海賊 | ナノ

大勉強会3



2コマ目終了のアラームが鳴る。と同時にルフィのお腹も潔いほどに清々しく鳴った。それに釣られるかのようにボニーもお腹を鳴らす。

「は、はら減ったあ」
「コックまだかあ!」

机に突っ伏す2人。時計を見ればもう12時を過ぎている。

「ほらほら、突っ伏してないで勉強道具をちゃっちゃと片付けなさい!やらないとお昼抜きだからね!」

自分の数学のわからなかった部分が解決されてすっきりしたからか、ナミは明るい笑顔で勉強道具を片付け始めていた。同じくローも大人しく片付けていた。

「お疲れさま、ボニー」
「うー疲れたー」
「おらルフィ、早く片しちまえ。お前の飯食っちまうからな」
「やる!やるやる!だからキッドには渡さねえ!俺の飯!」

薙那とキッドがボニーとルフィをなだめて、片付けの催促をする。ぎゅるるるる、と鳴ったお腹のおとは、どちらのものか。


「おーい、飯だ!」

机の上が片された頃、丁度扉を開けて入ってきたのはサンジ。両手には湯気のたつものを携えて。

「飯!」
「食いもん!」

サンジの両手にあるものに目をきらきらさせはじめた2人にお構いなく、ナミが立ち上がった。

「手伝うわ。もう出来てるの?」
「ああ、すみませんナミさん。あとは仕上げて運ぶだけです」
「そ。じゃあサンジくんは仕上げして。ゾロ!アンタはあたしと一緒に運ぶの手伝って」
「…なんで俺」

文句をいうゾロだったが、ナミが睨みをきかせればしぶしぶ従っていた。
サンジくんが運んできたのはパスタ。綺麗に片づかれたテーブルにそれらが置かれ、サンジくんは再び姿を消す。


「…うまそう」

じゅるりと涎を垂らしそうになりながら湯気が立つパスタを見つめるボニーに、急いで規制を掛ける。

「ちょっ ボニー、皆揃ってからね?」
「わかってる…わかってるよ…」
「うあああナミー!ゾロー!早く飯いい!」
「ルフィも少しは我慢しろ!」

ボニーに続いてルフィまで待ちきれないらしく、2人してテーブルに顎を乗せて懸命にパスタの匂いを嗅いでいた。逆におなか空かないのかな、と思ったが言わないでおいた。

「どちらにしろまだフォークなんかが来てないから、食べれないわね」
「あ、じゃあ私が取ってこようかな」
「いえ、多分ナミのことだから持ってくると思うわ。待っていていいかもしれない」

ナミは普段、面倒だったりすると人任せなところがある。けれど恋人のサンジくんのおうちだし、ナミの方が分かり要領がいいのは確かで、自分が言っても仕方がないかもしれないと薙那は思った。立ち上がろうとはしたものの、ロビンの言葉に賛同し、再び座る体勢に戻る。
その後すぐに料理が運ばれてきたものの、その間にルフィとボニーのお腹の音は鳴り止むことはなかった。

そしてサンジの作った料理が手早くテーブルへと並べば…


「「「「いっただきまーす!」」」」



この美味しそうな匂いにお腹が減らないわけがない。皆、一斉に並んだ皿から取り分け食べ始める。

「おいしい!」
「やっぱサンジの飯が一番だな!」

どんどんなくなっていく料理たちに、サンジは自分の料理を口に運びながら微笑む。
ルフィを筆頭に、あのキッドやロー、ボニーまでもが美味そうに料理を食べている。その事実に零れる笑みは止まらない。

「キッドさん、とりましょうか?」
「あ、ああ。頼む」
「はい、どうぞ」


薙那ちゃん(この子)も、普通の子のくせしてこんな不良といわれる集団に溶け込んでいる。それも何事もなく、自然に。
今だって敬語ではあるが俺たちに対してはすっかり警戒を解いている。最近共にいるようになったキッドとローにはまだ少し壁があるが、最初よりはこうやってコミュニケーションがとれているのだから進歩だろう。

本当、不思議な子だ。
普通の子であるにも関わらず、不良といわれる奴らが周りに集まる…というか構いたくなると言う方が正しいのかもしれない。
不良共の中には入れさせたくない、だが側に置いてみたい。守ってやるから。―――ルフィがいうならこんな感じか。ああ、いや、自覚はしていないがこういう態度をとるだろう。

それはルフィだけでなく、キッド、ローといった男までもを魅せる、不思議な女の子。


「あっ ボニー!お前俺の食ったな!」
「ちっ 気付きやがった」
「ならこれもーらい」
「ああああ!楽しみにとっといたやつ!」
「2人ともうるさい!」
「「ふひひゃへん」」


