恐ろしい顔をした母親はレディーを見てフッと笑った。ルージュの唇が血のように見えてくる。
「言いたいことって何かしらレディー」
「産んでくれたことには感謝しているわ。でもあなたに与えられた恐怖心は絶対に忘れない」
「ふん。その瞳本当に嫌いよレディー。いつもあなたはそうやって私を睨むの」
「ずっと聞きたかったの、なぜ貴女がここまでこの瞳を嫌うのか」
「…私が最も嫌いな人物の瞳と同じだからよ。その目で見られると、昔を思い出す!それだけよレディー!」
サリアが杖を振り上げた。レディーはドレスの裾を持ち上げ部屋から飛び出した。
ルーファスがそこら中を破壊しているためか瓦礫がすごくヒールだと走りにくい。
「待ちなさいレディー!ペトリフィカス・トタルス(石になれ)」
「プロテゴ(守れ)!」
走るレディーにサリアは容赦なく後ろから攻撃していた。ドレスの裾が邪魔になり落ちていたガラスの破片を使って裾を引き裂いた。
「着付けしてくれた人ごめんなさい!」
「待ちなさい!!」
「待つもんですか」
レディーとサリアの攻防はしばらく続いていた。もう時計は17時を指している。
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ホグワーツの大広間前は、パーティードレスに着替えた人が集まっていた。みな男女のカップルになり楽しそうに話しをしている。
しかしドラコは階段近くの椅子に座っていた。礼装を着て憂いオーラを出すドラコは、近くを通る女子生徒の足を引き止め、顔を赤くさせるほどだった。
ボーバトンの女子生徒が足を止める。
「あの人かっこよくない?」
「きっとダンスの相手も相当可愛い子よね」
そんな会話がドラコの耳に入るたびに、よけい憂鬱な気分にさせていると、聞き慣れた声がドラコを呼んだ。
「はぁい!ドラコ!」
「パーキンソン?」
そこにいたのは薄いピンク色の可愛らしいドレスを着た、パンジーの姿だった。うっすら化粧もされており、いつもよりも血色がよく見える。そのままドラコの隣に座りこんできた。
「パーキンソン、相手の男は?」
「今、お手洗いに行ったの。クラッブとゴイルは相手を見つけたの?」
「いや、奴らはパーティで出る食事が恋人さ」
ドラコが乾いた笑いをした。パンジーは軽蔑をしたような目で遠くにいる二人を見つめる。
落ち込むドラコを横目にパンジーは遠慮もせずに言い始めた。
「レディー、結婚するらしいわね」
「…あぁ」
「こんなことなら私がドラコをパーティに誘ってたのに」
「…」
「嫌な子。ドラコがかわいそう」
ドラコが怒りの孕んだ目でパンジーを見つめ腕を掴んだ。パンジーはそんな彼に同時ず、クスクスと笑い始めた。
「パーキンソンそれ以上言ったらお前でも許さない」
「ごめんねドラコ、冗談よ。ふふっやっぱり、ドラコ変わったわね」
笑うパンジーにドラコは腕を離しどういうことだと尋ねた。
パンジーは思い出すように語りはじめた。
「一年生のドラコはさ、ハリーポッターを虐めて、レディーも虐めてた。まぁレディーには逆にやられてたけど」
「それは…」
「二年生になるとドラコはレディーを真剣に考えてたわ。私や、クラッブやゴイルと話しをしている時でさえレディーの話しをしていたしね。秘密の部屋が開いた時も真っ先に心配したのはレディーのことだった。まぁあの子は純血だから問題ないけど」
「…」
「そして三年生。それまでのドラコはレディーのことをなんと言おうと決して怒らなかった。でもレディーと付き合って貴方は変わった」
「パーキンソン…」
「今までドラコは、自分に関係なければ問題なんて起こしたことはなかった。でも初めて寮で人を殴って先生に後から怒られた。ランドールを殴ったあの時よ?初めて人のために何かをしようとした、それはレディーだけなのよ」
「そんなこともあったな…」
パンジーがドラコへと体の向きを変え、優しく言った。切な気な表情なのは、彼女が彼を好きだったからだろう。
「ドラコ、貴方はとても優しくなったわ。それが私じゃないのが凄く悔しいけど。私、レディーもドラコも大好きだから応援する」
「…パーキンソン」
「あ!パートナーが来たみたい。じゃあねドラコ!!」
急いで立ち上がり走っていくパンジーを見たドラコは大声で名前を呼んだ。もう相手の男の隣にいる。
「パーキンソン!」
「!」
「ありがとう」
ドラコは微笑んで‘ありがとう’と呟いた。
パンジーには声は届いていなかったが、口元と彼の表情から言葉は伝わっていた。
そしてパンジーは安心して笑い、パートナーと腕を組んで大広間へと歩いていった。
ドラコ、お礼を言うのは私のほうよ。
この恋が、終わってしまったのは、とても悲しいけれど。こんな素敵な終わり方もあるんだなって思えたの。
胸のモヤモヤは消え果ててキラキラと光るものが今はある。
私はパンジー・パーキンソン。もう振り向かないし、迷わない。新しい恋を捜して二人のように幸せになる。
どうか信じることを止めないでね。
(私が愛した貴方だから)
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