『抗う者』

 ジョースターの血統というのは、実に厄介なものである。
 すでにジョナサン・ジョースターの生は尽き、この世に存在しているのは肉体のみ。それも我が一部となり、今ではただの傀儡に過ぎない。そんな状態にも関わらず、ジョナサンの肉体は己の子孫に警告を発している。私の意思とは無関係に──。

 「お前は生を失っても私に抗い、滅ぼそうとするのだな」

 DIOは首筋に残る生々しい繋ぎ目に手を添えると、徐々に星型の痣に向かって指を這わせた。
 この肉体がジョナサンのものである唯一の証拠──ただそれだけだと思っていた。
 しかし100年の年月が経っても、ジョナサンの炎の如き精神は未だこの肉体に宿っている。幾度となくどん底に叩き落としても這い上がる不屈の精神は、死しても尚生き続けている。肉体が未だに馴染まないのも、ジョナサンがそれを拒んでいるためなのか──。
 ジョースターの誇り高き血統は、その子孫に確実に受け継がれている。遥か遠い先祖からの因縁を絶つため、ジョースター一行がこの地に向かっている事が何よりの証拠だ。
 そう──彼等にとって『血統』とは単なる血の繋がりではなく、一族の『絆』なのである。

 ──だが、虚しいとは思わないか?

 いくら正義の言葉を掲げても、所詮は綺麗事でしかない。ジョナサンは己が葬り損なった因縁の始末を子孫に押し付けた上に、吸血鬼となった私と共に闇を生き、血を啜る『共犯者』なのだ。

 「お前も同罪なのだよ、ジョジョ」

 好きなだけ抗えばいい。ジョースターの血統も絆も、ここで終わらせてやろう。
 終焉を迎えた頃には、ようやく私のものになる。

 この世界も、我が友も──。



※あとがき
ディオよりDIOの方が数百倍冷血だよなぁ…と思って書いていたら、とんでもないドSになりました。
なんで最後は『共に生きよう』みたいな感じにしておいた。無理矢理…。
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