今回、呂布は義理の父・丁原の元に配下武将として身を置いていたが、その政策に不満を抱いていた。勢力を広げる動きも見せず、無関係の任務をこなすだけで武功もろくに上がらない。
この日、同じ配下の張遼に愚痴を溢していた。
「奴は一体何を考えているのだ。これでは昇進もできん」
「丁原殿には丁原殿のお考えがあるのでしょう。武功を上げたいのなら、クエストでも受けたらどうです?」
「もう散々受けたわ。仲間も三人まで増えたぞ。謀反を起こそうと思えばいつでもできる」
「…また物騒な事を。言っておきますが、謀反しても私は丁原殿に付きますからな」
「む…相変わらずクソ真面目な奴め」
「そう言えば最近、仲間にした武将に月英殿がいましたな。これまたどうして」
「…偶然、クエストの依頼人が月英しかいなかったのだ」
「しかし、三人仲間にしたのなら、それで確定ですぞ。てっきり私は貂蝉殿が在野になるまで待つのかと思いましたが」
「何!?そ…そうだったな(しまった、うっかりしていた…)」
「…忘れてたんですか。身分が武将だと解雇できないんですよ。そうなると、紅一点の月英殿と婚姻するしかありませんな」
(…またその話か。どいつもこいつも…)
「いや、ああいうタイプはどうも苦手でな。妙な発明してるし」
「月英殿は夫を立てる賢妻と言いますぞ。この状況を変えてくれるかも知れません。何より、婚姻は色々とお得ですからな」
「それはそうだが、そんな話を受けると思うか?だいたい、あいつは諸葛亮の…」
「友好が高ければ相手が誰であっても関係ありません。ここではそういう決まりです」
「むぅ…この際仕方がないないか…」
*
いつものようにクエスト戦闘を終えると、呂布は月英を呼び出した。
「私に何か御用でしょうか?」
「う、うむ…お前は頭もいいし、もしよければ俺に力を貸してくれんか。嫌ならいいのだか…」
「それは妻になれと言う事ですか?」
「…平たく言うとそうなる」
しばらく二人の間に沈黙が続いた。
(フン、さすがに今回は無理だろう。だいたい、俺とはタイプが違うのだ…)
「よろしいでしょう。私があなたを支えてみせます」
(ま、また…!?)
「ただし、私が妻となったからには、どのような手段を使ってでも丞相になっていただきます」
「う、うむ、昇進できるなら構わん。やってくれ」
「では覚悟なさって下さい。あなたなら私もやり甲斐があると言うものです(ニコリ)」
(……何か嫌な予感がするな…)
翌日、呂布は早朝から月英に叩き起こされた。
「いつまで寝ているのです!早速始めますよ」
「な、何だ一体!まだ日も昇っておらんではないか」
「最初に言ったはずですよ、丞相にするためならどんな手も使うと」
「…一体何をすると言うのだ?」
「はっきり申し上げますと、昇進できないのはあなたの頭が悪いせいです!武のみではいけません。まずは基礎知識から徹底的に叩き込みます」
「な、何だと!?おのれ、いくら妻にしたとは言え、そのような…」
「昇進したいと言ったのはあなたです。文句があるなら虎戦車と武装刀車を10台ずつ、一人で相手してもらいますよ」
「……」
*
月英の内助の功(?)によって呂布は順調に昇進し、ついに丞相に任命された。
「呂布殿、此度の昇進、誠に祝着…と言いたいところですが、あまり嬉しくなさそうですな」
「張遼か…実は婚姻してから毎日勉強続きなのだ。兵器を作れば丁度いいと俺を実験台にするしな…。俺はやはり貂蝉の方がいい」
「はは…そうでしたか。そう言えば最近、その貂蝉殿が仕官されたそうですぞ」
「何っ!?それは本当か!?」
「しかし、呂布殿はすでに月英殿と婚姻した訳ですし──」
「うおぉぉぉぉっ!ちょーせーーん!!」
「あぁ…やはり行ってしまいましたな。どうなっても知りませんぞ」
貂蝉の名を叫びながら宮廷内を走り回って数刻後。
「貂蝉!」
「ほ…奉先様!?」
「会いたかったぞ、貂蝉。やはり俺はお前でなければ駄目だ」
「しかし奉先様…今は別のお方と婚姻なさっているのでしょう?長いお付き合いのようですし、私が間に入る隙はもうございません…」
「な、何を言うのだ!俺にはお前しかいないのだぞ!このままでは、俺はあいつに殺され──はっ…」
「何をなさっているのですか?」
そこに運悪く、月英が現れた。
(う…一番まずいところに…)
「げ…月英様…!申し訳ございません、私はこれで…!」
「ちょ、貂蝉…っ!い、いや、これは別に何でもないのだ。き、気にするな」
「何を気にする事がございましょう。昔の誼ですもの、致し方ありません(ニコリ)」
(う…何だこの微笑みは…)
「それはそうと、この前あなたが欲しがっていた宝石一式を手に入れましたので、渡そうと思っていたのです。これがあれば武器に『一閃』の能力が付けられましょう」
「おぉ、それがあれば俺の武も極まるというものだ。さすが気が利くな」
「お誉めに預り光栄です。ではこちらに…」
そう言って連れて来られたのは陳留の一角にある倉庫。
「量が量ですので、こちらに保管してあります。他にも用意してありますので、ご自由にお使い下さい」
「そうか、俺は遠慮なく貰うぞ」
建物に踏み込むと途端に扉が閉まり、呂布は倉庫内に閉じ込められた。
「な、何っ!?」
「宝石はいくらでもお持ち帰り下さい。ただ最近、倉庫内に大量の人工兵器が入り込んでしまいまして、ついでに全部壊して下さい。ちなみに兵器は確認しただけでも虎戦車、投石車、武装刀車、独楽刃、虎砲が20台ずつありますので、お気を付けて(ニコリ)」
──数時間後、呂布の身を案じて様子を見に来た張遼によって救出された。
※あとがき
これ賢妻じゃなくて恐妻だった。
マルチレイドに登場する兵器は強すぎ…2でウザさ倍増。
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