いつか愛息子にも恋人ができる。
わかっていることだ。
しかし、銀には許せなかった。

「いってきまーす」

今日もかわいい息子は恋人とおでかけ。
パパぁと抱きついてきた日々が懐かしい。
愛しい息子は騙されているに違いないと考えた銀は、倖や郁たちをそれとなく響の恋人に会いに行かせた。
が、彼らの答えは同じだった。
下ごころなんてない、と。

「銀、あきらめろ。あいつは稀有な人間だ」

郁がいう。

「響のことも本気みたいだよ」

聖も言った。

「響さん幸せそうですし」

倖もうなずいた。

「邪魔するほうが野暮じゃない?」

暁にとどめを刺された。
銀とてわかっているのだ。
響の幸せが一番だと。
それでもどうしても感情が邪魔をする。
愛しい養い子を、此処まで育てたがゆえに。

「ただいまー」

響が戻ってきた。
迎えに出てみれば大量のぬいぐるみを抱えている。

「どうした」
「ゲームでとってもらったのー」

響は嬉しげにぬいぐるみに頬ずりをする。
銀は何も言えなかった。
彼には彼の人生がある。
時を止めた自分がしゃしゃり出ていいわけではないのだ。
銀はそっと響の頭をなでた。

「そうか、よかったな…お前は幸せになれる素質がある」
「ほんとー?」
「あぁ、だから此処を出て行っても平気だろう。もう私の庇護はいらない」
「パパ?」

いつの間にか、響を必要としていたのは銀だった。
いずれ来る別れがいやで、彼を鳥籠に押し込めていた。
だが、彼はもう力強く羽ばたけるのだ。

「響、幸せになりなさい」
「…うん!」

響はあの、銀を虜にした笑みを浮かべてうなずいた。
ぬいぐるみをほかの者にも見せるのだといって響は走って行く。
銀はその後ろ姿を見つめていた。
さよならは言うつもりはない。
きっと彼はこういうのだ。



『パパ、いってきます!』

父親の心情
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