ぎゅう。ぎゅうぎゅうぎゅう。

 音が出るくらい抱きしめたのは、まだ温もりの残ったコート。

 微かに香る煙草の匂いの中に、嗅ぎ慣れた恋人の優しい薫りが混ざって、オレの肺の中へと流れ込む。

 しゃあ、とシャワーの音がした。自分の家じゃないのに、帰ってくるなり速攻でお風呂へと駆けこんだグリーン。

 別に、嫌じゃないんだそういう関係は。でもお風呂よりも先に、オレの事を気にかけて欲しかった。だって久しぶりの逢瀬。

「・・・ぬるくないか?」

 がら、と無言でお風呂のドアを開けたら、グリーンは丁度湯船につかっているところだった。

 お風呂は今朝わかしたから、お湯が冷めていそうだったから。

 オレを迎えに来てくれて、この寒い中1時間も2時間も外にいたんだ。お風呂に駆け込みたくなるのは当然かもしれない。でも。

 お湯の温度を気遣うふりして、本当は彼の顔が見たかっただけだなんて。

「ああ、丁度いい」

「あがったら、部屋で待ってる」

「?・・・ああ」

 少しだけ不機嫌なオレに気づいたのだろうか、グリーンは目を丸くして乱暴にドアを閉めるオレを見つめていた。

 違う。寂しかったとか、そんなんじゃない。ただ、そばにいてほしかっただけ。



***




「・・・レッド?」

 まだ火照る体に、冷たい空気はひんやりと心地いい。

 タオル片手に言われた通りレッドの部屋のドアを開けたら、エアコンもつけないで毛布にうずくまるレッドがいた。

「何してるんだ、風邪ひくぞ」

 ぼさ、と頭だろうと思われるところを手の平で撫でてやると、急にがばりと毛布が飛んでいった。オレの腹へからみついてくる冷たい腕。

「!?・・・れ、レッド・・・?」

「・・・寒い」

 ずるりとベッドから垂れさがる足を受け止めて、膝の上に座らせる。そして自分もベッドの上に座った。

 首元に触れてくる手は、子供体温のこいつにしては冷たく、ぶる、と震えた体は本当に寒そうで。

 小さくため息をつきながらゆっくりと腕を背中に伸ばしたら、安心したようにレッドは長い睫毛を伏せた。


「淋しかった」

「・・・出張だったんだ、しょうがないだろ」

「浮気、してないよな?」

「・・・何言ってる、当たり前だろ」


 ぎゅ、と言葉通り抱きしめる腕の力を強くする。

 ばーか、と小さく鼓膜を震わした囁きは、少しだけ甘さと照れを含んでいて、オレは小さく微笑んだ。



「お前こそ、・・・」

「? 何?」

「・・・いや、なんでもない」

 オレは出そうになったゴールド、という名前を慌ててのみ込んだ。

 嫉妬を口にするのは恥ずかしい。

 まあぎゅうぎゅうと顔を擦りつけて、あたかもオレの存在を確認するように抱きついてくるレッドを見れば、不安は消え失せるというものだ。

「・・・グリーン」

 エアコンのリモコンを手にした途端、レッドは小さくオレの名を呼んだ。



 
「グリーンが、あっためて」

「・・・・・・。・・・わかった」


 たっぷりの間は、オレが理性を保とうとした時間と受け取ってもらいたい。




***



 コートの匂いじゃ物足りなくて抱きついたグリーンそのものは、やっぱり懐かしくて愛しい。大好きな匂いがオレを安心させてくれる。

 風呂に入った癖にまだ冷たいその体に、ああ、そうか。気遣って早く上がってくれたのかなと一人想像して。

 いつだって優しいグリーンが、オレは大好きだ。

 オレの髪を梳く指がくすぐったい。こんなに寒いのに、グリーンと触れている個所だけはひどく熱を持っていた。

 もうとっくにあったかいのに、離れたくないよ。だって久しぶりだろ?

 好きだと耳もとで囁かれた低くてやわらかいあの声が、オレを惹きつけてやまない。

 オレだって好きだよ。





 
 その指先が呼んでる






(グリーンは淋しくなかったのか?)

(・・・決まってるだろ、)







祈>>それでも愛に抱擁を。

 緑赤万歳!
 恋人のような夫婦の様な、そんな二人が大好きです^^*
 レッドさんはグリーンさんにずっと甘えて居ればいいと思います!
 この後二人は・・・多分、一緒に寝ます。ええ、きっと。笑







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