さむい。
そう思って目が覚めた。
窓の外を見ると雪が積もっている。部屋を見渡すと、どうやら珍しいことに一人早起きをしてしまったらしい。
時計を見るとまだ【AM:4:30】と針が示している。
レディーはまたベッドに倒れこんだ。家へ帰る日がついに明日になってしまったのだ。マクラに顔を埋めてジッとする。
「言えてないどうしよう」
レディーはあの後、結局部屋にこもったまま出てこなかったのだ。オルガから「マルフォイが心配してたわよ」と言われたが、頷くだけの反応をしてベッドに潜っていた。
レディーはいつ言おうか悩んでいるうちに、また深い眠りについてしまっていた。
「…レディー」
「…誰?なんでそんなに悲しそうなのよ」
「さようならレディー」
「待って!貴方誰なの!?」
「……あなたはだれ…」
ううん、と唸る。まだ冴えない頭に響いたのはダンブルドアよりも大きな声だった。
「オルガ・スターシップよ!!レディー目を覚ましなさい!」
「うわぁぁ!」
ベッドから物の見事に落ちたレディーは勢いよく顔を上げた。何時まで寝てるつもりよ!と仁王立ちで言う友人の言葉を受け時計を見る。
「16時…え、まじ?」
頬を引きつらせならがオルガを見ると頷いている。ベッドに腰掛けたオルガはため息をつきながら言った。
「寝ぼすけさん、マルフォイには言えたの?」
レディーが首を横に振った。そんな表情があまりにも切な気で、オルガはレディーの手に触れて言った。
「時間は待ってはくれないのよ」
「わかってる…でも、ドラコに伝えたら私」
「…」
「きっと帰りたくなくなってしまう…」
ホロリと涙が頬を伝った。
きっと彼は私を心配して抱きしめてくれるだろう。優しい言葉を掛けてくれるだろう。それが辛く、離れたくなくなってしまう。
わずかに会えなくなるだけかもしれないが、夏休みとは違うことを心は実感している。
「でもねレディー、貴女は子供じゃないわ。時間はどんどん近づいてきてる」
その言葉の後レディーは何も言えなかった。オルガに腹を立てたわけではない。本当に言わねばならないと考えたからだ。
レディーは無言のまま髪を整え、ローブを手にして部屋から出て行った。
「レディーがんばれ…」
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冬の16:30はもう殆ど真っ暗だ。雪は止んだようだが、まだ少しチラついている。
階段を歩いていると眼鏡をかけた生徒が目に入った。ハリーポッターだ。
話したことは一度もない。ドラコがよく悪口を言っているのを聞くくらいだ。
何もなく横を通る。彼の背中は曲がっていて顔色も悪かった。大方、ダンスパーティに申し込んだが断られたパターンだろう。
この時期そんな男の子をよく見かけている。
(かわいそうだ。相手がいなければダンスパーティなどつまらないだろう)
そう考えたら心臓が掴まれるように痛くなった。万が一12月24日に帰ってこられなければ…ドラコはどうなる??
「…っ」
彼がいると思われる大広間へ行こうと思った足が正反対に動いた。レディーはそのまま、痛む胸を押さえながら他の階段を上っていった。
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もう18時になろうとしていた。大広間にいたドラコ達は、そのまま夕食を摂ろうと椅子に座って料理が運ばれてくるのを待っている。
何分かたち、オルガが一人で大広間へやってきた。寮のテーブルを見渡し、誰かを探しているようだ。
ドラコはそんなオルガの様子が気になり声を掛けた。いつも隣にいる自分の彼女がいなかったからだ。
「スターシップ、レディーはどうしたんだ?」
「あぁマルフォイ、なんのこと?」
「いや、だからレディーは?」
「え?マルフォイと一緒じゃないの?」
「今日はまだ会ってない」
オルガの顔色がどんどん悪くなっていく。ドラコはレディーに何かあったのかと感じ眉を寄せてオルガの肩を掴んだ。
「何かあったのか?」
「レディーあなたに会いに行ったのよ。16時30分頃に」
「…探しに行くぞ」
ドラコが大広間の入り口へと進もうとした時だ。パンジーが寮のテーブルへと歩みながら、横を通ろうとしたドラコを呼び止めた。
「あ、ドラコ。さっきレディー見かけたわよ」
二人はパンジーの元へ走っていく。パンジーが何があったの?と言う暇もなくドラコに肩を揺さぶられた。
「レディーはどこにいたパーキンソン!」
「え、一人でとぼとぼ階段上ってて…たぶんあの先にあるのは天文台くらいだと…」
「「天文台…」」
ドラコとオルガが顔を見合わせる。ドラコは行こう。と言って足を進めたが、オルガは着いてこなかった。
「スターシップ?」
「私は行けない」
「なぜ」
「マルフォイに任せるわ」
オルガは微笑んでいた。でもどこか悲しそうで、何か察したような表情。
ドラコは何も言わずに大広間から飛び出していった。
取り残されたパンジーがオルガに尋ねる。
「何かあったの?」
「気にしないで、さぁ夕食を摂りましょ」
(天文台なら、私は行けない)
二人の思い出の場所だもの
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