居ても居なくても、居ても。

・即.興.小.説.ト.レ.ー.ニ.ン.グ ログ03。
・サイケ+デリック×日々也。


へくしゅん!
……クシャミというのは、あまり好きになれない。クシャミをするとどうしても可笑しな顔になってしまうし、みっともない。まして、その姿を誰かに見られた日には……ああ、考えたくない。
お母様のお計らいによって、自室は万全の空調に整えられている。駄馬が同じ空気を吸っていることだけが不満であり、それ以外に文句など付けることができないくらいには快適だ。そんな中でずっと過ごしているからであろうか、自宅から一歩外に出ると、どんな季節でも肌寒く感じてしまう。
薄着なのだろうか。生地の厚い冬用のマントを羽織っているのに、それでも薄着だというのだろうか。
でも、僕は服を一人で着たことがない。いつも着替えは執雄が手伝ってくれる。まして今のような外出中でもあれば、何か用意できるわけでもない。
ああ、寒いな。ほう、と吐き出した息が白い。腰に隙間風を感じるし、何故だろう。体を縮めるため、マントを羽織りなおす。

「わっ!さむいよ、ひびやくん!」
「お姉様?」

なんということだろうか。寒さの正体は人一人分の隙間だった。サイケお姉様が僕の背と、マントの間に挟まっていた。というか、潜り込んでいた。

「ひびやくんひどい!ひびやくんせっかくぽかぽかなのに、まんとぶんぶんするとさいけさむくなっちゃう!」
「それはごめんなさい」

潜り込んでいるなんてとても恥かしい。しかしそんな言い方をされると怒る気も失せてしまう。
お姉様は誰かに抱きつくクセをお持ちだ。大概は津軽お兄様のことが多いが、お母様、お父様にもよく近付かれる。その姿は宛ら、コアラのようだ。今回の場合は僕の背とマントの間であるから、モグラだろうか。
お姉様自身はいつもとても暖かそうな白いコートを着ておられる。僕もあのようなコートを着れば暖かくなれるのだろうか。しかし、この格好ではコートは少々似合わないような……。
それにしても寒いな。お姉様はさっと僕から離れて津軽お兄様のところへ飛び付きに行ってしまったし、僕は手持ち無沙汰だ。

「おーい」
「遅かったではないか。戻って来い、とも言ってないがな。そのまま死んでくれば良かったのだ、駄馬め」

白スーツにド派手なピンクのヘッドホン。ちょっと買い物に行ってくる、と僕を待たせていた、見たくも無い下劣な駄馬が戻ってきた。帰ってこなくて良かったのに。寒さくらい、我慢できるから。

「待たせたな、寒いだろ。はい、カイロ」
「……?」
「おま……知らないの……?」

僕がマヌケみたいにいうな、阿呆が!そ、それくらい知っておるわ!駄馬!!
僕は寒くなんて無いぞ。貴様がいても、いなくてもな。いてもいいけど。


2013.01.20

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