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アルワがいる場所はわかっていた。望めば現れる。普段は普通の壁。そこへ立ち止まり、心で願う。

「アルワのいる場所へ」

壁が生き物のように動き、壁が現れた。レディーはここの存在は知ってはいたが使うことは初めてであり、ゆっくりと扉を開けた。

ギイと音をたてて中に入る。
部屋の中には暖炉が一つ、あとはほとんど暗闇に近くとても不気味だった。何かあった時のために持っている杖に力が入る。


部屋の中央に行くとドアはバタンと音をたてて閉まる。音に驚いて振り向いた瞬間、呪文が飛び交った。

レディーは反射的に杖を出して、いつの間にか呪文を称えていた。


「ステューピファイ!」(麻痺せよ)

「プロテゴ!」(護れ)


呪文は相殺しあってパチパチと花火のように音をたてて消えていった。
暗闇の方からは靴の音が聞こえ、暖炉の火で下半身は見えた。それが誰かなんてわかりきっているレディーはため息をついた。


「さすがですね、レディー先輩」

「なんのつもりか教えてちょうだいアルワ。映画の撮影の気なの?それとパンジーを返してくれるかしら、どうせ昨日の夜から監禁してるんでしょ?」


レディーはアルワのすることに呆れ半分だ。呼び出しておいていきなり攻撃をしてくるなんて失礼にもほどがある。


「パーキンソンは確かに昨日の夜からこの部屋に監禁してるわよ。だってあのパグ女、マルフォイさんに渡そうと書いた手紙を目の前で破き、あげようと思ったケーキは棄て、『汚れた血の女がドラコに近づくな』って言ったの。だから監禁して懲らしめてるわけ」


嬉しそうに笑うアルワはとても不気味だった。
レディー自信、そんな嫌がらせがあったなんて知らなかった。でも監禁なんて、やっていいことと悪いことがある。


「パンジーは貴女に嫉妬しただけよ!!!パンジーだってマルフォイが好きだから…。手紙を渡させたくなかっただけ!パンジーがしたことは許せないわ、だけど、なんでその時に私や周りの人に相談してくれなかったの!?」

「私はあのパグ女よりも貴女に嫉妬してるからよ!そんな相手に相談なんてできないわ!貴女からマルフォイさんの記憶を消す為にこの部屋に呼び出した!」



アルワは杖狂気じみていた。杖を構え呪文を称えた。


「オブリビエイト!(忘れよ)」

「プロテゴ!(護れ)」

「ペトリフィカス・トタルス(石になれ)」

「…」

レディーは無言呪文になっていた。杖を振るいアルワの攻撃を弾く。
呪文の相殺は幾度なく続き、アルワは魔力が切れ始めたのか、息切れをしていた。


「ハァハァ…」

「アルワ、貴女二年生なのにどうしてそんなに呪文を知っているの?」


ボロボロになるアルワにレディーは不思議そうに尋ねた。二年生が知っているわけもない呪文が飛び交っていたことを見逃してはいない。


「この日の為に、ずっと勉強してきたわ。休みを潰して…。ただ認めてもらいたかった。マグルだけど、差別してほしくなかった。でも私だけこんな想いをしたって全く伝わりはしない」


アルワの杖が手から落ちる。涙を流してその場で膝から崩れていった。床に手をついた彼女は胸の内を明かしていく。



「私は貴女が羨ましい!!純血で、可愛くて、魔法だって凄いし、みんなから愛されて!」

「アルワ…」

「ズルいのよ!全てを持って行ってしまう!私には何もないわ!」

「アルワあなたは優しさを持っているわ。私より何倍も大きな。だってあなた、私とオルガに雑誌を持ってきたり、マグル界のお菓子をくれたりしていたじゃない」

「そんなのあなたが羨ましくて取り入ろうとしただけよ!周りの友人だけじゃない、あなたはマルフォイさんにとって特別な女性なのが一番許せなかった!」



泣き崩れたままのアルワは悔しそうに歯を食いしばった後に言い放った。アルワの前へと立つレディーは、目を背けながらマルフォイに抱き着かれたときの感情を思い出し複雑な気持ちで応えた。



「私はマルフォイの特別なんかじゃ…」

「認めなさいよ、貴女はどう考えても特別だわ」

「もしも、もしもそういう意味の特別なら…私は特別を知らない…」


これは嘘ではない。アルワの考える特別が「愛」の事だとしたら、私には理解がまだ出来ないのだ。


「とんだ先輩だわ」


アルワは涙を拭いてゆっくりと立ち上がった。


「特別はね凄いの、何があってもその人を考えて、護りたくなって、誰よりも」


「・・・?」


アルワが続きを言おうとすると部屋のドアは大きな音をたてて開いた。



「マルフォイ…」

「言うなアルワ」




ドアを開け放ったのはマルフォイだった。



(なんでここがわかったのよ)


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