「可愛い」
「何が」
「レディー」
はぁ?と頭を捻らせたのはノットだ。頭がパッパラパーなやつだとは前から知っていたが突然なんだと言うのだ。自分の頭の中だけで言ってろと、ノットは思った。それにもう人のものだ。エジワールはドラコと付き合ってる。ドラコも物好きだなぁなんて思うが、唯我独尊男だから納得と言えば納得だ。
エジワールはまぁ可愛らしい顔立ちをしているのは嘘ではない。自分は好きになったことはないけど、というか、なったら怖い奴らがたくさんいるからなろうとも思わなかったけど。
「どの辺がいいわけ」
「ノット!お前それは全てだろ!」
先生(フィルチ)の尻めがけて野球ボール打ち込もうとするような女のどこがいいか全くわからない。どちらかと言えばスターシップの方がまだ大人しくて可愛らしいんじゃないだろうか。あいつもあいつで怖いとこあるけどエジワールよりはマシだ。
「エジワールのやつ、ついこの間なんか図書室の閲覧禁止の棚に侵入して寮の点数めちゃくちゃ減らしたじゃんか…」
「そんなところも良いじゃないか、なかなか出来る女いないだろ」
そんなバカなことする女沢山いてたまるか。と言ってやりたかったが近くにドラコもいたからやめた。さっきからこっちを睨んでいて凄く怖いのだ。
「俺には理解できないな」
「ノットは好きな奴いないの?」
「いない」
「つまんない奴だなー」
「つまらなくていいよ穏便に過ごせれば」
そう言って立ち上がる。談話室にいたらずっとランドールのエジワールトークに巻き込まれてしまう。図書室にでも行ってこよう。寮から出ようとするとドラコに声をかけられてしまった。
「ノット、レディーを好きになるのはやめておけよ、僕がいるしあいつあぁ見えて凄く性格が…」
「ならないって」
ドラコまで何だって言うんだ。お前を敵に回すわけないだろバーカ。こんなこと実際に口から出したら殺されるどころじゃ済まされないだろうから絶対言わないけど。
「おいランドールお前諦めたらどうだ」
「諦められるわけないだろ!ウエディングドレスのレディーを見たんだむしろお前から奪い取るよ」
「やれるもんならやってみろ」
(もうやだこの寮)
----
「あらレディーどこかにいくの?」
「図書室」
「え!!?雪でも降るんじゃない!?熱!?」
「雪なんか降ってないし熱もないわよ」
失礼ね〜と言うレディーは手に教科書を大量に抱えている。図書室までは寒いからか、マフラーも巻いているしローブまで着ていた。
「なんで、フクロウ試験までまだ日があるわよ?」
「スネイプのせいよ!」
「あーこの間のイモムシ事件のやつ?」
「そう!あれあれ!罰として課題を与えるとか言って見てよこれ!!」
ドサッとオルガのベッドに課題を叩きつけた。イモムシ事件とは名前の通りイモムシが関係あるわけだが、なんてことはないスネイプの机にクッキーの箱を置いておいて中にイモムシを入れておいたのだ。
「あれは最低だったもの課題だけで済んでよかったわね」
「ついでに寮の点数も減らされた」
「ひっぱたく」
「あれ美しい魔法なのよ、イモムシは丹精込めて育てると蝶になるんだから」
「スネイプが丹精込めて育てると思う?」
うーんと悩んだレディーはまた課題を持ち直し無いか〜と言いながら部屋を出て行った。トライウィザード・トーナメントが終わり、学校がまた少し平和になったかと思ったら親友は毎日これだ。時たま自分もおふざけをするが全く凄まじい子を友達にもってしまった。
---
「あ、セオドールくんじゃない」
「げ…エジワール」
「ん、何がげだって??」
「何でもないから俺から離れてくれドラコに殺されちまう」
シッシと手を振ったノットにレディーは思わず眉が寄る。わざと隣に座って覗き込むとノットは焦ったような顔をして読んでいた図書の本でレディーの顔面をすかさず叩いた。
「…っ!!!!」
「馬鹿野郎お前そんな顔近づけんな!!!!ドラコに殺されたらどうするんだ」
怖い怖いと言いながらノットが席を立とうとした時レディーの口からボソッと聞こえた言葉をノットは聞き逃さなかった。
「ドラコドラコって、私は友達と話すこともしちゃいけないの」
あ、そうだそう言えばエジワールって入学してからランドールとドラコから好意を寄せられてたせいで周りがビビっちゃってあまり、というか微塵も男友達がいなかったんだ。そう思うと可哀想なやつなんだよな。
ごめんエジワール…そう言おうと振り向くと顔面に分厚い本がクリーンヒットした。誰が当てたかって?エジワールに決まってる。そりゃもう鬼のような顔をしてこう言うんだ。
「スネイプの課題あなたにあげるわ!エジワールって名前書いて提出しておいてねさもないともう一発いくわよ」
チンピラだ。目の前にチンピラがいる。ドラコに「好きになるのはやめておけ」なんて言われたけど誰が好きになるもんか。ドラコもランドールも目がイかれてるよ。
そうして俺は目の前に舞った課題を白い目で見つめながらエジワールが去っていくのを見送った。
「シシシ」
「…。」
悪魔のような笑い方だったが、顔だけ見ればやっぱ美人だななんて思っちゃうのは、俺が男の子だから仕方ないのかもしれない。
(スネイプ先生に告げ口しよ)
・セオドール・ノットは疲れている