約束よ、
彼女が任務に赴く。俺には難なくこなせる任務だが、コイツがやるとなると危険度が上がる。
六式は使いこなせるが、女。そこが弱点である。カリファも同じ女であるが、コイツはスイッチが入らないと容易く命を奪う行為ができないからだ。
「任務の内容はわかっているのだろうな」
「わかってるわよ!もう、ルッチはなんでそんなにきくのよ。心配なの?」
「お前はどこか抜けてるからな」
「しっつれー!わたしはもう立派なCP9なんですからねっ」
見るからに怒っている顔。しかし、それにも愛しさを感じる。
この俺が女に溺れるとは…だれも思わないだろう。だが実際、俺は思った以上にコイツに執着しているようだ。
任務になど、行かせたくない。
「…どうしたの?」
「いや、……気をつけるんだぞ」
「だから!大丈夫よ」
もう、と俺を睨みつけるが、それは全然きかない。というより睨むといわないような瞳。
もっと覇気をだせ、といいたくなる。
「ルッチが心配してくれるなんて、」
「…ばかやろう」
「まだ何もいってないわよ!」
「……フン」
「…ねぇ?」
そう俺の方にのばされた彼女の手。幾人も、殺しを重ね、血で汚れた俺と同じ、殺し屋の、手。
その手が俺の頬を優しくなぜると、その手をつかんだ。
「ねえ」
「なんだ」
彼女の手がまだ俺の頬をなぜる。
「帰ってきたら、抱いて頂戴」
「ああ」
「汚れてきた身体を、きれいにして」
「…ああ」
「すべて、なにもかも忘れるくらいに、抱いて、めいぱい愛してくれる?」
「ああ、勿論だ」
そうして彼女はエニエス・ロビーをでていった。
しかし、彼女が笑顔でここに戻ってくることはなかった。
俺との約束を残したまま彼女は、還ったのだ。
約束よ、(彼女の言葉が頭に響く)
もっと愛を囁けばよかったのだろうか
もっと優しくしてやればよかったのだろうか
もっと側にいてやればよかったのだろうか
ああ、どうすれば彼女をなくさなかったのだろうか
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ルッチ悲恋はすてきだと思う。
2010.12.06.
加筆修正:2013.01.12.