海賊 | ナノ

大勉強会2



やっとのことで始まった勉強会。
波乱がない、わけがない。



学校外で皆集まっているからか、勉強もあるがなんだか楽しくてウキウキが止まらない。そんな風を醸し出しているのはルフィ。

「はい、じゃあ古典なんだけど…どこがわからない?」
「俺ぜんぶー」
「私、何となくでやってる。現代語訳とか自分で話作っちゃうの」
「文法がわからないのね」
「そうだと思う」
「ルフィは全部わからないなら、まず薙那と一緒に最初の文法からやりましょう」
「「はーい」」


意外と丁寧に教えてくれそうなナミ。…まあ、後でお金を要求される気もしないでもないけれど。学校で配られてある古典の問題集と睨み合うルフィと薙那。説明と問題とが見開きになっていて、初歩にはいい問題集なのだが。

「…ナミ、わからない」
「はあ?早いわよ」
「って言うかサ行へんかく?とかよくわかんない」
「…そこは覚えなきゃいけない部分よ」

まさか薙那が古典文法をできないとは。
これはさすがにナミも予想外だったようで、絶対一時間半でなんか終わらないと先が思いやられた。

「活用はなにがわからない?」
「……ん…」
「え?」
「ぜ、ぜんぶ…?」
「………全く…?」
「ご、ごめ、」
「せ、せ、す、する、すれ、せよ!」
「「! ルフィ!」」
「これ、サ行変格?」
「ルフィのができてるなんて…」
「……私、古典諦めようかな」


ルフィの出来に、薙那のできなさに頭を抱えたナミの姿が目撃されたらしい。

その後、ロビンの歴史はなんとか大人しく勉強していたものの、サンジの英語ではキッドがダウンしていた。

「…わかるかよ」
「わかるようにすんだよ」
「俺ぜってー外国いかねぇわ」
「おう。そうしろ」

変わらず古典組も、なかなか出来ずにナミが懸命に教えている。

「うう、わかんないよー」
「ここ、ココだけでも覚えて、薙那!」
「がんばれ、薙那!」
「む、むり…」
「お願い薙那…この活用表だけでも…」

とんでもない2人を引き受けてしまったと本気で思ったナミだった。
そんなこんなしているうちに時間の一時間半が経ち、携帯のアラームが鳴る。


「ナミ、時間だけれど」

ロビンがナミへ話しかければ、下を向きながら涙を流している姿が。薙那は机に突っ伏し、ルフィはシャーペンを鼻の下に乗せて遊んでいた。

「そんなに酷かったの、薙那の古典」
「酷いなんてもんじゃないわ…わたしもう古典教えない」

近くだったので各スペースでの会話は一応誰もが聞いている。薙那の古典が酷そうなのは会話でわかったのだが、ナミをここまで絶望させたとなると相当な強者らしい。ここは笑うところ。

「だってあの子、この時間で活用表が覚えられないんだもん…活用表しかやってないのに…!」

うう、と泣き出したナミにロビンがそっと肩に手を置く。

「おつかれさま。ナミも薙那も」
「「ロビン…!」」
「古典は次から私がみるから、とりあえず次にいきましょう」

沈んだままのナミが予定している次の勉強枠へ誘導する気力がないため、あらかじめメモしておいた編成をロビンへと渡した。
ロビンがナミから受け取った編成通り、皆が次の場所へ移動する。実は先ほど一人で勉強していたボニーも今回は教えられる側に加わった。

「じゃあ俺は一旦抜けるぜ」

よっと立ち上がったのはサンジ。

「えーサンジ、どこ行くんだよー」
「ばーか。昼飯作りに行くんだよ。どっかの誰かが大量に食うから多めにな」
「お、マジ?!コックの料理ちょー楽しみ!」
「ボニー、お前食い過ぎんなよ、俺のがなくなるからな!」
「あん?ウチだってうまいモンは好きなだけ食いたいんだよ!」

ぐぎぎぎ、とルフィとボニーが睨み合う中、ナミは呆れたようにため息を吐く。

「なんで食い意地ばっかり…」

そんなナミの心配を余所に、2人は未だ睨み合ったまま。サンジはその様子を少し微笑んで見守る。

「じゃあ作ってくるからお前らしっかりやれよ。特にルフィ、お前な!」
「サンジの飯くえるならやる!」
「よし!それじゃあナミすわん、まっかせましたああ!」
「りょーかい。昼食は任せたわよ」
「サンジくんのご飯楽しみにしてるね!」
「うまいもん作ってくれよ!」
「女性陣の期待に応えるのはもっちろんでーす!男サンジ、昼食作りに行って参ります!」
「あーはいはい。わかったから早く行って」
「辛辣なナミさんも素敵だあああ」

