海賊 | ナノ

受け付け嬢、脱走



今日は航海学園の学園祭。3日あるうちの2日目、一般に公開する日でもある。1日目は学生だけで、2日目と3日目の午前は一般公開。午後からは後夜祭というものだ。
各クラス、出し物を企画する。その中で目立っていたのは2−A。学園内でも目立つメンバーが少し集まるクラスだ。代表的に言えばエースにルッチ、カクとカリファにロビンである。少し濃いメンバーがいるからこそかも知れないが、2−Aはカフェを企画した。この五人がいれば確実に売り上げはトップを狙えると踏んだわけだ。

当日、予想は的中。5人をうまく時間で分け、客の足を絶やすことはなかった。


「やっぱりすごいね、5人の人気は」
「ふふ、これなら本当に売り上げトップを狙えそうね」
「間違いないわ、確実よ」

教室の中をみて三人で苦笑する。
大勢の(女性)客にひっぱられるエースとカク。ルッチはもう青筋ができているがこらえながら接客をしている。三人ともに燕尾服を着てキリッと執事をしていた。

「ロビンもカリファもメイド姿きれいだったよ!清楚なところが惹かれる!」
「ありがとう」
「ティナーも着ればよかったのに。残念」

ロビンとカリファはメイド姿で接客を。スカートはミニではなく長く足の露出がない清楚なメイドを演じた。その姿は多くの男のハートをつかみ、二人の番の時は男性客が多かった。

「あぁ…私は受付嬢だから」
「受付嬢でも着ちゃえばいいのよ!ほら、私の」
「いやいやいやいやカリファのなんか着たら胸ブカブカのお腹パツパツだから!」
「じゃあ私の着るかしら?」
「ロビンも同じ!」

二人といつもいるティナーは、今回は受付嬢へとまわった。さすがに二人に並んでメイドになるのは気が引けたからだ。それにバスケ部のマドンナもこのクラスにいることだし、メイドをする気もなかったから。

「じゃあ私、仕事に戻るね。二人ともお疲れさま、いってらっしゃい」
「受付嬢がんばって。何かあったらメールしてね」
「あとでジャブラに飲み物を持ってこさせるわ。じゃあね」

手を振って休憩時間の二人を見送った。これからの自分の仕事によし!っと気合いを入れてクラスの前にある受付嬢の席へと座った。


しばらくして少しだけ客足が弱まる。ふう、とため息をつくと、何かの影が自分に降り注いだ。
みあげればそこには、

「マルコ先輩!」
「よォ、やってるか?」
「大繁盛です!」

エースと仲が良いため、いつの間にかマルコ先輩やサッチ先輩に顔を覚えられ、可愛がってもらっている。そして、マルコ先輩は想い人でもあった。

「あ、エースですか?もう少しで休憩時間にはいると思いますよ」
「あぁ…エースじゃなくて、お前はどうなんだ?休憩時間はあんのかよい」
「わたし、ですか?いや…たぶん今日は終わるまで受付嬢だと思いますよ」
「明日はどうだよい?」
「明日は一般公開の後半です。マルコ先輩はどうなんですか?」
「俺ァ前半だ。ちなみに今日はもう担当はねェよい」
「羨ましいですー」

少し眉を下げて笑えば、お前担当多くねェか?とマルコ先輩の大きな手が私の頭をなでた。

「なんだったら、これから一緒にまわるか?」
「…えっ?! いや、嬉しいんですが、受付嬢が、」
「そんなもん、他の誰かがやればいいよい」
「いやいやそれは…」
「あーそこの!ちょっとティナー借りてくよい。受付嬢かわりにやっとけ!」
「え、や、はい?!」
「おら、走れ!」


近くにいた子に無理矢理押しつけると、マルコ先輩は私の腕を素早く掴んで立ち上がらせた。ガタリ、座っていたいすを倒し、マルコ先輩に腕を引っ張られて走り去る。
クラスの子からは「ちょっと、ティナー!」と言われたけど、私はごめんと手を挙げて、その場を去った。



受け付け嬢、脱走


「ちょっと俺につきあえよい」
「マルコ、先輩…っ」

(連れ出して、一緒にまわりたかっただけだけどよい)
(いいいいつの間にかてててて手ぇ繋いでる…!あついっ)


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お互い好きだけど言えてない先輩後輩。
タイトル→Mr.Princeさま

2010.12.06.
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