「久しぶり、グリーン」

「お前って奴は、本当に急に現れるな」



 いつものようにジムの奥で篭って仕事を片付けているグリーンの前に突如ひょっこり現れた黒髪に赤目の青年――レッドと、その相棒の黄色いでんきねずみが一匹。突然の訪問に、グリーンは多少驚いたのか瞳を一瞬見開くが、すぐに細めては溜息を一つ零しながら口を開く。ほんの少しだけ厭味を含んだそれは呆気なくレッドが笑顔で頷いたことによって意味を持たなくなってしまった。空気を読めないとか敢えて空気を読まないというよりは、遠回し過ぎたグリーンの言葉にレッドは理解ができなかったのだろう。そのことをグリーンも分かってか、笑顔なレッドとは逆に苦い笑みを浮かべた。

しかし、追い返すことはせずに、顎で備え付けられている座椅子を差して座るように指示をする。レッドは何も考えずに、軽い礼を述べながら座れば相棒を手放した。手放された相棒は、自由になった身体を伸ばしては、疲れているのか、レッドの傍にて丸くなってしまった。その動作を愛しそうにレッドは見ては、不意にグリーンへと視線を向けた。視線を向けられたグリーンはグリーンで、レッドの状態を見て呆れていた。何故なら、今ではもうリラックスモードらしいレッドは身体をだらんと背もたれに預けている。こんな人間が俺よりも上で、強い人間なのだから色々と間違っていると、世の中の不平等を考えそうになりつつ、視線を向けてきたレッドに応えるように、小さく首を傾けた。しかし、レッドだけを構っている時間も余裕もないので、器用に仕事も進めようと、キーボードに手を滑らしていく。



「俺、邪魔だった?」

「別に。それに、今更だろ」

「ああ、そっか。そうだよな」



普段なら口にすることもない遠慮した言葉にグリーンは特に気にした様子もなく返せば、レッドもレッドでははっと笑って肯定をする。それに、グリーンも小さく頷いては、キーボードに文字を打ちながら、真っ白な紙に字を滑らせていく。その様子を見ては、眠ってしまった相棒により暇な状態になったレッドはつまらなそうに、“あー”とマヌケな声を上げては、ふわぁと欠伸を漏らした。今にも眠ってしまいそうなレッド。

仕事に集中しながらも、レッドの様子にいち早く気づいたグリーンは、やれやれと疲れた首を左右に傾けてコキコキ鳴らしては、手にしていた物を全てディスクに置いて、その場を立ち上がった。グリーンが立ち上がったのを横目で確認したレッドはグリーンの名前を呼びながら首を傾げた。その後に続くとしたら、“仕事は片付いたのか”、だろう。レッドはレッドで言わなくても伝わると思っていて、グリーンはしかと分かっているから無駄に口を開かないレッド。そんなレッドの対応に慣れてながらも呆れてしまうグリーンは、小さく息を漏らしながら、己が座っていた背に掛けていた黒のシンプルな掛け物を手にしてレッドの元に足を運び、それを投げるようにレッドへと渡した。ふわり、と綺麗にレッドの膝を覆うように落ちた掛け物へと一瞬視線を送ったレッドは目の前に居るグリーンを見上げる形で視線を向けた。



「なあ、グリーン。質問していい?」

「――…質問って何だ?」

「俺と恋人、どちらか一人しか助けられないとしたら、グリーンならどうする?




何かと思ったら、突如質問をしていいかの言葉。小さく上下に首を動かし承諾をすれば、レッドは嬉しそうにへにゃりと頬の筋肉を緩めて笑うと、意味もなく人差し指をピンッと立たせてくるりと宙を切るように回しながら、
言葉を口にした。その言葉に、グリーンは、はてと首に手を当てながら傾げてはレッドを凝視した。その視線がチクチクとしていて痛かったのか返答を急かすように、“どっち”と吐くレッド。ふぅと今日何度目かの溜息を吐いては、レッドと同じ目線になるようにしゃがみ込んだ。同じ目線に驚いたのかレッドは瞳をぱちくりと見開く。思わず、グリーンの口許から笑みが零れ落ちた。その笑みを不審に思ったのか、レッドは見開いた双眸を細めて睨みつけた。



