30 days


「利一さん! ポッキーゲームって知ってますか?」

 そんなことを言ってよく知る赤いパッケージを取り出した妻に、どう答えたものかと考える。

「それは、ええと、」
「このポッキーをね、お互い端から食べていくんですって!」
「いえ内容は知ってますけど」
「やってみませんか?」
「それはいいですけど」
「じゃあ開けますね!」
「沙紀さん、念のために聞きますけど、それ最後どうなるかわかりますか?」
「え?」

 興奮して輝きあふれる瞳を濁らせたくはなかったが、ここは確認しておく必要がある。
 妻は本当に、ただただ、純真なのだ。

「端から食べて行って、最後」
「わー!」

 教えてあげようとした口を手で塞がれる。顔が真っ赤だが、予想通りすぎて笑ってしまう。

「えええええこれそういうゲーム……?」
「そうですねえ」
「私、そんなつもりは」
「わかってますよ」

 言うとほっとしたように笑ったので、少し意地悪をしたくなる。

「まあ、してくれてもうれしかったですけどね」
「え!」

 固まった彼女がおかしい。解凍してあげるため、嘘ですよと言おうとすると。

「じゃあ、あの、どうぞ」
「沙紀さん?」

 チョコレートにコーティングされたお菓子。一本差し出される。彼女も相変わらず真っ赤だが、これはきっと。

「利一さんも真っ赤ですね」
「誰のせいですか……」

 やっぱり敵わない。とても幸せなことに。


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