女性陣からの期待の声に、サンジは目をハートにさせくるくる回りながら下へ降りていった。
ナミがため息を吐きながらも、次の勉強時間へ切り替える。

「ちょっと時間をロスしちゃったから、短縮して70分でやりましょ。サンジくんのご飯、できたてで食べたいでしょう?」
「「「食い(食べ)たい!」」」
「ふふ」

ナミとロビン以外の6人が声を合わせて言う姿に、思わずロビンが微笑む。

「正直ね、アンタたち」
「コックの飯がうまいなら仕方ねぇ」
「サンジの飯はうまいぞ、ロー!」
「美味しいうちに食べたいもんね」
「はあ…まあいいけど。スペースには分かれてるわね。じゃあ開始!」

ため息混じりではあるがナミもサンジの昼食は楽しみなようで、早めに終わらせて昼食準備をしたいらしい。これでもサンジの恋人であるから、負担を減らしたいのだ。
そんなナミは今回、教えられる側。時間短縮されたことは内心ラッキーだと思っている。
教える側は、数学がロー、生物が薙那、物理がゾロとキッド。教えられる側は数学がナミ、生物がボニー、物理がルフィ。空きがロビン。
ナミはローに教えられるということに、少し挫折しそうになったとか。

数学担当のローは意外と丁寧に教え、最初は難しい顔をしていたナミも段々とポイントを押さえてきたようだ。


「これは?」
「ここが直角。このままの図形じゃ解けないからこう動かす。だから?」
「あっ ここがsinか」
「そう」
「じゃあこれもsinで、こことここ使って出せる?」
「ああ。基本はそれだ」

ローにとっても意外で、ナミは文句ばっかりで騒ぐと思っていたが、普通に取り組んでいく姿に素直に応えた。つっかえていたところを正しく教えればすぐ飲み込んでいくので、ローも自分用の問題集に手を着けている。
騒がしさもなく冷静に向き合っていく2人にいざこざは見られない。あとは2人、静かに問題へ向かっていた。

生物の薙那は少し苦戦気味。ボニーはしっかり取り組んでいるのだが、深く細かく考えるのが苦手なため、直ぐに諦めてしまうためだ。


「だからね、抑制遺伝子のカイコガのまゆの色だと、黄色を現す遺伝子Yは遺伝子Iがあると抑制されて黄色が出せないの」
「でもYは優性だろ?」
「ここでは優性の法則は使えないの。普通の遺伝と違って、最初の掛け合わせたやつの次の代は、9:3:3:1にならないんだって」
「だって9:3:3:1ってでてんじゃん」
「9とこっちの3と1は白色でしょう?」
「…は?iiyyってIがないから黄色じゃねーの?」
「iもyも黄色を現しません…」
「あ…」
「はい、もう一回綺麗に図を書いてゆっくり考えよう」

生物は遺伝の部分に入っているらしく、ややこしく考えるものが多いため、薙那も細かく説明するのが大変である。それを理解するのに頭をフル回転するボニーも、薙那の手を煩わせないように必死だ。
そんなボニーの姿に苦笑しながらも、わかりやすく教えるのに必死な薙那だった。

そして物理のゾロとキッドは―――


「だあああっから、これは右に力が働いてるんだっつの!」
「えええー?」
「キッド、そんなに熱くなると後々体力もたなくなるぞ。ルフィ相手に止めておけ」
「そういうゾロ、テメェはもっと真剣に教えろ」
「ルフィ、お前の物理の知識をキッドに教えてやれ」
「慣性の法則、等速直線運動!」
「…他は」
「のみ!」
「……俺、降りたい」
「ま、ヤマだけ教えりゃ何とかなる」
「お前はもっとルフィに危機感を与えてやれよ」

結局、物理知識の乏しいルフィにはポイント部分や試験のヤマなどを詰め込ませるのに必死になった。それは主にキッドで、変に真面目な面がルフィを放っておけなかったらしい。
必死に教えるキッドを見てルフィも何か感じたのか、意外と真剣に聞いていた。それが頭に入るのに比例するわけではないが。


―――それから個々のスペースで質問やなんやらを話す声が部屋を彩りながら、刻々と時間が過ぎていった。
離れて自身の歴史を勉強しているロビンはそんな姿を見つめ、幸せそうに笑いながら手元のテキストへ視線を戻す。


お昼はあと少し、かしらね。
そんなことを思いながら。



―――――――――
本格的にお勉強していくわけですが、何分私が苦手なものは細かくかけません(笑)
特に古典は苦手なので、間違っていたら教えてください←

12.01.14.
- ナノ -