『祝う日』

賈充は悩んでいた。カレンダーに丸で囲まれた日付をずっと見つめて
「(俺と名前が出会った日...)」
忘れないようにと名前が毎年丸印を付ける。誕生日の分からない賈充に「じゃあこの日が賈充の誕生日」と生まれ日をくれた。出会って四年。外出を嫌う賈充は今まで名前に何もしていない。10日、この日は必ずケーキや御馳走を振舞ってくれる。プレゼントも貰った。一年目は携帯、二年目はゲーム、三年目はピアス。賈充は名前に何も....
「................」
明日で記念日。何かしてあげたいと思うが金も無ければ外も出たくないときた。さてどうしようか。ちらっと視線をずらせば原稿が間に合わないと泣きべそ掻いている彼女
部屋の周りを改めて見渡してみると至ってシンプル。そして着飾らない女。耳に穴が開いているのにピアスは付けない。指輪も無い。服も少ない
視線を変え外に目を向ける。太陽が苦手。闇に居た事が多かった賈充にとって太陽は天敵のような存在
『やっと出来た...』
朝からずっとパソコン漬けだった名前は両腕を上にあげて伸びる
『明日届けに行けば終了!公閭ごめんね、おまたせ〜』
賈充は猫の姿のまま名前の膝に乗ると丸くなった。優しく撫でてくれる名前。目を閉じて何かを決意したようだ

次の日。昼すぎに原稿を持って出て行った名前は夜に帰ってくるらしい。御馳走作るからねとにこにこ笑って外へ出た。賈充は人間の姿に戻ると着替え始める。尻尾をシャツの中へ隠し黒のジャケットを羽織。猫耳を隠すように深く帽子を被った
名前のへそくりを奪い鍵を持つと外に出た
太陽の眩しさに舌打ちして携帯のナビを使って何やら検索している。歩いて数分後に着いたアクセサリーショップ。オルゴールの鳴る可愛らしい店内。ぐるぐるとさ迷っていると目に止まった黒と白が混ざったピアス。手に取るとじっと見つめレジを済ませた
次に向かったのは服屋。またもぐるぐると回っていると目に止まった青いワンピース。普段賈充のぶかぶかシャツしか着ていない名前がこの服を着たら...想像したらグッときたらしい。またも会計を済まし家に帰宅した

『ただいま〜』
帰宅した名前の両手にはスーパーで買ってきた食材とケーキ
『今から御馳走作るからっ!』
「...ああ」
『今日で四年か〜あっという間だね』
にこにこ笑いながらキッチンで作業を始めた名前の後姿を何度もちらみして手に持っている可愛くラッピングしたプレゼントをいつ渡そうか様子を伺う
「チッ...俺らしくもない」
ポイッと投げ捨てるように渡せばいい事だがそうしないのは名前が相手だからだ
『公閭って三つ葉食べられるっけ?』
「................」
『...公閭?』
エプロンを付けたままリビングに顔を出す。何時の間に着替えたのか賈充のシャツを着ている。何も言わず己のシャツを着てくれる名前。嬉しさが込みあがりプレゼントを差し出した
『...どうしたのこれ?』
「.....お前に買った」
『..........ええええ!?買った!?』
驚くのも当然。外出を嫌う賈充が外に出たのだから
「いらないのか...」
『いっいる!!』
慌てて受け取り中を開けるとピアスと青いワンピース
『かわいい...』
「....気に入ったか?」
『うん、すっごく...でも本当にどうしたの?』
「今日は記念日なのだろう」
『そっそうだけど...』
「...気まぐれだ」
そう言ってソファーに腰かけた賈充。名前は頬を赤らめると隣の部屋へ向かった。暫くして戻ってくると賈充は驚いた表情を浮かべる
『似合うかな....?』
とても青が似合う。耳に付けたピアスもとっても。賈充は口元を手で覆うと目を逸らした。似合いすぎて困るといったように
『...公閭』
「.....なんだ」
『似合う?』
ほんのり頬を赤らめると「ああ」と素っ気無く返した。名前は照れるように笑い賈充の膝に座るとちゅっと触れるだけの口づけを落とす
『ありがとう...すごく嬉しい』
何度目かになる舌打ちを零すと名前をソファーに押し倒した
「あまり煽るな」
『煽ってた?』
「...お前、わざとか」
『どうだろうね』
「この俺相手に挑発とはいい度胸だ...覚悟は出来ているのか?」
『.......うん...』
賈充の首に腕を回すとどちらからでもなく深く口づけた
『っ...ひあ、っん...』
「は...」
着ていた青いワンピースは結局脱がされてしまった。滲んだ視界で見えたのは余裕の無さそうな賈充の色っぽい姿。額から流れる汗がえろい
『んう...まって...っあ!』
「待てん」
腰を掴みグッと奥へ進めれば体を仰け反らせ達してしまう。余韻に浸る暇も与えず激しく動かせば賈充の髪をきゅっと掴み、強い快楽に耐える。必死について行こうとしてもすぐに波が押し寄せ達してしまった
「っは...ちゃんとついてこい」
『むり...っ』
「また達するか?」
『だってぇ...公閭激しいんだもん...ッ』
「チッ...お前という奴は...」
腕を引いて抱き起こすと膝の上に座らせた。重さでずずっと深く沈んでいくと名前はいやいやと首を振るが下から突き上げられビクッと体を震わせ達する
『こ、りょ...ッ、すきっ』
「っ...」
賈充が達する時。視界に入ったピアスに小さく微笑んで目を閉じた

『おめでとー!』
お風呂に入ってから記念パーティー。るんるん気分な名前の姿に賈充は頬を緩ませた
『はい。これどうぞ』
「...なんだこれは」
『サプライズ!!』
シンプルにラッピングされた袋を開ければネックレス。Kと彫られている
『公閭お誕生日おめでしょう。生まれてきてくれてありがとう』
にっこり笑った名前に腕を伸ばし隙間なく抱きしめた

【祝う日】
ありがとう、おめでとう

(そういえばお金どうしたの?)
(へそくりを使った)
(え......)

紅子様から一周年記念に頂きました!
私の好きな猫話を番外編で書いてくれました。
サプライズで書いてくれただけでも嬉しいのに、10日とKを話の内容に入れて下さるとは……!
本当にありがとうございました!
20130709

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