように指を動かした。
お願いだからその唇で、早く俺の、名前を呼んで。
「え、えい、た…」
「っ…そーそー、よくできました」
思った以上に名前を呼ばれたことが嬉しかったらしい。再度お好みらしい奥へと突いてやれば彼女は直ぐにイった。その後の中の攣縮に耐え切れず、俺も程なくしてゴム越しに彼女の中へと射精する。
ゆっくりと彼女の中から抜き、ゴムを外してゴミ箱へ。未だ萎えない自身をどうするべきか悩んでいれば、彼女が俺の下でくるりと方向転換して見つめ合う体勢へと変化する。
手招きをされて身体を前へ倒していけば彼女の腕が伸びてくる。
「英太」
「…なに」
「ふふ、よく見ると京治とは違うね。京治はもっと目が、とろんてしてた」
彼女の小さな手が俺の顔を包み込む。そして指先は優しく流れて輪郭をなぞり、そのまま目尻へと滑っていく。
「髪もね、京治は真っ黒なの。でも癖っ毛なのは一緒だなあ」
目尻に沿った指先はそのまま俺の髪へ移動し、癖のある髪を絡めるようにして触れてきた。
愛おしそうに見つめる瞳は俺を映してなどいない。彼女が見ているのは俺ではなく、今、ここにいることのない“ケイジくん”だ。
そのことが面白くなかった俺はガッと彼女の顔の横に拳をぶつける。ベッドだったからぶつけた反動でベッドが揺れた。同時に、俺に触れていた彼女の瞳も揺れた。その瞳に映るのは目の前の俺だった。
「ケイジくんのこと、忘れられない?」
「……」
「俺とシてる間も、忘れらんない?」
答えない彼女を待たず、彼女の中心に身体を押し入って足を開かせる。そうして少し抵抗をした彼女を押さえつけながら、ゴムをしていない自身を無理矢理挿入した。
先程までぐずぐずに濡れていたそこは簡単に俺の侵入を許していく。中の温かさとうねりがダイレクトに伝わり、早くも射精感を覚えた。ぐっと堪えながら奥へと進んでいけば彼女も声を上げる。
「なあ、せめて今だけでも俺だけ見ててよ」
「ひ、ああっ!や、そんな、…ッ」
ゴム越しではない彼女の中。膣液が滑りを更に良くし、深く深く腰を進めていく。
先程とは違い、正常位で挿入しているため彼女の顔がとても見やすい。いやだと抵抗をしながらも表情が段々と好いものへと変わっていくのがすぐに分かった。
「ケイジくんじゃなくて、俺を見て」
「えいた、英太っ やだ、ああっ」
「栞、」
今、お前とセックスしているのは、ケイジくんじゃなくて俺だ。今、お前を気持ちよくしているのも、お前が気持ちよくしているのも、俺なんだ。
「んっ や、そこはいじったら、あッ ん、〜〜っ!」
「はは、イった?かァいいなー」
クリトリスを弄ってやれば簡単にイってしまった。肩で息をする彼女の呼吸が整うのなど待ちきれず、俺はがつがつと腰を動かして更に快楽を与えていく。
諦めがついたのか気持ちよさに負けたのか、彼女は俺に腕を伸ばしてきた。そのまま前傾姿勢を取ってやれば頭を抱きしめられる。近づいた胸にキスを落としながら、彼女の柔らかさと体温を味わった。
「は、あ…気持ち、い、英太…えーた…!」
「ん、俺も、きもちーよ」
身体を密着させれば汗ばんだ肌と肌がくっついていく。先程とは打って変わって、俺を離さないというように足を絡めてきた彼女。ああ、このまま溶けて混じりあって、離れなくなってしまえばいいのに、なんて。初めて会った女子にこんなことを思うだなんて。
「ああ、なあ、栞……」
激しいセックスにも、栞にも、抜け出せなくなってしまった。
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16.01.26.