こんな騒がしく…でも賑やかな中に穏やかな笑顔で笑っていられるのは、ロビンちゃんと薙那ちゃんくらいだろう。

出来ればこんな子が、ルフィの隣に立っていてほしいと思う。支えてほしいと思う。
しっかり、アイツの行く末を共に背負い、導いてくれるのが彼女であってほしいと、俺は願うばかりだ。






丁度食事が終わり、次の準備を行う。
食事を片づけたサンジを待ち午後がようやく始まる。勉強の空気に慣れたのか、ルフィもボニーもおとなしく勉強へと移っていた。

午後一コマ目が終わり丁度よくインターホンが鳴る。訪ねてきたのはペンギン、キャスケットにキラーで、サンジに連れられて部屋に通された。
途中からこの勉強会に参加する、とキッドとローが話してきたのを思い出し、ナミはそのまま参加を促す。

「ケーキ買ってきたから、後で食べよう」

キラーの言葉に素早く反応したのはやはりというかルフィとボニーで、すでに涎を垂らしている。


「俺は三年だから、ロビンと共に助言役を引き受けよう。変わりにキャスケットの面倒も見てもらえないか」
「おねがいしまーす!」
「アンタが来てくれて助かるわ。年上の理系がいてくれなきゃねー」

文系はロビン、理系はペンギンと三年生を頼りにするような流れになったが、とりあえずナミの予定した通りに次のスペース移動をし始める。
そうしてキラー、キャスケットを入れ、ペンギンを助言役として大いに役立てながらの午後二コマ目を始めたのである。






二コマ目も無事終了後、ペンギン達の持ってきたケーキを休憩がてらに食べているときに再び来客を知らせるチャイムが鳴った。今回は誰であるか心当たりがあるらしく、ナミは「やっと来た」と言葉をこぼす。
一行の前に姿を現したのはウソップで、大勢の部屋に驚きを隠さずオーバーなリアクションが返ってきた。

「おおおう!なんだルフィたちだけじゃねぇのか」
「まとめて一緒にやってんだよ」
「…それにしても最近、キッドとローが一緒にいるってのは本当だったんだな。こんなに仲良くなってるなんて」

ウソップの言葉にローとキッドが目を細める。キラーやペンギン、キャスケットは特に何もしなかったが。

「…悪ぃか」
「いやいや、むしろルフィが世話んなってるからよ。ありがてぇ!」
「そういや長っ鼻は姿見ねぇが、いつも何処にいるんだ?」
「俺は5組でクラスが違うからよ…」

ああ、そういえば隣のクラスで見る気がするな、とキッドが呟けば、キラーに違いないと返される。
そんな会話の横で、ローが小難しい顔をしていたのでゾロがどうしたのかと聞く。

「5組って言えばアレだろ、お嬢様が2人もいるっていう」
「ああ、あいつらか」
「カヤにビビだろー?カヤはウソップの彼女なんだぞっ」

ケーキを口に含みながら喋るルフィの言葉に固まるキッド、キラー、ローにキャスケット。ペンギンは下級生の恋愛事情には関心がないのか、その様子を黙ってみているだけのよう。

「…ルフィ、余計なこと言うな」
「えー いいじゃんかー」
「よくねぇよ!ったく…そーゆーことで、俺はカヤの現代社会の勉強用メモをいただいてきた。諸君、ありがたーく使いたまえ!」


じゃーん!と盛大な効果音を出しながらウソップが取り出したのは一冊のノート。カヤが作ったらしい試験勉強のヤマ用ということで、役立てば使ってほしいという。
カヤはこちらに来れないので、ウソップに届けてもらって現在に至る。
有り難い!とキラーが反応し、珍しく辺りに花を飛ばすような嬉しいオーラを見せた彼に、キッドは驚いている様子だった。

「よかったあ!カヤちゃんのノートがあれば現社は安心だよ、キラー」
「お前がいうのなら間違いないな」
「薙那ちゃんも現社苦手だっけ?」
「普通くらいかな。サンジくんは苦手なんだっけ」
「今の範囲が少し、な」

カヤのメモは好評らしく、薙那も安心していることから余程役に立つものなのだろう。
しかし自身の得意な現社に、なぜ俺に聞かないのかとキラーに苛立っているキッドがいた。キラー曰わく、「説明が下手すぎる」らしく教えられている側はうまく理解が出来ないという。

拗ねるキッドをそのままに、ひとまず次の勉強準備を進めようと、休憩用品の片付けに入った。




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まだ、続きます…。あと1つ!
後半ボニーちゃんが空気だったんですが、彼女はご飯の時だけ生き生きしている様子(笑)
毎回ほぼ空気のゾロで、すみませんorz

2012.03.30.
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