隙あり
「だぁぁー!また負けたぜくっそー!!」
「……大丈夫?グリーン」
「大丈夫なわけねぇだろ。あーあ、どうしたら勝てんのかなー」
「……努力が足りないんだよ」
「失礼な奴だな。毎日トレーニングしてるさ」
チャンピオンを辞退してから、レッドはずっとシロガネ山で1人挑戦者を待ち続けている。だいたいは俺の方がレッドに会いに行くのだが、こうやってたまにレッドが俺のところに来てトレーニングを見に来る。最終的にバトルをするのだがチャンピオンを目指していた当時から俺はレッドに勝ったことがない。
「…そんなにこだわらなくてもいいんじゃない?」
「いーや、1回くらいは勝ちたいんだよ。レッドはそういうのねぇの?」
「ない」
「即答かよ」
確かに俺は全てに関してレッドに負けているわけじゃない。ジムリーダーになって仕事をこなし、勉強は沢山した。
だからその面ではレッドより長けている自信がある。でも、やはり1回くらいは勝ちたい。
「……まぁ、グリーンが強くならないと僕が強くなる意味がないからね」
「え?」
「……なんでもない」
「なんだよ」
「…なんでもないってば」
「気になるだろ」
あーもう。いつもレッドは俺より1枚上手だ。たまには俺からリードしたい。
「レッド」
「何、!んっ…」
そっぽを向いていたレッドが振り向いたところで口を俺のでぴったりと塞いでやる。いきなりのことでびっくりしたのか、俺の肩を必死に押してくる。
「んんっ…グリ、ン……やめっ!」
「ん…」
逃がすものかとレッドの後頭部を片手で押さえ、空いた手は腰に回す。舌を入れてやろうと思ったけど、後が怖いからやめた。
「ん!んー…」
「……」
名残惜しいが苦しそうだったからそっと離す。レッドは薄らと涙を浮かべてこちらを見つめた。
「可愛い」
「…っ!離してっ」
俺に背を向け歩こうとするレッドの腕を掴む。レッドはこちらを振り返り、涙目で睨み付けてくるがかまわず後ろから抱き締める。最初は暴れていたが、しばらくするとおとなしく腕の中に収まった。
「今日は結構素直じゃん」
「……煩い、だいたいグリーンが無理矢理…っ!!」
反論しようと振り向いたレッドにもう1度口付けた。今度はすぐに唇を離した。恥ずかしいのか顔を真っ赤にして、また睨み付けてくる。
「〜〜〜!」
「んな怒んなって」
怒ってない、と小さく呟くと俺の方に寄りかかってくる。
「怒ってんじゃんか」
そんなレッドの頭を軽くポンポンと撫でる。いつもなら手で振り払うか腕の中から抜け出そうとするのに、今回はなかった。おとなしくなったのをいいことに、少しだけ腕に込める力を強めた。
「っ……」
「レッド、俺…分かったぜ」
「……何を」
「お前の弱点」
「…………は?」
バトルの時は油断も隙もないレッドにも、弱点くらいはある。レッドはやはりこういうことには疎い。
「…何、弱点って」
「んー…不意討ち」
上目遣いを使ってきたレッドにドキッとして、不意討ちで本日3度目の口付け。引いていた熱が戻り、再び顔を赤くしたレッドを見て、ニヤリと笑う。
「な?」
「……グリーンなんか嫌い」
「わ、悪かったって!これも1つの愛情表現だろ?」
「……」
焦って解放してやるとそのまま歩いていってしまった。しかしそのレッドの顔が少しだけだが笑っていたのは気のせいじゃない。言ったところでまた嫌いだなんて言われては困る。
俺たちは恋人同士だ。でもそれ以前に幼なじみであり、ライバルである。やはり負けられないのが本心なのだ。
●●銀鏡あき>>イドラの竪琴
最強なレッドさんでも、きっと恋愛とかには疎いのではないか、という独断で書
きました。
そんな初々しいレッドさんが書けて楽しかったです!!
グリレ大好きです^^