幼なじみの彼は、恋人です。
今日は彼のためにお菓子を焼きました。


「毎年すごいなぁ」


手間ひまかけてさっくりと焼き上げたアップルパイ。皿に置かれたそれをじいっと見つめて、レッドが呟いた。

毎年。そう俺は毎年同じ日に、レッドにアップルパイを作る。それは何の記念日というわけでも無いのだけれど、あえて言うならば「初めてレッドの為に料理をした記念日」とでも言おうか。

少年の頃の俺は、まだ無自覚であるもののやっぱりレッドのことが好きだったらしい。テレビに映し出された美味しそうなパイを見て「レッドにも食べさせてやりたい」と思った。
ろくに包丁も握れない様な幼い俺が、愛しい人を一心に想って慣れない手つきでりんご切って、生地を懸命に混ぜこんで…思い出せば、何だか恥ずかしい様な気がしてならなかった。


「どうだ、美味いか?」


さく、ぱくり。早速パイを口に放り込んだレッドに味の賛否を確かめれば「ふまい」。もごもごさせたまま笑顔とセットで返ってきた感想に、思わず頬が緩んだ。
ああ、これ。この笑顔が見たかったんだ。










幼なじみの彼は、恋人です。今日は俺のために、お菓子を焼いてくれました。

朝から漂う甘い香り。あ、そうか今日は「アップルパイの日」だ。


「毎年、すごいなあ」


年を経る毎にあきらかに上がるケーキの腕前。思わず感嘆の声をもらしてしまった。
食えよ。上手く出来たんだ。と渡されたフォークを受け取ってから軽い相づちだけ返して、早速いただく。
「どうだ、美味いか?」そう素っ気なく聞いてくるグリーン。本人は隠してるつもりみたいだけど、本当は内心どきどきしてることはお見通し。


「ふまい」


そう口に含んだまま返事してやればグリーンが少し照れ笑いを浮かべた。

…本当のことを言ってしまえば、実は甘い物が苦手だったりする。嫌いとまではいかないのだけれど。
でも未だ忘れはしない。まだ幼い俺に初めてグリーンが作ってくれたお、世辞にも美味しいとは言えない、あのパイの味。
やっぱり甘い物が苦手だった小さい頃の俺は、せっかくグリーンが作ってくれたそのアップルパイを完食出来なかった。
でもグリーンが一生懸命作ったのは幼いながら分かったから「食べたくない」なんて言えなくて、その時に使った言い訳が「もったいなくて食べられないよ」…今考えるとなんて無茶苦茶な。
そしたらグリーンは言ったんだ。「…いくらでも作ってやるから」
そしてその言葉の通りに、毎年毎年、律儀にも同じ日に、俺が喜んでると思い込んでパイを焼く。本当ならもう「甘いものはいらない」って言えたら良いんだけど。


「…すごく美味しい。来年も、楽しみにしてる」


嬉しそうな幼なじみの顔を見ていたら言えるはずなく。
苦手な甘い物も、一年に一度くらいは恋人のために食べても良いかな、なんて思えた。




(手間を惜しまずお菓子が焼ける)
(苦手な味でも笑顔が浮かぶ)

((結局俺らは、恋人の笑顔がみたいだけみたいだ))









モキ子>>折れた右足


グリレフェス開催おめでとうございます!素敵企画すぎます^^//参加させて頂けてすごく嬉しいです。そして企画が美味しすぎて動機が激しいです^p^
いたらない文ですが緑赤への愛を存分に詰め込みました。緑赤二人とも大好きっ!最強!\(^^)/





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -