海賊 | ナノ

大勉強会4




ウソップも教えてもらいにきたので片付けを手伝っていた。が、そんな時に再び来客を知らせるチャイムが鳴った。
サンジが客を迎え、連れてきたのは水色の髪の女の子。急いで来たらしく肩で息をしている。

「おそくなって、ごめんなさい」
「ビビ!よかったわ」
「おおっビビ!遅かったなー
「よかった、ビビが来なかったらゾロくん見る人がいなかったよ」

笑顔で対応するナミにルフィ。それに薙那までもが先ほどの会話の人物である“お嬢様”のビビと普通に話していた。
その様子にまたしても固まるキッドにロー、キャスケット。キラーは今回、特別に驚くことはなかったが。


「支度に手間取っちゃってて…あら、新しい仲間のひと?」

ビビの視線の先にはキッド、ロー、キラー、キャスケット、ペンギンがいる。新しい仲間、というからには知らない顔の5人だろう。
悪気もなく笑顔で聞いたビビに、機嫌の悪そうに答えたのはローだった。

「仲間じゃねぇ」
「えっ」
「ビビ…キッドにローよ」
「あ、えっ!? は、はじめまして。ネフェルタリ・ビビです」
「はいはいアンタたちもビビを怖がらせないで!」

とりあえず荷物置いて、ゾロのところに準備して、とビビに指示をするナミ。ビビが去った後には5人(主にキッドとロー)に睨みを利かせ、自身の準備に入っていった。
そんなナミにビビったらしいキャスケットは無言でローの服の裾をつかんだ。よほど怖かったらしく、ローからゲンコツを食らっても離さなかったとか。


「地理は他にキッドが出来るんだけど、アイツは現社に回っちゃうから。ビビ、よろしくね」
「うまく教えられるかはわからないけど」
「ゾロだから詰め込ませとけば大丈夫!」


こうしてウソップに加え、ビビも参加して午後の三コマ目をスタートさせた。






午後も順調に進み、ビビが帰ってからもう一コマ、それから残りのメンバーで夕飯をご馳走になる。食べてばかりではアレなので、全員で片付けを手伝ってから帰る準備をしていた。
使用したテーブルも、部屋も、掃除をして綺麗に片していく。


「はあ、よかった。無事に終わって」
「お疲れさま、ナミ」
「でもわからないとこ分かったし!美味い飯も食えたし!」
「ボニーはそればっかり」

後半は結構真面目に勉強をしていたボニー。最後のコマではロビンに現国をつきっきりで見てもらっていたらしく、次の試験も勉強を見てもらう約束を取り付けていた。
そんな女子たちの横でだらしなく疲れた様子を見せる男子たち。とくにルフィはくたくたの様子だ。

「もー俺、つかれたー」
「こんなに詰めて勉強したのなんか久々だった…」
「情けねぇがな」

だらだらと支度をしているが、すでに日が落ち遅い時刻。辺りは暗い。

「ほら、早く支度して帰るわよー」
「「おー…」」


男子たちのやる気のない声にナミは雷を落としそうになるが、もう既にそこまでする気力が残っていない。はあ、と諦めた様子で肩を落とした。
そんな様子をみていて、薙那はクスリと笑う。

「…なに笑ってんのよ」
「えっ べ、別にナミを見て笑ったんじゃないよ?」
「ふーん?じゃあなに?」
「ええ…うーん。なんか楽しかったなあって、思ったというか」

優しく微笑む薙那に、ナミは思った。
あんなに人見知りだった薙那が、まだ関わり初めて日が浅い奴らと一緒に勉強をしていた。最初は断るかな、とか心配だったけど…この反応は上々だ。
予想以上に早く薙那は奴らに気を許しだした。
まだまだ心配な部分はあるし、薙那がアイツらに恋なんてものをするかもしれない。それが何か気にくわないが、薙那が今、この状況で楽しいと、嬉しいと感じるならばそれでよかった。

今回の勉強会。ルフィなんかの勉強を見たり自分の試験勉強をするためがもちろん第一であるが、ナミの真の意図するところでは、薙那にキッドとローを慣らすことだった。
見ている限りでは同じ空間にいて苦痛ではないが、イマイチ何かが邪魔をしている。薙那は一歩退いて、直に触れることをしていなかった。
であるから、この勉強を通してもう一歩、近づけさせられないか。そう考えたのだ。


