海賊 | ナノ

もらってくれる?

*企画ページ、VD企画のキャスケット夢の続きにあたる、ホワイトデー夢です。



バレンタインから1ヶ月。
女の子からチョコレートを貰った男たちは、お返しには何かをする日である。
しかし、バレンタインに出来たこの船のカップルは――…


「ティナー。…お前、キャスケットにお返しはどうするんだ」
「ああ、心配しなくてもちゃんと渡しますよ」
「そうか…。そうじゃなきゃアイツが不憫だ」
「そりゃそうです」
「……ちょっとまて」
「「何(何だ)、ペンギン」」
「…ティナーとキャスケットは、ティナーがバレンタインにチョコをあげてくっついたんじゃないのか」


そう。ティナー(女)とキャスケット(男)はバレンタインにくっついたのだが、そのきっかけはキャスケットからのチョコレートだったそうだ。
本来、バレンタインは女からチョコレートを貰うという認識だが、このカップルは違うらしい。つまり、逆、なのである。

「ティナーが珍しく女らしいことをすると思ったが、違ったのか」
「実際はドライフルーツをあげたつもりだったんだけど」
「気付かずに飾り付けに使われちまったらしいぜ」
「まあお返しあげるからいいんだけどさ!」

キャスケットとティナーが両思いだったことを知っていた2人は、顔には出さないがこのことをよかったと思っている。まあ船内をイチャつかれるのは気にくわないが、可愛がる対象のティナーの思いが報われて喜ばしいのは確かなのだ。
ついでに言うとクルーたちもそのことを笑顔で受け入れてくれている。…が、一連のことはティナーからチョコをあげて、と思っているクルーが大半。ペンギンもその一人だ。

「で、何返すんだ?」
「それはとても気になるな」
「ひみつー」
「決まってないのか?相談くらい乗ってやるぞ」
「決まってますよ」
「じゃあ教えるくらいいいだろ?船長命令」
「うわ、職権乱用、サイテー」

うるせェ、と返すローに、ティナーはフフフと笑って立ち上がる。
いきなりの行動にローとペンギンは驚いたが、ティナーは仕方ないとヒントをだした。

「キャスケットにはバレンタインの時に言ってあるの」
「…なんだそれ、楽しみがねェ」
「承知の上、か」
「あとはね、ものを渡す、ってわけじゃない…かな」
「ものを渡さない?」
「………………」
「つきあって一ヶ月。…これが最後のヒントかなー」

未だ笑顔のティナーだが、真剣…とまでは行かないけれど、一応気になっている男二人は考えている。
しかし、わからない。

「なんだそれ。わかるかよ」
「…待て、ペンギン」
「? 何ですかキャプテン」
「コイツ等の進展具合を考えろ。恋人になってこの1ヶ月…そしてものは渡さない、が、渡すんだ」
「は?…え、っと、まさか」

2人はきっと感づいた。そして思っているとおりで、2人の答えは正解だろう。
ニヤリと笑い、ティナーはその場から少しずつ後ずさっていく。


「…そうだね、多分正解だよ。じゃ、私はキャスケットに全部をあげてくるから!」


おやすみー!
そういって駆け出したティナーに、2人は口をぽかんとあけたままだった。

「…俺、あいつらが男女逆だったらいいと切実に思いました」
「奇遇だな、俺も思った」




****


今キャスケットがシャワー浴びてるから、次に私を呼びにくるはず。それまで部屋で待ってないとちょっと機嫌を悪くしてしまう。
自分ではわかっていないようだけど、意外と嫉妬しているのが多いようだ。まあそれははっきり言って嬉しいのだけど。だってキャスケットがそれほど私を好きでいてくれるってことじゃない?

「おーい、シャワー空いたぞ」
「あ、うん行く!」

自室について下着やら服やらを出していると、キャスケットがドア越しに呼びかける。それに返事をし、言葉を続けた。

「シャワー浴びたら部屋いくねー」
「ばっ! そーゆーこと言うな!わかってっから!!」
「はーい」

きっと顔を真っ赤にして言ってるんだろうなあ…なんて想像しながらシャワーの支度をする。
一応、私より年上なのに初な反応を示す彼。可愛い。けど、格好いいとこも勿論あるんだ。それはキッチンで料理作ってる後ろ姿しかり、キャプテンの手術のお手伝いをしてる姿しかり。
シャワーを浴びている間も、この後はキャスケットと…そーゆーことするんだよなぁムニャムニャ。自分から言い出したことだけど、やっぱりその…なんかあれだよね。いろいろ想像してしまうよね。
キャー!
よし、もう考えない。恥ずかしいけど嬉しいという感情の方が遙かに大きいし、そういうようになりたいって思うのには違いないから。なるようになりやがれー!

シャワーのコックをひねり、お湯を止める。女になるんだ、と変な意気込みをしながらシャワー室を後にした。



緊張は一応している。キャスケットの部屋の扉を静かに叩いた。

「キャス、入ってい?」
「おー、いいぜ」

普段ならノックして直ぐに扉を開けていたけど、今回は違う。ちょっと違う私を見せようかな、なんて。

「なんだよお前、気持ち悪ィ」
「えへへ」
「ま、いいけどよ」

扉近くの本棚で料理の本を読んでいたのか、私が部屋に入ってすぐのところで話す。
夜もあってか、いつものサングラスをしていないキャスケット。いつものもいいけど素顔が見れるのが嬉しい。
そんなキャスケットの笑顔はサングラスを介していないのでとても眩しい。トレードマークの帽子も被っておらず、彼の表情は本当に追い打ち明るみにでている。年下の私ですら「無邪気で可愛い」と言わせるキャスケットの笑顔。私の心臓がキュンキュンなるのに変わりはない。
そんな私に関わらず、笑顔のまま目の前の彼は私の手を引き2人でベッドに腰かける。

「なーに、そんなにテンション高くして」
「へへっ」

歯ぐきが見える程に歯を出して笑うキャスケットにキュンキュンが止まらない私。
なんて可愛いの…!そのまま抱きしめたい衝動に駆られるも、そこはなんとか自分を抑える。

「ねぇ…キャス」

心を入れ替えて、出来るだけ色っぽく。
私じゃないと言われても、それが私に出来る素直な態度だから。


「キス、して」


首を少し傾げながらというオプションを付けたけれど…正直効果があるかはわからない。でもやるだけやってみる、やらないよりやった方が断然いい。
私の要求に一瞬固まるキャスケット。だけれどその表情はすぐに変わり、ニッと優しく笑えば、近づく顔。次にくる行為に目を瞑る。
軽くふれる、唇。触れるだけ。
そっと唇が離れれば2人してうっすらと目を開けて微笑む。それが合図と言うように、今度は深く絡み合う口付けを。

「ふ…んぅ…っ」

キスをしている時のキャスケットはいつもと違う。男の瞳をして色っぽくなるのだ。攻めることしか頭にないように私に追い打ちをかけてくる。ヘタレな印象を持つけれどそれはやっぱり違う。これが本気のキャスケット…かも。

「…っは、」

離された唇から漏れ出す熱い息。いつもならばここまでだけれど、今日は違う。何かを期待した瞳が私をとらえる。

「キャスケット…」
「、ああ」
「……私の全部を…もらって、くれる?」
「…もちろん」


頬に落とされる唇がくすぐったい。すぐそばにあるキャスケットの顔。すぐ隣にいる愛しい男。瞳と瞳が合えば微笑む。
そのまま2人で少し硬めのベッドへ倒れ込んだ。





―――――
ぬるーい続き

2011.03.21.
- ナノ -