海賊 | ナノ

美酒で乾杯



この話のヒロインはルーキーヒロインにあたる「エースの双子妹」夢主です。
ルーキーの船には乗らずにエースを追いかけて白ひげ海賊団に入った娘、という設定になっています。
重要な設定ではありませんが、それを匂わせる言い回しをしております。この設定に嫌悪を抱かれる方はバックすることをお勧めします。
ここを読まれてからの文句は受け付けません。

ちなみにマルコとヒロインは恋人関係にあります。
全然平気!まあ妥協してやる、文句は言わん、という方はお進み下さい。



















今日は朝から大盛り上がりだった。
ハルタとエースからは朝飯のお裾分けが、ビスタとナミュールからは本を、ラクヨウからは大量の酒の肴、ブレンハイムからは羽ペンとインク、サッチからは…封に包まれているのを開けていないからわからないが、きっとろくでもないものを貰った。
今夜は宴だ!と声を張り上げたオヤジにコック達は目を輝かせて今夜の食支度に入っていく。

色々なものをもらった。毎年のように貰うものもある。毎年少しずつ変えて貰うものもある。大抵は消費ものを貰うため、一年経てば再び必要になるものが多い。
例えとすると今朝貰ったハルタとエースのお裾分けがわかりやすいだろう。食べ物、しかも朝食であるために取っておこうにも取っておけず。その場で食べるしかないのだ。はたまた酒の肴や直前の島で有名な旨い保存食やらなんやら。本は読み終えればたまに読み返すくらいで本棚行き、ナイフや小型の武器でも使ってしまえば終わりはくる。こういったものが多いため、一年後には必ずなくなっているものが大半。
必要のないものを貰うこともしばしばあるが…。

大量のプレゼントを部屋に持ち込み、一段落したところ。軽快な扉を叩く音に疲れ混じりの返事をした。


「誰だよい」
「私です、ティナーです。忙しいですか?」
「あ、ああ、大丈夫だ。入れ」

また誰かクルーだろうとは予測していたが、まさかティナーであるとは思わなかった。恋人に対して気を抜いていたとはいえ余りに冷たい声を出していたと気付き、とっさに声のトーンを変える。
控えめに開けられた扉の向こうからは困った表情のティナー。腕に箱を抱えながら部屋に入り、扉を閉めた。

「いっぱい貰いましたね」
「ああ。流石に各隊と隊長、ナースなんかから貰うと…」
「それは…いっぱいにもなりますね」

山積みになったプレゼント達に目を向けて2人で微笑む。なんだかんだ他の隊の人間にもお節介で色々していると嫌でも好意を持たれるので、この結果である。

「ところでその手に持ってるのは?」
「プレゼントでーす」
「増えたな」
「増えちゃいました」


申し訳なさそうに微笑みながら手にしていた箱を渡す。綺麗にラッピングされており、赤いリボンは花を形作っていた。

「えっと、年代物じゃないんですが。美味しい、とお店の主人が言っていて」
「…そういや、今年はワインを誰にも貰わなかったなァ」
「そっそれは」

顔を赤くしたティナーがこぼすような小さな声で話し始める。自分がワインを贈ることを話すと、ビスタが全クルーに「今年のプレゼントでワインは禁止だ!」と言ったらしい。

「…なので、今年のワインのプレゼントは私だけです」
「なるほど」

被ることのないようにとの事らしいが、他のワインを贈ろうとしていたクルーには本当に申し訳なかった。
そういうティナーはその話をするだけで恥ずかしいのか顔をほんのりと赤くする。まるで酒が少し入ったような。


「じゃあさっそく、そのワインを開けるよい」
「えっ」
「なんだ。ダメなのか?」
「早いですね」
「美味い酒なんだろ。お前と一緒に呑めばもっと美味くなる」
「…もう!」


少しばかり欲情を移した手つきで頬を撫でれば簡単に恥じらう。それが可愛くて、愛しくて、自分のものだとわかる度にどうにかなってしまいそうだ。
まだまだ若いこの娘に心底惚れている自分を自覚する。…俺もそこまで歳ってわけでもないが。

ラッピングを取り、箱を開けてワインを取り出す。中から出てきたのは酒にうるさいイゾウですら美味いと評するメーカーのワインだった。それに驚きつつも、ティナーにワイングラスを部屋の棚から持ってくるように言いつけ、ワインを見て口元が緩く上がる。
高かったろうに。俺のプレゼントへの金でもっと他に色々と買いたいものもあったろうに、それを後回しにして買ったのだろう。自然にあがる口元は制御が効かない。


「あ、マルコさん」
「ん?」

ワイングラスを二つ持ち、駆け寄ってきたティナーは双子の兄・エースに引けを取らない程の明るい笑顔。

「誕生日おめでとうございます!」

そんな恋人の笑顔と自分が生まれ落ちた日への祝辞に、思わず小さな身体を抱きしめた。



「…ありがとよい」




美酒で乾杯
(この日を君と過ごせたことに感謝を)



「今夜は忙しいだろうなァ」
「宴でみんな大盛り上がりですからね」
「なら、ティナーは明日頂くとするよい」
「な、!」

――――――――
遅くなってすみませんマルコさん!
サッチは多分、コスプレ的なものをプレゼントしたかと。

2012.10.14.
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