此処はとても暖かい。
雨の多いこの土地の、雨晒しの場所で生活してきたボクにとって、久しぶりの暖かさだった。
(暖かいって、こんなにも心地の良いものだったんだ…)
何かに守られているという安心感が、ボクの睡眠をより深くさせる。
ちょっと待って。何かって、何に?
(可笑しいな、ボクはずっと独りぼっちなのに。)
(これまでも、今も、そしてこれからも…)
第四話。
レシラムの両翼に俺と一緒に抱きくるめられている少年の顔がぼやけて見えた。
吐息が聞こえる程密着している俺達は昨日、あの後俺が前に作っておいた木の秘密基地に泊まり込んでいたのを思い出した。
深夜から激しい雨が降った影響で一気に気温は下がり、とても寝れる状況では無かったのでレシラムを出し、基地内を暖め、三人で身を寄せ合うようにして寝たのだ。
身体を動かそうと全身に力を入れる。が、昨日のシャドーボールの当たりどころが悪かったのか、右手以外動かせない。
まぁ、しばらくは動かないでおこう。「…」
少年の頬をすりすりと撫でる。
絹のようにさらさらしていて綺麗なその肌と、長めの睫毛を見て、一瞬女の子かと思ってしまった。
(こんなに痩せた身体で、この子は生きているんだ…)
(差別を受けながらも、きっと懸命に。)
(それに比べて俺はなんて怠慢な生活をしていたことだろう。)
「…あ」
少年の目蓋がゆっくりと開く。
木の彼方此方から漏れ出す日の光で眩しそうに目を開いた。
「…ん」
眠そうで辛そうな少年はこちらを見据えて少しばかり微笑んだ。
「…助けてくれて、ありがとう」
声が少しかすれていた。
それはそうか、昨日の時点で悲鳴さえも声が出ていなかったのだから。
「気にするな。人間として当たり前のことをしたまでなんだから」
少年は再び笑った。
「…それでもボクは、嬉しかった」
君の名前は?と少年が聞いてきたのでブラック、と答え、俺もまた少年の名前を聞いた。
「ボクの名前は……………N」
その時から、俺とNはトモダチになった。