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「お前たちは雄々しくも戦った…だが無駄だ。このようなことは望まぬ」


ヴォルデモートの声にオルガは耳を塞ぎ腰を落とした。ドラコはレディーを片手で抱きしめ顔を歪めている。



「我が一族に一時撤退を命じよう」



「!?」


どう言うことだと言いたげにドラコは目を見開かせた。ヴォルデモートが何を考えているのか検討もつかないのだ。

そしてヴォルデモートはハリーポッターへと話しかけた。
「禁じられた森へ来い。自分の運命と向き合え…。お前が来なければ皆を殺す。お前を匿う奴は1人残らず殺す」
そう、皆の心に恐怖を残し奴は話すことをやめた。


あたりが静かになる。誰も口を開かずにいたがレディーは小さな声で「自分の運命…?」と、疑問を交えた声で呟いた。


「レディー?」


腕の中にいたレディーが頭を抱え悩み始めた。周りの音など入っていないようで声をかけてもブツブツ独り言を言っている。


「…もしかして」


レディーはドラコの腕をくぐり抜け大急ぎで走り出した。残された三人はレディーを追ったが風のように走って行った彼女を見逃してしまった。


「レディーは一体どこに…」

「なぁレディー追わないと危ないんじゃ…」


心配をするランドールとオルガをよそに、ドラコは平常心だった。



「いや、死喰い人は撤退したはずだ。今この城に危険はない…」

「あぁそうか…どうりで静かなわけだ」



危険はない…が…。レディーはどこへ行ったんだ。目の色を変えて、突然走っていく先に何がある…。



---


レディーの体に戦慄が走った。
ハリーに会おうと走ってきた大広間は地獄だったのだ。怪我をした生徒、先生。そして死体。
声は出ず。膝がしきりに震えて立っていられない程の恐怖だった。それでもなんとか足を進め、ハリーを探した。


「レディー!」

「あぁアロマ。無事だったのね…」

「うん。レディーも無事でよかった」


妹も無事だった。怪我だらけで、死喰い人に髪を切られたのだろうか、ショートヘアーと言ってよいかわからない程に髪がガタガタに短くなっている。


「ハリーを見なかった?」

「さっきまでそこにいたのよ」


アロマがその方向へ指を指す。
しかしそこはレディーにとってさらなる地獄だった。


「…うそ……」


見知った赤毛の集団。ウィーズリー家が集まり、床に手をついて泣き叫んでいる。寝転ぶ人は1人だけ。一歩足を進めるごとに涙が溢れて、足元を濡らした。


「…レディー」


アーサーがレディーへと手を差し伸べる。
嫌だ。見たくない。だって倒れているその人は…


「レディー。来てあげて。土に入る前に…君にも会っておかなきゃ…」


レディーはその場に泣き崩れた。ロンの隣で、死体に体を預け。悲痛の叫び声をあげていた。


「…フレッド!!嫌よ目を開けて!!!」


フレッドが殺された。レディーが顔を上げ、どうにもならない思いで周りを見渡すと、近くにはリーマスとトンクス。手を繋ぎながら息耐えた2人の姿が、まるで自分とドラコのようで吐き気に襲われる。


「…私……自分のことに必死で…嫌な予感がした時に…あなたたちのところへ行っていれば今頃…」

「違うよレディー。自分を責めるな。みんな自分のことでいっぱいだった…全部今の世界が悪いんだ…全部。全部。全部ね」

「…ジョージ……」

「レディーは今すべきことをするんだ。フレッドの死を、僕は決して無駄にはさせない」



誰よりもフレッドといたジョージが、レディーを励ますために笑顔を向けた。無理矢理に笑った笑顔だとすぐにわかる。本当は誰よりも泣きたくて、叫びたくて。フレッドに生きていてほしかったに決まっている。
だけど私の背中を押してくれた。ここに踏みとどまるのはフレッドにも、ジョージにも、リーマスにもトンクスにも…他の人にも失礼だ。

ゆっくりと立ち上がり、近くにいたロンへと近寄る。



「ハリーはどこに…」

「校長室よレディー」



ハーマイオニーが涙をふきながら教えてくれた。頷き、踵を返し大広間から出ていく。建物の焼ける匂い。血の匂い。あまりにも恐ろしい光景に涙が止まらない。しかしレディーは振り向くことなく校長室へと走って行った。


---


校長室へと入ると、ハリーは床に座っていた。何を見たのか。何かを諭した表情で一点を見つめている。


「…ハリー」

「レディー。どうしたんだい?」

「…私、勘違いじゃなければなんだけど…」



ハリーがレディーを見つめる。この先に言う話をまるでわかっているかのように。非常に落ち着きながら。


「あなた、ヴォルデモートの分霊箱の一つね…」

「…たぶん、あたり。なぜわかった?」

「ずっと気になってた。ハリーが蛇と話せること…それになぜ分霊箱の在り処がわかるかを…」

「…」

「始めはサラザールスリザリンの末裔なんじゃないかって、その程度だったの。でもこんな広い世界で、痕跡だけ残した分霊箱を次々見つけていくから思ったの。ハリーとヴォルデモートは繋がってるんじゃないかって…」



ハリーは立ち上がり、レディーに向かって微笑んだ。決意をした目だ。それがどんな決意かをレディーは察してしまい。首を横に振った。



「ダメよハリー…」

「でも、これが運命なんだ」


ありがとうレディー…。そう言い残し、ハリーは出て行ってしまった。

これが運命?一体ハリーが何をしたって言うの?
ハリーだけじゃない。死んで行った人も、当たり前の幸せを叶えられない人も…何が運命なの。


レディーは拳を固め、その場に腰を落とした。憂のふるいがレディーの前へと流れてくる。


「…なにこれ」


初めて見た魔法の道具をレディーは吸い込まれるように覗いていた。



(覗く先はスネイプの過去)

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