「みんな同罪です…!」
アンブリッジの高い声が部屋に響き渡った。部屋の猫もニャーと鳴いて鬱陶しい。
顔の青ざめたハリーを、アンブリッジは椅子に座らせ杖を向けると、尋問官親衛隊が部屋にずかずかと入りこんできた、ジニーやルーナまで捕まっている。
そのなかにいるはずのプラチナブロンドの男が見えなかった。
「クラッブ、ドラコはどこ?」
「知らない」
全く使えない奴らだと思いながらも再度アンブリッジを睨む。
アンブリッジは気にもせず、ハリーを椅子に座らせると顔を近づけて猫撫で声で言った。
「ダンブルドアに会いに行こうとしたの?」
「違う」
「嘘をいい!」
ハリーが反抗すると部屋には渇いた音がこだました。ハリーの左頬にアンブリッジは平手打ちをしていたのだ。
痛々しい音の後、聞き慣れた声が聞こえた。スネイプだ。
「お呼びですかな校長?」
「えぇスネイプ、答えを聞き出さねばなりませんの、抵抗しようともね。真実薬は?」
「校長が生徒の尋問に使ってしまいました。チョウチャンに使ったアレが最後で…」
私もハリーも、その言葉に耳を疑った。チョウが真実薬を飲まされていたなんて思わなかったからだ。ハーマイオニーは首を落とした。
スネイプが続けて言う。
「もっともポッターに毒薬を飲ませたいならお気持ちはわかりますが、お役には立てませんな」
スネイプが出て行こうとすると、ハリーは形相を変えて必死に訴えた。
「パッドフットが捕まった。あの人に、アレが隠されている場所へ!」
「パッドフットとはなんなの?隠されてる?何を言っているの?」
アンブリッジに賛成するわけではないが、パッドフットが何かは私にもわからなかった。誰かのコードネームか何かだろうか?
スネイプはハリーを見つめたあと、目を開かせて「サッパリですな」といい、部屋から出て行ってしまった。アンブリッジの目は意識が薄れてはっきりしないのか、朦朧としている。
「結構……。ほかに手はありません。この件は魔法省の安全の問題です、貴方が私をこうさせるんです。磔の呪いで舌も緩むでしょう」
アンブリッジの口から出た言葉にまたも耳を疑った。禁じられている呪文を生徒にかけようとしている目の前の、仮にも先生である女の性格はとてつもなく歪んでいた。
「そんなの違法だわ!」
ハーマイオニーの言葉にも反論をせず、アンブリッジは部屋にあったコーネリウスの写真を伏せた。
「コーネリウスが知らなければ問題にはなりません」
「私たちが見てるわ!あんたが今やろうとしていること全て…!」
ハリーに杖を向けていたアンブリッジは、レディーへと向きを変えた。
「・・・貴女はいつも私をこけにしてきたわね。貴女には服従の呪文をかけてあげるわ」
「やれるもんならやってみなさいよ!あんたになんか絶対服従しない!」
「インペリ…」
アンブリッジが杖を上げた時だ。呪文が止んだのは彼が彼女の腕を掴んでいたから。
「ドラコ…」
「王子様気取りかしら?ドラコ・マルフォイ!どこかで見たことあるシチュエーションね。そう、私の初めての授業でもあなたはこうやってレディー・エジワールを庇った…」
アンブリッジが顔を強張らせて言うなかドラコは冷静だった。恐怖で腰を抜かしたレディーの手を取り立ち上がらせる。
「レディーに呪文をかけるなら、僕にかけて下さい」
「ドラコ!な…何馬鹿なこと言ってるの!?」
「レディーを守るのは僕の役目だ。もう苦しむ必要なんてない」
「言われなくてもしてあげるわ、フフッ…!」
アンブリッジが杖を上げ、ドラコがレディーを自分の背に回すのと同時にハーマイオニーは叫んだ。
「言うのよハリー!!」
突然叫んだハーマイオニーに、アンブリッジは驚いたのか杖を降ろし、その姿を見つめる。ハリーはなんのことか全くわからないようで、目を開かせている。
恐らくハッタリだ。アンブリッジを騙すための。頭のいいハーマイオニーならではの小技だと感じた。
「何を言うの?」
「言わないなら私が言う!アレのありかを…」
「なんのありかですって?」
アンブリッジの顔はますます恐くなる一方だ。ハーマイオニーは息を切らせながらユックリと言った。
「ダンブルドアの秘密の武器よ」
その場にいた人はハーマイオニーの言葉を疑った。
(さすがハーマイオニー学年一の秀才)
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