「…馬鹿じゃねぇの」

ひゅうひゅうと雪が舞う。
随分久しぶりに会った気がする幼馴染みは、相変わらず口の悪いままだった。

「馬鹿じゃねぇのお前!こんなところで何してんだよ!」

以前みたときよりも、少し、大人びた顔立ち。彼の時間は確実に流れているのだ、 いつの間にか止まってしまった自分とは違って。まるで世界から切り離されたような場所にいる自分に、未だ他人を気にかける情があることに驚きを覚える。
もしかしたら、何だかんだでこの幼馴染みは特別なのかもしれない。

「…よく、こんなところまで来たね」

「…ッ、!」

信じられない、そんな感情を全面に顔で表しながら、上着を投げ付けてきた。いつかグリーンが着ていたものだ。
相変わらず、体格だけは敵わないままらしい。

「着ろ!!」

「…泣いてる?」

「泣いてねぇよ馬鹿、早く着ろ!」

こんなところで風邪なんか引いたらお前死ぬんだからな、なんて1人で話を進めていく様は全く以前と変わっておらず、そんな所に何故か安心感を覚えた。
いそいそと投げられた上着を着込むと、さらに懐かしいような、不思議な気持ちに包まれる。

「…これ届けるためだけに来たの?」

肩に乗っていたピカチュウがいじくっているのか、襟回りに付いているファーが首にあたってすぐったい。

「そーだよ、悪いかよ」

「…」

ぶっきらぼうに視線をそらされて、どこまでも分かりやすい幼馴染みに、ちょっとした意地悪。

「心配した?」

「…ッ!!」

するとグリーンはみるみるうちに顔を赤くして、ものすごい勢いで捲し立ててきた。

「…したに決まってんだろ!いつ会えんのかも分かんねぇのに、もしかしたら、もう会えないんじゃないかとか、」

「……」

「お前ばっかりどんどん強くなって、俺には手の届かないところに行っちゃって、」

あぁ。なんだ。

「どこにいるかと思ったらこんなところにいるって聞いて、もしお前に何かあったらどうしようって、」

どうして、勘違いなんかしてたんだろう。

「まだ一回も負かせてないのに、お前にいなくなられたら困るんだからな!!」


何一つ、あの頃と変わってるものなんて。




「…よかった」

「は?」

「いつか、一番最初にここに来るのはグリーンだって、思ってた」

「!」

「ずっと、待ってた」


さっきよりも雪がおさまり、目の前にはいつか見た時と変わらない、昔からの、ライバル。

「顔赤いよ?」

「ばっかお前、寒ぃからだよ」

今じゃなくてもいい、いつか、ここから自分を連れ出してくれる人がいるのなら、きっとそれは彼なのだと。

「久しぶりだし、バトルする?」

するとグリーンは、ニヤリと笑って、いつかの挑戦的な目でボールに手をかけた。






これからもずっと、
僕たちの距離は変わらないまま。



蘭子>>

グリレフェス開催おめでとうございます。いつまでも幼馴染みでライ
バルな2人が大好きです!!



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