「何、その顔」

「いや、別に何でもない」

「じゃあ、とっとと質問の答え!」

「ああ――勿論、お前に決まってるだろ」



怖くとも何ともないレッドの視線を華麗に交わしては、催促するレッドの言葉にグリーンはさらりと返答をした。思わなかった返答に細めていた赤い瞳をぱちりと開いては、レッドは口許をへの字にして有り得ないといった表情を浮かべた。その表情に、今度はグリーンがふて腐れるように一瞬瞳を細めた。レッドとは違い、迫力のあるそれに身体を強張らせては、視線を外しつつ、へらりと笑いながら軽い謝罪を口にする。レッドらしいといえば、らしい謝り方に苦い笑みを零すると、グリーンは閉じていた口を開き言葉を紡ぐ。“俺の話しを聞け”、と。あまりにも真剣な表情に、レッドはただこくりと頷くことしかできなかった。素直に頷くレッドを見て、ほんの少し優しく瞳を細めて笑んではグリーンは続けた。



「先ず、俺に恋人は居ない」

「もしもの話しだって」

「もしもとしても無理だな」

「何で?」

「俺はお前が好きだから」



グリーンの言葉に言葉を返すことが出来ない。言葉すら浮かばないぐらいに酷くレッドは驚いたのか、大きく瞳を見開き、赤が困惑の色を宿していた。いきなりの表情の変化に落ち着かせるように、グリーンは小さく笑いながら腕を伸ばしてレッドの頬へと優しく触れる。冷たくも熱くもない、程よい温もりに見開いていた瞳をキュッとつむり、整理しようと必死に脳を活発させる。グリーンに比べたら理解力に欠ける頭では、正しく理解できなく、ただグリーンの言葉がエンドレスにリピートされるだけ。今にもパンクしてしまいそうな頭を支えるように頭を抱えては、ゆっくりと双眸を開き、グリーンへと視線を向けた。視線を向けたグリーンは緑の色をした綺麗な瞳で優しくレッドを見つめているだけ。その表情にギュッと胸が締め付けられるような感覚に陥る。本当は、分かっているんだ。だけど、困惑して、上手く言えないから。だから、グリーンになら伝わると願って、目で訴えようとジッと凝視をした。



「いち早くに俺がレッドを助けてやるよ」

「グリーン、俺もね、」

「分かってる。愛してるよ、レッド」



にっこりと滅多に見せることがない満面の笑みに、安心して微笑み返すも、すぐにグリーンの言葉の意味で真っ赤に顔を赤らめるレッド。恥ずかしさのあまり、グリーンの手のひらから逃げるように、頭に乗せていた手をグリーンの手のひらに伸ばすとこで、レッドと名前を呼ばれた。何、とレッドが返事をする前にグリーンの方が先に動き唇が重なる。不意な行動にレッドが慌てれば、離れた瞬間にグリーンは酷く意地悪そうに口許を攣りあげた。その後は、グリーンに流される間々――。





出雲 青>>キリンに食べられた少年

この度は、拙い文に最後までお目通しして頂き誠に嬉しい限りです。有難うございました!

拙い文ではありますが、全力で緑赤の愛を織り込んだ次第です。スペのレッドさんは、無邪気で、素直になれないこともあって、あうあうしてたら可愛いです。無邪気に見えて、大人な考えを持つ、レッドさんも好きですが!スペのグリーンの場合は、クールで大人な感じ。自分の思考とかより、先にレッドを優先してたら美味しいです。少しレッドさんを小馬鹿にして楽しんだりとか可愛いです。でも、へたれなグリーンも病んでるグリーンも大好物です。寧、二人が良ければ全て良し思考で、これからも、お送りしていきたいと思います。
最後になりますが、読んで下さった読者様、素敵な企画を快く参加させて下さったキナカ様、同じ緑赤さん好き様!この度は本当に有難うございました。緑赤愛は不滅です!!






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