2011/01/03 22:08
「私、化粧をしてる女性って嫌」
情事の最中だと言うのに、
彼女はワタシの上に跨りながらそう呟いた。
彼女の唐突にものを言う癖は嫌いではない。
ワタシは彼女の髪を撫で、横たわるよう促した。
「だって、化粧は仮面と同じだもの」
「ほう」
「仮面を被っていたら、本当の自分をさらけ出せないでしょう?
仮面を被ったままの自分を男に魅せて堕とすのって、男に失礼だと思うの」
「くく…、確かに」
確かに彼女の言うとおりだ。
この世の女性など、例え見た目が美しくても中身がうす汚い女ばかり。
見た目ばかりを気にして中身を磨けぬ娼婦擬きばかりが人気者。
まるで自分が人生の勝ち組とばかりに誇張し、見た目が醜い者を手当たり次第差別する。
これは少し酷い例であったか、と心の内であざ笑う。
だからトウコは化粧を一切しないのですか、と笑ってやれば、彼女は笑わないでよ、と頬を膨らませた。
「随分と男らしい発言をしますねぇ、トウコ」
「そういうの、嫌い?」
「いえいえ…」
破り捨てろ、仮面。ワタシはトウコの様な見た目も中身も美しい女性の相手になれて光栄ですよ。
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