君を助ける為に動いた足は、
ポケモンの技を生身で受け止めなければいけない恐怖で一杯で、
鉛のように重かった。
第三話。
ドンッ!!と黒くて濃厚な影が俺の身体に勢いよくぶつかり、俺の身体は背後にあった少年の入っている檻にぶつかった。
背中に走る強烈な痛み。
ぐ、と堪える。
「…ッぺ!」
こみ上げてきた血反吐を芝生に吐き捨て、住人を睨みつけた。
住人は青ざめた顔をして口をパクパクさせた。
「ぼぼぼ!坊やっ!大丈夫かい!?
君、なんということをしたんだ!」
住人から差し伸べられた手を叩いて叫んだ。
「お前達だって、なんてことをしているんだ!」
受けた衝撃で上手く首が回らなかったが、背後の少年をちらりと見る。
身体をすぼめて震えていた。
出ておいで、と俺はタブンネをボールから出し、少年の入っている檻を壊させた。
それから、癒やしの波動を使って、簡易ではあるが少年に治療を施す。
「ミュ…」
タブンネは心配そうに少年の額を撫でてあげていた。そして俺と同様、住人をキッと睨めつけ、のしのしと俺のそばに来た。
「坊や…、ソイツの正体が何だか知っているのだろう?
そうさ。ソイツは化け物だ。
さぁ、ソイツを私達に寄越すんだ」
カゲボウズを操っていた住人はそう自問自答し、一筋の汗を垂らしてにこり、と微笑みながら再び手を差し伸べてきた。
俺は動きづらい自分の身体に喝を入れ、ゆっくりと立ちあがった。
「あぁ、知っているさ。だがな、弱者に手をあげる人間こそ、化け物だと思うがッ!?」
「…ッ!!」
住人は目をカッと見開いて、捕まえろっ!!と周囲に命じた。うおおおっ、と勢いよく此方に伸びる手の侵入を許さなかったタブンネは、秘密の力で草を操り、住人達を襲う。
「糞ッ草が襲いかかって来やがるッ!!」
「ひいいいっ痛えっ!!」
「ぐー…」
追加の眠り効果も段々効いてきたようだ。
ばたばたと住人達が倒れていく。
俺は少年の下へ走り、想像以上に軽い身体を抱きかかえてレシラムをボールから出す。
「萌えるーわ!」
そしてレシラムに飛び乗り、タブンネをボールに戻した。見れば、住人達は切り傷を作りまくりながらも寝ていた。
「レシラム、秘密基地のある場所へ行こう!」
「萌え!!」
ゴウ、と尻尾から出る炎が真っ赤に燃え上がり、すっかり日の落ちた夜空に輝いた。