30 days
「文化祭!」
空さんが目を輝かせたので、かわいいなあと見つめてしまう。
「そう、今月最初の土日にあるんです。来はりませんか?」
「行く! 楽しみ!」
やったー、と笑いながら、彼女はカップに口をつける。彼女には紅茶、僕にはコーヒー。今日は彼女の家でゆったりしている。何もせずこうして話しているだけでも飽きることがない。
「高校かあ。懐かしいな」
「空さんの学校はブレザーとセーラー、どっちやったんですか?」
「ブレザーだったよ。えっとね、」
立ち上がった彼女がクローゼットを開ける。落ち着いた色合い。あまりたくさんの枚数はないが、僕と付き合い出してから服を増やしたそうだ。
「あった! こんな感じ」
目当てのものを取り出した空さん。制服はきれいに保存されていたらしい。体にあてて見せてくれるが、僕はもっときちんと見たくなっていた。
「着てみてや」
「え、いや恥ずかしい……」
「僕も会ってみたい、高校時代の空さん」
「えー……」
付き合ってしばらく。わかったことがある。彼女は押しに弱い。仕方ないなあと頷いてくれるまで、そう長くはかからなかった。
「どう、かな」
「めっちゃかわええ」
「それは言い過ぎだと思うけど」
紺色のブレザー。袖から少し出たシャツ。膝より長いプリーツスカート。はにかむような彼女。
「それで文化祭行きましょ」
「え、だめだよそんなの、コスプレだよ」
「めっちゃかわええから大丈夫です」
なにが大丈夫なの、とくすくす笑う彼女は制服のせいか少し幼く見えて。こんなにかわいい人が同級生にいたら勉強どころではないなと思った。