これは、有名な伝説のバンド「クロス」のある真夏の夜のおはなし。


This song for you
真夏の夜のラブソング




八月十日。真夏の夜。
日は昇っていないのにもかかわらず汗が滝のように流れる時期に、エアコンもつけず、窓を開けずに演奏している人物がいた。
ここは、防音壁で作られている部屋なので夜に演奏していても迷惑にはならないので、その人物は力強くリズムよくドラムをたたいている。色々な曲調を追求し、音を感じながら弾いている。

その人物の容姿は、黄色の目に黒の髪。整った鼻梁と整った顔立ち。白い肌に白いシャツが汗でぴったり張り付いている。
ところが、悪環境にも動じずに、ずっとドラムスティックで叩く姿は凄く楽しそうだ。

「うわっ暑…。窓くらい開けようよ。サシス。」

「よっ、おかえり。リアース」

声の主のリアースを見ても、サシスの手は止まることなくドラムをたたき続けている。リアースは、苦笑し窓を開ける。ここは、大都会から少し離れた場所にあるレコーディング場だ。青緑の木が窓を開けると見える。青緑色の葉は、リアースの髪と目の色と同じだ。生温い風が髪を靡かせ、左耳だけつけている十字のピアスを触りながら、未だにドラムをたたいているサシスを見て苦笑した。

「そろそろ休憩しなよ。お前のことだから、朝からドラムたたいてるんだろ」

リアースは、ふと机を見ると朝に作ったおにぎりがラップにつつまれて置いてあった。
(こいつ…俺が朝から何も食べずにドラムたたいてたな)

「おー後でな」

こいつの「後で」は信用が出来ない。リアースは、サシスに近付きドラマスティックを持っている右手を持ち、演奏を止める。

「おいおい、俺の楽しみ止めるんじゃないぜ?リアース」

「お前の「後で」は信用出来ないからな」

リアースを見て、ふっとサシスは笑いドラムスティックを置いた時、

「サシス!リアース出来た!!」

藤色の髪を一つに靡かせ、甚平を着た男、ヒカリが部屋の中に入ってきた。ヒカリ。名は体を表すというがまさにその通りの男だ。低くもなく高くもなく美しい声。人間とは思えないほど、透き通るような白い肌は輝いてみえる。超絶美形と称してもいいほどだ。そんな、美形が息を切らしてこの部屋に入ってきた理由は一つ。

歌詞が出来たからだ。

「おー、やっと書けたかヒカリ、偉いぞー」

とサシスは、リアースの手をふりほどきヒカリの頭を撫で、歌詞を描いている紙を見て一言。

「没。なんも心に響かねぇ。ラブソング作れって言ったのにラブソングじゃねぇだろ、これ」

サシスは、紙を丸めてゴミ箱に捨てた。

「うにゃ!?捨てた!?捨てた!?酷い!俺が今日一日中考えて、にゃんこと遊びながら描いたっていうのに!!」
「サシス。いきなり捨てるなんて酷いだろ!…え?にゃんこと…?」
「…はぁ。リアース、ギターかしてみろ」
リアースはギターをサシスに渡す。サシスは、ギターを優しく丁寧に曲を流しヒカリが描いた曲を歌い始めた。

街明かりに誘われ
人混みをかけぬけていく
路上の片隅 街の星
細いアスファルトで 君は鳴いていた
僕は鳴いている君を拾った

通り過ぎる蜃気楼 真夏の夜
そこにある先は交差点
ここから先は通り抜けできません
黙って僕と君は逆戻り
白い毛並みの君はお腹がすいたのに
僕は君になにもあげれない

「僕は君にキャットフードをあげたいのににゃー…ってふざけんな!どこがラブソングだ!ヒカリ!」
「いやだなー。れっきとした猫へのラブソングだよ。題名もほら。「真夏の夜の片想い」」
「はぁ…人間に恋しろ。人間に」
サシスは、ヒカリの頭をくしゃっと撫でた。ヒカリは微笑む。
「俺には、まだ恋愛は早いよ。ラブソングはいつも通りサシスが描いて欲しいにゃー」
サシスは苦笑して、
「家に帰ってやり直し」
「残念。サシスだったらどんなラブソング作る?」
「俺がアドバイスしたら、俺の色に染まるだろ」
サシスは、ギターをリアースに返しタバコに火をつけ、床に座る。床は、冷んやりとしていた。
「んじゃあヒント欲しいー」
ヒカリは、床に寝転がり体をゴロゴロ寝転がる。まるで、子供みたいだ。そんなヒカリを見てサシスは苦笑する。

「ラブソングにヒントもくそもねぇだろ。俺が言えるのは…」
「歌って。いつも、お前が作ってくれる歌を俺は歌ってるから。今日は、前がお前の歌唄って」
「…お前が歌描いたらな」
「けちー。俺のために歌唄ってくれないのー?」
「お前が俺のために歌描いてくれたらな」

そんな2人のやりとりを見て苦笑するリアース。一週間後には、ライブがある。果たしてヒカリは、ラブソングを描けることが出来るんだろうか。リアースは、窓の夜空を見る。今夜は満月だ。明日には、いい曲が出来るといいな。そんなことを思いながらコーヒーを淹れるリアースだった。




あとがき
なんとなく書いたしょうもないお話。
初めてクロスの三人書きました。
とりあえず紹介もかねてサラッと書いたおはなしです。
2012.5.20筆



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -