これからはずっと





目の前で、見慣れた巨体が地に倒れ伏す。
手持ち最後の一匹が。

レッドの てもとには
たたかえる ポケモンが いない!

レッドは
めのまえが まっくらに なった!




目を覚ました時、はっきりしない意識の中で、どうやら俺は誰かに抱えられているらしいことが解った。

俺が目を覚ましたことに気付いたのだろう、その誰かは俺に向かってこう言った。

「まだ怠いんだろ。無理に起きんなよ、寝てろ」

顔は見えなかったが、その聞き覚えのある声に酷く安心して、俺は再び意識を手放した。



次に目を空けた時、俺はなんだか見覚えあるような部屋のベッドに寝かせられていた。

「お!やっと目ぇ覚ましたな!」

「…グリーン?」

聞こえてきた声に目をしばたかせてそちらを向けば、数年ぶりに顔を見る幼なじみが両手にマグカップを持って部屋に入ってくるとこだった。

「てか、タイミングピッタリじゃね?さすが俺!」

どうやら相変わらず自意識過剰の気があるらしい。
そうして自画自賛しながらも「飲むだろ?」とグリーンが差し出してきたカップを受け取ると、中にはミルクティーが入っていた。

一口飲む。
砂糖が多めに入った俺好みの味。

「ちゃんとお前の好みにあわせてやったんだから感謝しろよ!」

「…馬鹿じゃない?」

昔よく言っていたようにそう返せば、グリーンが返ってきたのは昔と同じ反論ではなくため息だった。
どうやら昔より少しは落ち着いたらしい。

「お前、そういうとこも本当変わんねぇんだな」

「そういうとこ『も』って…」

「まぁ、バトルに負ける度に倒れるとこととか」

更に『そういやあいつ、お前に攻撃が当たったんじゃないか、とかって慌ててたぜ?』なんて言われて、あらためて気付く。

「そっか。俺、あの子に負けたんだ」

「そういうこと」

言って、グリーンは自分の持つカップに口を付ける。
昔と好みが変わってないなら、中身は多分砂糖なしのミルクティーだ。

「…やけにあっさりしてるね」

グリーンのことだから、「俺以外の奴に負けてんじゃねぇ」とでも言うと思ったのに。

「…まぁ、あいつには俺も負けたからな」

それに、と続ける。

「お前、降りて来るんだろ?負けたんだから」

「………うん」

「だったら、それで許してやるよ」

グリーンが今まで見たことないような優しい笑顔でそう言うので、俺はなんだかドキッとしてしまって照れ隠しにカップの中の少し冷えてしまったミルクティーを飲み干した。



その笑顔を俺だけにくれるなら、これからはずっとお前の傍にいてやるよ。

…なんて、口に出しては言ってやらないのだけれど。





スコっち>>無制限

HGSSで主人公に負けた赤さんが、ゲームで全滅した時みたいに貧血で倒れるとかシチュエーション的に美味しいという妄想。
そこから更に、そうなることを予想した緑が駆け付けて自宅のベッドまで抱えて行ったりしたら萌えるなー、と思いながら今回この文を書きました。



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