死神は生まれたときから一人だ。
だが、その二人は異質だった。
生まれたときから二人だった。
なぜ、よりもあっさりと二人は状況を受け入れていた。
死神に名はない。
二人はその生まれの罰として顔に刺青を施された。
その力を封じるべく。
「ねぇ、兄弟、わしらはどーしてこう生まれたのかねぇ?」
「さぁねぇ、兄弟…」
名のない二人は互いを兄弟と呼んでいた。
この世で唯一の兄弟。
その体を覆う刺青は彼らを彼らたらしめるべくつけられた。
「兄弟、わしは兄弟がいてよかったと思ってるのさね」
「わしもさねぇ〜兄弟」
二人はくつくつと笑う。
その死神の白い姿はほかの死神たちには異様に見えた。
だからこそ、彼らが魂を狩るべき対象もまた異様な人間になった。
「…だぁれ?」
その子供は生きてきた年月と精神の年齢がまったくもってあわなかった。
魔術師によりその力を姿を封印されているとはいえ、彼は普通は見ることのできない死神を見つめていた。
そのまっすぐな人みに二人の死神は捕らわれた。
「……僕、響。だぁれ?」
「……わしらは…死神」
「死神ー?」
なぁにそれ、と彼は問いかけてきた。
そこで二人ははたと気付く。
死神とはなんだ。
わしらは何故ここにいる。
少年の単純な問いかけに二人は頭を悩ませた。
「……わからないのー?じゃぁ僕が名前をあげるよ」
少年は無邪気に微笑んだ。
「月と陽ね?」
「月」
「陽」
「そう!お日様とお月さまなのー」
少年は笑った。
自らの命を狩りに来た死神に名という存在許可を与えた。
その事実を知らないまま彼は今のように笑って彼らをつかまえるのだ。
「そうかー。わしらの名前は決められてしまったのー」
「うむ。そうだのー。どうしようかのー」
くすくす笑う二人の死神に少年はきょとんとした。
「そうさのー。これでわしらはようやく”二人”になれたのー」
生まれて来た時は一つだった。
二人ではなく、一人。
二つの意思があり、二つの心があるのにひとつ。
彼らにとってそれが当たり前だった。
だが、彼が分けてくれた。
「ありがとう、少年」
「少年じゃないよー。響だよ」
「ふむ、じゃ、ひー姫とよぼうかのー」
小さい姫、いつか
おまえさんの命をとるそのときまであのときと変わらない笑みを浮かべていておくれ。
わしら二人の半身を切ってくれた愛しい子供よ。
君の半身僕の半身
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