「見て見て、安売りだったから買ってきた!」

そう言ってレナが嬉しそうに、オレンジ色の南瓜の形をしたプラスチックのバケツに入ったお菓子を見せた。

何て言ったっけ、あの南瓜。

たしか、『ジャックオーランタン』。

「…買ってきたって、ごみ増やしてどうすんの」

「だって可愛いじゃん、それに安売りだったから!」

「はいはい、そうですか」

ハロウィンはとっくに終わり、どこの店もクリスマス用品を売り始めている。

用のなくなったあわれな南瓜たちが、皆割引のワゴンに押し込められている姿を想像したら、いささか滑稽ではあるが、可哀想な気持ちになる。

レナが南瓜をワゴンの中から救いだしてやるような優しい人でよかった、なんて考えた。

どうせ食い意地の張ったあいつのことだから、少しでも安い値段で沢山のお菓子を手に入れたかっただけだろうが。

「ハロウィンが終わったら皆捨てられちゃうんだから、南瓜も可哀想だよね」

レナが南瓜の中から飴をひとつ取り出して口に頬張った。

「ずるい、俺にもくれよ」

「やーだよ。ハルはお金出してないじゃん」

レナは南瓜を抱えて俺から遠ざけた。

「…トリックオアトリート、って言っても駄目?」

「もうハロウィンは終わってます」

「くっそー」

「嘘。いいよ、食べよう」

レナはそう言ってにこっと笑って、二人の間に南瓜を置いた。

俺はその中からひとつ、赤い飴玉を取り出して口へ入れた。

ふわり、苺の香りが口の中に広がる。

「あーっ、その味、一個しかなかったのに!返してよー」

「……ん、じゃ、返す」

ちょっと俺には甘すぎるな。

俺はレナの頭を引き寄せて深く口付けた。

そうして、少し開いた彼女の口の中に飴玉を押し込む。

「……どう、美味しい?」

俺が悪戯っぽく笑うと、

「…本気じゃ、なかったのに…」

頬を真っ赤に染めてレナが俺を見た。

(お菓子を頂戴!)

ハローナイトメア

ぐるぐる/千洋
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