海賊 | ナノ

月色リーベ




一人、月を見ていた。

下ではサンジくんの美味しい食事でいつもの騒ぎが起きている。ほらまた、ルフィがサンジくんに食べ過ぎだって怒られてる声。
相変わらずだなあ、なんて思いながらずり落ちるカーディガンを肩にかけ直した。
サンジくんが持たせてくれたちょっとした夕飯。内緒な、とつけてくれたフルーツ。それを口に運び、夜空に浮かんだ月を見上げた。

風が髪を揺らす。まだ残っているフルーツに手を伸ばすが、すぐに引っ込めた。食べれないなあ。でも大丈夫、もうすぐ来る頃だ。


「お、やーっぱここかぁ」

ひょい、と顔を出したのはルフィ。食事の開始時に私がいないことを不機嫌に受容したことに気付いていた。だから夕飯に満足したらくるだろうと予測していた。毎回こうだから分かるのだけど。

「夕飯は美味しかった?」
「おお!サンジの飯は全部うめぇ」
「それはそれは」

軽々と身体を浮かせて上に上がってくる。身軽な船長はご飯をいっぱい食べた後でも元気。
隣に歩み寄り腰を置いた。脚を伸ばして、全身で風を受ける。私は寒いから風に当たらないようになるだけ縮んで座っているけど。

「フルーツ!」
「食べる?」
「いいのか?!」
「どうぞ。私、もうお腹いっぱいだから」
「よっしゃー!」

個に切られたフルーツを美味しそうに食べるルフィ。今夕飯をお腹いっぱい食べたばかりなのに、よく食べれるなあ。
本当美味しそうに食べる。ルフィの笑顔にこちらまで笑みがこぼれてしまう。


「月、すげーな」
「もうすぐ満月なの」
「へー」

最後のフルーツを口に含み、私たちの上に浮かぶ月を見た。満月よりかは少し欠けた、未完成の月。あと4日5日で満月へと姿を変えるだろう。
意識が月へと注がれる私をルフィがぐっと肩を抱いて寄せる。二人の間にあった空間はなくなり、触れた温もりが肌を撫でる冷たい風を感じさせない。いや、風の冷たさを軽々と上回るように、抱き寄せられたことによって体温が急上昇。まさかのルフィの行動に固まってしまう。


「ティナー」


ゆっくりと呼ばれた方へ向けば思ったより近くにあるルフィの顔。そのまま近づき、触れる唇。
抱き寄せられただけでなくキスまでされて、私はさっきから固まりっぱなし。離れていく唇…私は目を開きっぱなしで、それに気付いたルフィはニシシと笑う。気付かれた恥ずかしさに顔が熱を持つのがわかる。

「…なんか、きれいだった」
「なっ」
「月のせいか?すっげーきれいだ」
「…ありがとう」


無自覚だろう、だからこそ憎めない。ルフィの素直な感想はそのまま頂いておく。頂いておくが恥ずかしいため、それを隠すようにルフィの肩に頭を置く。
出来れば今の赤い顔を見られませんように。
そんな願いが届いたのか、ルフィは変に詮索せずに私が寄りかかるのを許した。

私は甘えて体重をかける。二人しばらく月を見上げていた。





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リーベ=恋人。
船長といちゃいちゃが新鮮すぎる。

02.04.
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