「そう思ったなら、薙那の古典のテストは楽しみだわ」
「ちょ、それとこれとは関係ないよ!」



薙那の様子を見る限り、ひとまず目的はクリアしたのかな、と感じるナミであった。

ゆっくり支度をしていたので意外と時間がかかってしまった。申し訳ないと思いながらも、サンジの自宅を出て全員で玄関に集まった。


「今日はありがとね、サンジくん」
「遅くまでごめんね。お邪魔しました」
「ご飯も美味しかったわ」
「コック、飯ありがとな!」
「こちらこそありがとうと言わせてくれレディたちイィイ!」

テンションの上がるサンジをそのままに、男性陣が続けた。

「サンジ!いつもうまい飯ありがとう!」
「お前は普通に勉強しろ、ルフィ」
「コック、美味かった」
「はかどったぜ」
「おお。そう言われると、こっちも作った甲斐があったよ」


じゃあ帰りましょうかというナミに、何故かサンジまでもが外へでる格好をして、荷物まで持っているのに気付く。
そのままルフィの横につくので、どうしたものかと薙那が声をかける。

「サンジくん、どこか行くの?」
「ああ。今夜はゾロの家でルフィの勉強をみるんだ」
「俺、まだ英語見てもらってなくてよー。またゾロとサンジに勉強教えてもらうんだよ」
「それはそれは…頑張ってね」

うなだれるルフィに心の中でご愁傷様、と呟いた。誰かに監視しながらの勉強は今日でどれだけ神経を使うかが分かったため、出来るだけ自分で勉強をしようと思ったのは内緒だ。
今度は近くに見えたローとキッドの姿に何故か喋りかけなくてはという思いが生まれ、薙那はそのまま声をかけた。

「ローさん、キッドさん。化学と物理ありがとうございます」
「あ?ああ、分かったならよかった」
「物理は訳わかんねぇとこが結構あるからな。なんかあったらまた連絡しろよ」
「はい。ありがとうございます」


団体で駅の方面まで歩いて行き、夜も遅いことから女子は男子に家までか近くまで送ってもらうことになった。近くまでの場合は家族に迎えにきてもらうことを前提に。

中央街に住む薙那は南街寄りなのでボニーとキッド、キラーとともに、北街のローとペンギン、キャスケットは西街のロビンを途中まで送り届けることに。
ナミはサンジが家まで送り届け、ルフィはゾロと共にゾロ宅へ向かうこととなった。


「はい、じゃあこれで解散な訳だけど。くれぐれも今日の勉強会やったからって手を抜かないようにね!ボニーにルフィ、それに薙那!」
「はっはい!」
「まあそれなりにはやるけどよー」
「ウチ1人だと怠けるし…」
「つべこべ言わずに!ケーキバイキングが補習で行けなくなるわよ。そうなると部活もできないわねー」
「よしボニー、勉強やろうね!部活も早くやりたい!」
「おう、それでケーキバイキングだ!」
「まってろバイキングー!!」


わかりやすい反応をする3人に、本日何度目かの脱力感を味わうナミ。クスクスと笑うロビンは常に楽しげだ。

「アンタたちもよー。心配はしてないけど」

主にキッドとロー、それにキャスケットに向かって放たれた言葉はグサリと突き刺さる。

「…部活に支障がでねぇようにはする」
「キッドらしいわね」
「違いない」
「俺は普通に勉強するまでだな」
「ローはペンギンさんがついてるから特に心配はない、か」
「キャスケットもまとめて見ているから大丈夫だろう」
「…やっぱり俺も?」


それぞれの試験勉強に意気込みをいれたところで解散をする。
女性陣の帰りは心配ないが、唯一、ローは薙那と一緒に帰るキッドが気に食わず、帰る間際にキッドを睨みつけていた。
一方キッドはボニーがいて2人きりではないから安心したが、ボニーが相手だと薙那と分かれてからからかわれる対象になるので、それが心配でローの視線にもため息を吐きたい気分だ。キラーがいるから何とかなると思うが。


「じゃあまた学校で!」
「今日はありがとうね、また来週」
「ばいばーい」
「気を付けてなー!」
「じゃ、行こうか」


それぞれの帰路につき、こうして大人数の勉強会は終わりを告げたのである。




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勉強会おわりです、はい(笑)
長かったです…勉強会だけで一年使っていました>< 途中行き詰まってしまって申し訳なかったです!


12.04.01.
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